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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第3章 トーヤ大学入学

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第29話 入学パーティー ‐1‐

 三角帽先生の後を追って校門をくぐると、トーヤの街に入った時から見えていた巨大な建物が眼前にそびえ立っていた。

 トーヤの学用品専門デパートもかなり大きかったが、これはそれ以上だ。初等部から大学部まであり、生徒たちの寮もあるというのだから当たり前かもしれないが、一目見ただけではその全貌を把握するのはとてもできそうにない大きさだった。


 校舎の中に入ると階段やら入口やらがたくさんあり、迷子になりそうだ。

 ウィルが言っていた、入学パーティが行われる食堂は一階にあるらしく、三角帽子先生は校舎の中をまっすぐ直進して進んでいく。随分と長い距離を歩いて、やっと目的地に到着したようだ。小さい新入生たちは、ここに辿り着くまでに既に疲れている。


 三角帽子先生が新入生に振り返り声をかけた。


「はい、ここが入学パーティを行う食堂です。これからの学校生活で食事をする時は必ず利用するので、場所を覚えてください。

 あと、一年に何度かある、学校行事や全校集会でも食堂を使います。全学生、教職員全員が利用しますので、みんなが使いやすい空間になるようにつとめてください。

 では、中へ入りますので、先程説明した通り、自分の席を探してください」


 三角帽子先生が大扉に触ると、扉は重い音を立てながら自動で動き出し開いた。

 中を覗くと、とても大きなホールになっていて、端が見えない程広い。ここでかけっこをしたら、端から端に辿り着く前に疲れて走れなくなってしまうだろうとメイは想像した。

 中には四角いテーブルがいくつもあり、各学科ごとにテーブルをくっつけて使っているようだ。


 三角帽子先生は羊飼いのように新入生を食堂へと追い込む。新入生は緊張していてなかなか前へ進めなかったが、新入生が入ってきたことに気がついた在校生が何人か立ち上がり、新入生を迎えに来てくれた。各学科ごとに先輩が声をかけて、新入生を連れて行く。


「おーーい! 剣術学科の新入生はいるか!」


 高等部の生徒だろうか、背の高い赤髪の青年が剣術学科の生徒を呼んでいる。メイとユオはその先輩の近くに近づいた。

 赤髪の先輩は集まった人数を数えている。


「えぇと…… にぃ、しぃ、ろぉ、やぁ……二十人全員いるな! 今年はやっぱり多いな! はい、じゃあ案内するからついてきて」


 先輩について、食堂の奥へと進んでいく。

 食堂の中央にステージがあり、その周りに先生たちのテーブルがあるようだった。

 剣術学科はそのすぐ近くにテーブルがあった。


 剣術学科のテーブルにつくと、そこでも数人の先輩が立ち上がり、新入生を呼んでいる。どうやら、専攻でも場所が分かれているらしい。


「長剣専攻の子、おいでーー」「レイピアの子、こっちだよ」と言った声が聞こえる。


 魔法剣が呼ばれるのを待っていた、メイとユオは誰も呼びに来ないので、ぽつんと取り残されてしまった。気がついた赤髪の先輩が声をかけてくれた。


「どうした? なに専攻?」


「魔法剣専攻です」


 メイが、答えると赤髪は少し驚いていた。職業診断の儀式の時に司祭が言っていたが、魔法と武器の適性がある生徒はどうも少ないらしい。


「え! ほんと? 初等部の1年生で魔法剣専攻は初めて見たな…… まぁ、いいか、こっちだ」


 メイは赤髪先輩の案内で、剣術学科のテーブルの端の方のテーブルに案内された。

 そこには三人の先輩が座っていた。


 一人はうとうと船を漕ぎながら寝ている男の先輩だ。濃いグレーの髪色で、高等部の生徒なのか前に投げ出した足が長かった。

 もう一人は中等部位の女の先輩で濃い青色の髪。つまらなそうに、自分の髪の毛を指先にくるくると巻きつけている。

 最後、恐らくウィルと同じ位の女の子がいた。金色の髪をショートカットにしていて、葡萄色の瞳をしている。きれいな子だった。


「おい! ちゃんと呼びに行けよ。魔法剣の新入生困ってたぞ!」


 赤髪の先輩は、船を漕いでいた先輩の椅子を蹴って起こした。


「え? 新入生……あぁ、ほんとだ。名札気づかんかったわ。ありがと」


 グレーの髪の先輩は、ぶっきらぼうにお礼を言った。赤髪先輩は自分の席へ戻っていった。


 金髪の女の子の隣の席に名札があったので、メイはその席に座った。ユオの名札もメイの隣にあり、ユオも席に座る。メイは恐る恐る先輩たちに挨拶をした。


「あの……メイ・ヴィーエラです。はじめまして、隣にいるのは、使い魔のユオです……」


 使い魔で学籍登録してしまったので、先輩たちにもそのように紹介したが、隣の席の女の子が驚いて立ち上がった。


「え!? 使い魔がいるの!? ていうか、人型!?」


 女の子は、メイとユオを交互に見た。どうも疑っているらしい。


 メイは冷や汗をかいた。


「ユオ、お願い、猫になって」


 ユオは一瞬嫌そうな顔をしたが、メイのお願いは断れない契約になっているので、すぐに猫になる。

 隣の女の子は、目を丸くして驚いた。


 グレーの髪の先輩が、急に笑い出した。


「成る程、なかなかおもしろいのが来たじゃないか。歓迎するよ。俺はドルだ。魔法剣専攻の専攻長をしている。リーダーみたいなもんだ。よろしくな」


 ドルは手を出してきたので、メイはドルの手をとり握手した。ドルはユオとも握手をしようとしたが、いつの間にか人型に戻っていたユオは応じなかった。


「ていうか、ヴィーエラって、フィンド王都の大店じゃない? 才能もあって、お嬢様って訳ね。

 私はフランだよ。一応、副専攻長をしてるけど、見ての通り、うちは人数が少ないから年功序列で、ドルが専攻長。私が副専攻長ってかんじ。

 よろしくね。魔法剣専攻は、私しか女子いなかったから、歓迎するよ。寮のこととか、困ったことは何でも聞いてね」


 フランもメイと握手をしてくれた。


「え? この先輩も女子なのかと……」


 メイは思ったことを口にしてしまった。隣に座っていた金髪のきれいな子は、女子ではなく男子だったらしい。

 メイの言葉を聞いて、ドルとフランが吹き出して笑った。

 金髪の先輩は、顔を真っ赤にして歯を食いしばっている。


「新入生の癖に生意気だ! 僕は認めないからな!」


 何を認めないのか、メイにはさっぱり分からなかったが、金髪の先輩はそっぽを向いてしまった。


 見かねたフラン先輩がメイに助け舟を出す。


「この子はリンドだよ。かわいい顔してるけど、男子で、なんと隣国エーデンの第三王子なのだよ。そして、魔法剣専攻、最年少転科生だったんだけどね」


 (なんと! 王子さまだと!?)


 メイは目を大きくして驚いた。


 (失礼な態度とっちゃったけど、大丈夫かな? あと、最年少転科生ってなに?)


 ドルが説明してくれた。


「普通、魔法剣専攻って新入生がいきなり入ってくる専攻じゃないんだよ。

 皆、普通に長剣専攻とか別の専攻で入学してきて、魔法の授業も受けてレベルが上がってきたら、専攻を変えて入ってくんの。

 最年少転科生ってのは、何年生の時に魔法剣専攻に転科したかを勝手に競ってんだ。メイが入ってくるまでは、リンドが初等部の二年で転科してきたから、最年少転科だったってわけ」


「な、なるほど……」


「まだ分からないよ! 職業診断の儀式では適性があるって認められて、希望する学科に入れても、お迎えテストで実力を示さなきゃ転科になるんだからな! 明日にはお迎えテストがあるから、それで魔法剣専攻への入学を認められなかったら、他の専攻に移動になる!」とリンドはそっぽを向いたまま話した。


「え…… お迎えテスト……?」


 メイは初めて聞く事実に、胃が締め付けられる思いだった。

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