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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第3章 トーヤ大学入学

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第39話 飛び級した魔法教室

 あれから、メイはユオを見つけることができなくなっていた。メイとしては早くユオと仲直りしたかったのだが、見つからないのだから仲直りのしようがなかった。



 今日は始めての魔法の授業。メイは試験では中途半端な結果だったが、何故か二年飛び級して三年生の授業に参加することになったしまった。そのいきさつを説明するためには、少しだけ時を遡らなければいけない。


 メイは他の新入生と同じように一年生の魔法教室に入ろうとした時、お迎え試験の試験官をしていた眼鏡の女の先生に声をかけられた。


「あ、いたいた。メイ、あなたは私のクラスの授業を受けなさい。一年生の授業だと、あなたは物足りないでしょうから」


「え?」


 眼鏡先生は有無を言わさない態度でメイの手を取り、二つ隣の三年生教室へと連れてきた。

 先生が連れてきた小さな新入生を見て、他の三年生は一様にびっくりしている。ウィルだけは笑顔でメイに手を降ってくれた。


「はい、メイ。自己紹介してください」


「え! この状況でですか!?」


「そうです。早くしてください」


 眼鏡先生は優しい顔をして結構な無茶振りをしてくるタイプだった。

 メイはせめてもの抵抗で、フードを深々と被り挨拶した。


「メイ・ヴィーエラです…… 勉強頑張ります。よろしくお願いします……」


「はい、じゃあ空いてる席に座ってください」


 ウィルが手招きしてくれたので、ウィルの隣に座った。ウィルは友達が多いようで、メイに興味津々な生徒が何人か話しかけてきた。


「え! ウィルの妹?」


「幼なじみだよ。トーヤ入学前にいつも一緒に遊んでたんだ」


「はい、静かにしてください。授業をはじめますよ」


 眼鏡先生の注意で教室は静かになる。


 眼鏡先生は今日やることを淡々と板書しながら説明しだした。メイはノートに板書を写すことだけで精一杯だった。

 三角帽子先生の授業も淡々としていたが、一応生徒がしっかりノートを取れているかは確認しながら進めてくれていた。

 眼鏡先生はそういったことは一切なかった。容赦なく授業が進んでいく。


 メイは初めて三角帽子先生のありがたさと身に染みて感じた。




 授業は練習問題に差し掛かり、眼鏡先生はまた無茶振りをしてきた。


「はい、じゃあ、ここ。メイ分かりますか?」


「わかりません……」


「ま、そうですよね」


 分かっているなら当てるなよ……

 こういう時、ユオがいたらこっそり耳打ちしてくれるのに……


「じゃあ、代わりにウィル」


「はい。火属性の魔物に対して安易に水魔法や氷魔法を使用してはいけない理由は、水蒸気爆発の危険性があるためです。未知の火属性の魔物に対しては土属性の魔法を使うのがいいです」


「はい、正解です。よく復習できていますね。では、次」


 ウィル、かっこいい!!


 メイはウィルに尊敬の眼差しをむける。そんなメイに気がついて、ウィルは「よそ見してると、分かんなくなっちゃうよ」と小声で教えてくれた。







 キーンコーンカーンコーン


「あ、時間ですね。休憩してください。

 このあとは実技の練習をしますので、次のチャイムまでに校庭に集合してください」


 そう言うと眼鏡先生は転移魔法を使ったのか、杖を一振りして消えた。


「メイ! 急いで!」


 授業が終わり、ほっと一息はいていたメイをウィルが急かす。


「え? なんで?」


「次は校庭だから、走らないと授業に遅れちゃうよ!」


 周りを見ると他の生徒も急いで荷物をまとめ、走り出していた。

 メイも急いで荷物をまとめた。ウィルがメイと手をつないで一緒に走ってくれた。何年か前まで、ベッドからほとんど出られなかったウィルが嘘みたいだ。


 校庭につくかつかないかのぎりぎりでチャイムがなった。全員が息を切らしているが、眼鏡先生だけ余裕の表情だ。生徒たちが苦しそうにしているのをにこにこ眺めている。性格が悪いのかもしれない。


「はい。今日の実技練習はシールドの練習をしましょう。なぜ、シールドの魔法が重要なのか分かりますか?」


 先生の質問に息を切らしながらウィルが手をあげた。


「敵からの攻撃は盾では防げない物があるからです。その点、シールドの魔法は上手く展開できれば、どの様な攻撃も防ぐことができます」


「はい。正解です。では、実際にやってみましょう。

 今日の目標はできるだけ大きなシールドを張ることです。

 本当は必要な部分、一点だけシールドを張るのが一番魔力効率が良いのですが、皆さんにはまだ難しいでしょうから、できるだけ大きなシールドを目指します。大は小を兼ねますからね」


 そう言うと、眼鏡先生は手本を見せてくれた。

 眼鏡先生が杖を頭上に掲げると杖の先から半透明のガラスのような物が広がって、先生と周りにいる生徒全員を包み込んだ。


 生徒たちは各々練習を始めた。眼鏡先生は生徒を1人ずつ見ながら、順番にアドバイスをしていく。


 ウィルはすぐに自分とメイを囲むシールドを出していた。


「ウィル、すごい! 私、やったことないんだけど、どうやるの?」


「えっとね、自分の周りに魔力の膜を張るイメージで、薄く均一に広げるんだよ。薄すぎると穴空いちゃうから気をつけてね」


 メイはウィルのアドバイスを聞いて早速やってみた。剣を縦に持ちイメージ通りに魔力を広げていく。


「できた!」


 メイもウィルと同じように、自分とウィルを囲むシールドを張ることができた。


「え! メイ、すごい! 僕、これができるようになるまで、一年はかかったけど」


「そんなぁ、褒めても何にも出せないよ」


 メイは照れて頭をかいた。


「じゃあ、授業が終わるまでにどっちが大きいシールドを張れるようになるか競争ね!」とウィル。


 メイは笑顔で頷いた。






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