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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第3章 トーヤ大学入学

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第30話 入学パーティー ‐2‐

 カランカランカラン


 どこからかハンドベルの音がした。振り返ると中央のステージで動きがあった。高等部の生徒だろうか――何人かがステージの近くに集まり、その一人がハンドベルを鳴らしている。

 フランがなんなのか説明してくれた。


「生徒会の生徒が、司会進行をするんだよ。生徒会って言うのは、生徒たちが役員をしていて、学校を良くするためにお仕事する組織ってかんじかな」


 (なるほど、ステージの近くに集まった生徒は生徒会の生徒ということか)


 さっきハンドベルを鳴らしていた生徒がマイクの前に移動して話し始めた。


「これより、新入生入学パーティーを始めます。まずは、生徒会長の挨拶です。クルト殿下、お願いします。」


 (む、殿下? また、王子さまか?)


 クルトと呼ばれた人が、ステージへ上がる。よく見ると金髪で葡萄色の瞳をしていて、リンドとよく似ている。

 メイはリンドの方を見るが、プイッとまたそっぽを向かれてしまった。


「あれ、リンドのお兄ちゃんで、エイデンの第一王子」と、またフランが教えてくれた。フランは面倒見のいいタイプのようだ。


 壇上でクルトが話し始めた。


「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。そして在校生の皆さん、進級おめでとうございます。今日は皆さんが待ちに待った入学パーティーです。たくさん食べて飲んで、明日からの授業を皆で頑張りましょう! それでは、杯を持って」


 そうクルトが言うと急に目の前にご馳走が現れた。

 ユオは急に現れたご馳走に金の目を輝かせる。


 先輩たちは杯を持っていたので、メイもそれを真似して杯を持った。


「乾杯!」


 全員が近くの生徒を乾杯し、杯の飲み物を飲んだ。メイが飲んだのは葡萄ジュースだった。とろっと濃くて美味しい。

 乾杯が終わると全員がご馳走を食べ始めた。ユオはもう既に口がハムスターのようになっている。せっかくの美貌が台無しだ。


 メイはしばらく食事を楽しんでいると、複数の視線を感じた気がして振り向いた。


 当たりを見渡してみると、周りのテーブルの女子たちがこちらをチラチラ見ていた。


 (あぁ、またユオか……)


 口がハムスターになっていても、ユオのことが気になる人がいるらしい。


 他にも、こんな声も聞こえた。


「リンド殿下、今日もかわいすぎ……」


 どうやら、リンドもかなり人気があるらしい。


 そんな人気者二人に挟まれているメイは背中にゾクッと寒気が走った。【真実の瞳】の効果だろうか、誰かの敵意を感じた。


 メイはたまらずユオに声をかけた。


「ユオ、お願い。席代わって。」


 ユオは面倒くさそうにするが、立ち上がり席を代わってくれた。

 ユオがリンドの隣に座ると「キャ」という短い悲鳴が聞こえた気がした。リンドとユオを二人並べておくと女子たちは喜ぶようだ。敵意も和らいだ気がする。メイは、ほっと胸をなで下ろして食事を楽しんだ。







 入学パーティーがお開きになり、生徒たちがぞろぞろと移動を始めた。

 メイはパーティーの間、先輩たちにお迎えテストのことを聞き出そうとしたが、教えてくれなかった。


「よし、じゃあぼちぼち移動するか。新入生は寮の場所分かんないよな? 案内するから、ついてこい」とドルがメイとユオに声をかける。


 魔法剣専攻全員で立ち上がり、寮へと移動を始めた。


 食堂のさっき入ってきた入口とは反対側の入口から出ると、そこは広い中庭だった。さっきの食堂と同じ位の広さはあるだろうか。地面には芝生が敷き詰められ、大きな木も植えられていた。

 一行は中庭の端にある、屋根付きの廊下を歩く。他の生徒たちも皆同じ方向に進むので、廊下はかなり混雑していた。


 しばらく歩くと校舎の壁に二つの入口があり、入口の上には左に「男子寮」、右に「女子寮」と書かれていた。二つの入口の中央にカウンターがあり、そこには恰幅のよいおばちゃんが一人鎮座していた。


「左が男子寮で、右が女子寮。入口の中央にいる人は寮母さんだ。初等部の門限は夕方の六時までだから、それまでに寮には入らないといけない。過ぎると……分かるよな?」とドルは言う。


 寮母は何か木の棒の様な物を持って素振りをしている。

 メイはブルブル身震いをした。


 生徒たちは、男女別に寮に吸い込まれていった。魔法剣専攻の番が来て、フランとメイとユオが女子寮に入ろうとした。


「ちょっと、まて。お前、オスとメスどっちだ?」と言ってリンドがユオの襟首を掴む。


「は? 男だけど」とユオは不機嫌そうに答えた。


「じゃあ、お前はこっちだよ!」


 リンドがユオの肩を掴み引きずっていく。ユオは、仕方がないな、という顔をしていた。

 メイはユオも寂しいのかなと感じ、ユオと離れて自分も寂しく感じていたことに気がついた。


 少し名残惜しそうに、していると寮母が木の棒で何かを叩く音が聞こえた。怖いから早く入ろう。


 フランがメイを部屋の前まで案内してくれた。


「こっちがメイの部屋で、ここの右隣が私の部屋。何か分かんないことあったら、呼びに来て。あと、一応言っておくけど、女子寮は男子禁制で使い魔も人型のオスだと入れないよ。

 明日の朝の七時に、また見に来るから、それまでに制服着て準備しといてね。それじゃ」


 フランは一通り説明すると、手を振ってから右隣の部屋に入っていった。


 メイも自分の部屋に入った。部屋の中には馬車で運んできたスーツケースが、もう届いていた。


 メイは誰もいない静かな部屋で少し寂しくなり、オルガやセヴェリ、ユオのことを考えた。



 メイがスーツケースの中身をクローゼットの中にしまっていると部屋の窓を叩く音が聞こえた。


 振り返ると窓の欄干に黒猫のユオがいた。

 メイは窓に駆け寄り、窓を開けてユオをぎゅっと抱きしめた。ユオが暴れて、するりと腕の中から逃げ出す。


 (今日は3秒はもふもふできたかな……)


「ユオ、ひとり部屋寂しかったの? 私と一緒だね」


 メイは寂しかったのは、自分だけではなかったのかと顔が綻ぶ。

「ちがう…… 明日のお迎えテストのこと、心配しているんじゃないかと思って様子を見に来ただけだ」


「あ、そうなの?」


 メイは少しがっかりした。


「でも、心配してたから、ユオが来てくれて良かった! ありがとう!」


 ユオはメイから視線をそらして前足で耳を掻いた。


「お迎えテスト、どんな事すると思う?」とメイ。


「先輩たちの話だと、剣が使えて、魔法も使えるようになると魔法剣専攻に転科できるというような話だったから、両方使えればいいんじゃないか? メイが魔法は既に使えることは知っているが、剣は使えるのか?」


 ユオは首を傾げながら聞いてくる。


「全然使えないけど。ずっと一緒に住んでたんだから、分かるでしょう!」


 メイは当然だと言わんばかりにえばっている。


 ユオがため息をついた。そして、ジャンプして人型になった。


「では、軽く手解きをしてやるから、剣を出せ」


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