第32話 決闘
「おい! メイ聞いたぞ! イライジャ先生の試験でいきなり魔力付与に成功したんだって!」
メイとユオが食堂で昼休憩をしているところにドルが大きな声で話しかけてきた。メイとユオと同じテーブルに昼食の乗ったトレーを置く。
メイはドルの大声にビクンと驚き、あたりをキョロキョロと警戒した。
「しー! もう、先輩ちょっと静かにしてくださいよ……」
午前のお迎えテストが一応終わり、メイは食堂のテーブルに突っ伏してぐったりした。能ある鷹は爪を隠す作戦が大失敗に終わり意気消沈しているのだ。
「おめでとう。これで、メイは正真正銘の魔法剣専攻の仲間入りね」
ドルと同じく昼食の乗ったトレーを持ったフランも席につき、笑顔でメイの合格を祝ってくれた。
「ほら、ムスッとしてないで、リンドもなんとか言ったら?」
フランの後ろからやってきたリンドはむすっとした顔で不機嫌だ。
「みとめない……認めないぞ! メイ、決闘だ! 表へ出ろ!」
リンドは急にメイに勝負をしかけてきた。
(この人は何を言っているんだ?)
メイは呆れて、開いた口がふさがらない。
「決闘って…… 嫌ですよ……」
「なぜだ! 先輩が後輩の力を見てやるって言ってんだから、挑戦しろよ!」
「だって……」
(そんなことしたら目立っちゃうじゃないですか。リンド先輩とお話するだけで、私が女子のヘイトを集めていること、気がついてます?)
メイはさっきの試験の出来事を引きずって、珍しくへこんでいた。
ただリンドとしてはメイが試験に受かったのに、そんな様子だから、さらにムカムカするのだろう。メイの落ち込んだ様子を見て、リンドは顔を赤くして怒っている。
メイとリンドを見かねたのか、ユオが立ち上がった。
「リンド、代わりに私が相手をするから、メイは勘弁してやってくれ。今のメイは本調子ではないから」
リンドは一瞬、ユオの提案を断ろうとしたが、思い留まった。
「……分かった。でも、ユオが負けたら、ユオは僕の使い魔になってね」
* * *
ユオとリンドの決闘は中庭で行う事になった。中庭の広い芝生の上にユオとリンドが向かい合って立っている。
審判はドルが引き受けてくれて、決闘の説明をしてくれた。
「先に、武器を落とすか、降参させた方が勝ちだ。怪我をさせるのは禁止とする。
ユオは武器はあるか?」とドルが確認する。
「あぁ、大丈夫だ」
ユオが右手の指をパチンと鳴らすと何もない所から剣が現れた。黒い金属でできた直剣で、なんだか少し禍々しい。ユオが構えると黒さが増したように見えた。
リンドも、剣を抜いて構えた。剣が電気を帯びたようにパチパチと音をたてて光っている。雷の魔法を付与しているようだ。
いつの間に、中庭には人が集まり、ユオとリンドを取り囲むように決闘の様子を見守っていた。緊迫した空気に一同が息を呑んだ。
「では、はじめ!」
ドルの合図で決闘が始まった。
リンドが強く踏み込み、一気にユオとの距離を詰めた。
リンドの剣が光り、ユオの剣が大きく弾かれる。リンドはそのまま一気にたたみこもうとするが、ユオが剣を持っていない方の左手をリンドの後頭部に回し、リンドの後頭部を強く叩いた。
リンドは体制を崩して、前に倒れ込み、ユオはそこに剣を突きつけた。
勝負は一瞬で終わってしまった。ユオの圧勝である。
「やめ!」
ドルが決闘終了の合図をおくる。
ユオが左手の指を鳴らすと、ユオの剣はどこかへ消えた。ユオはリンドに手を差し出し、引っ張ってリンドを立たせた。
「使い魔は、自分より弱いものには使役されない。これで、メイのことも認めてくれ」
ユオがリンドにそう声をかけると、リンドは余程悔しかったのか泣き出してしまった。
ユオはため息をついて、リンドの背中をとんとん叩いて落ち着かせた。
それを見ていた女子からは、また短い悲鳴が聞こえた。
メイは複雑な気持ちだった。
(いやリンド先輩、絶対私より強いだろ…… てか、ユオ、ほんとは使い魔じゃないし……)
メイは、極力目立たなくなれるように、フードをぎゅっと手で押さえて、集まった人込みにまぎれた。




