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天才薬師と弟子  作者: ポムの狼
第1章 先生と弟子

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第16話 対価

「おいおい!どうした!元気だせ!」


 オルガとアルトの研修担当冒険者は、今は王都の冒険者ギルドで働くゴードンとローラだった。二人ともまだ、20代くらいか今より若く見える。ゴードンの頬にある傷痕はまだなかったし、今のローラは髪を短く切ってボブにしていたが、この時のローラはキャラメル色のきれいな髪を伸ばしていて、風になびいて美しかった。


 四人は冒険者ギルドの支部がある隣町まで、歩いて移動していた。


 元気がなかった、オルガの背中を強くたたきながら、ゴードンはオルガに声をかけた。オルガは職業診断の儀式で薬師と診断されたことや、アルトをサポートしたくて冒険者を志望したこと、家族に反対されながら街を出たことをゴードンとローラに説明した。


 ローラが明るい声でオルガを励ました。


「反対してくれるなんて、いいご両親じゃない!私の時なんか、親に娼館に売られそうになって、逃げるように冒険者になったんだから!」


 娼館の話を聞いて、オルガはぎょっとした。自分はまだましな方なのかなと少しだけ前向きになることができた。


「志望理由が、幼馴染を助けるためっていうのもいいな! 冒険者には、金のためにやってるって言うやつらもいるが、やっぱり誰かを守りたいっていう気持ちが大事だと俺は思ってんだ」


 ゴードンは熱く語っている。


「俺とローラも夫婦なんだが、守りたいやつが近くにいるとやっぱり力が湧いてくるような気がすんだよ」


「え? 二人は夫婦なんですか?」


 アルトが話の輪に加わってきた。


「そうよ。ずっとパーティを組んでいて結婚したの」とローラ。


「ずっと二人でダンジョン攻略とか、割と最前線でやってたんだけど、私がちょっと足を痛めちゃってね。危ない仕事はセーブしようってことになって、今は新人指導の仕事をしているのよ。私は、ゴードンだけでも他の人とパーティ組んで、ダンジョン行けばって言ったんだけどね」


 ローラはチラッとゴードンに目配せする。


「俺がローラと一緒じゃないと調子でないんだよ!」


 ゴードンはローラの肩を抱き寄せて、ローラはゴードンの頬にキスした。


 オルガは、顔を真っ赤にさせて、顔を手で覆ってしまったが、アルトは目をきらきらさせながら、尊敬のまなざしを二人に向けている。


 子供の前で何をやっているんだと、知り合いの黒歴史をメイは冷静に眺めた。


「まずは、支部によって、二人の冒険者登録をするよ。あと、旅の仕方とか、文字とかも少しずつ教えていくからね。これからは、私たちが家族だから、なんでも頼ってね」


 ローラはアルトとオルガに優しく微笑みかけた。





「ちょっと、まって!」

「ニャ!!」


 メイはユオは抱き上げて、自分の膝の上にのせた。泉に映っていたものが揺らいで消えた。

 驚いたユオは毛を逆立てて、メイをにらみつけた。


「何をする!」


「だって! これ、見ちゃダメなやつじゃん!」


 メイはゴードンとローラの黒歴史を見て、目を覚ました。人のプライベートを勝手に見てはいけないと気が付いたのだ。


 ユオはまたメイと距離を取って「やっと気が付いたか。だから、聞いたではないか。本当に知りたいのかと」と言った。ついでにメイに触られて乱れた毛並みをぶるぶると身震いして整えた。


「あとさ、気になったことがあるんだけど」


 メイは遠慮なく気になることをまくし立てるように聞いていく。


「あの映像おかしいよ! どうして、ちょうどいいところばかり映るの? まるで、誰かがいらないところを切り取ったみたいで……」


「ほう!そこに気が付いたか。我が契約者様はなかなか賢いようだな」


「はぐらかさないで教えて! ユオがやっているの?」


「ふん。世界の理に関する事項なので、教えられないな」


 メイは納得がいかないといった風に眉間に皺を寄せた。


「なによ……世界のことわりって…… 子供だからって、難しい言葉でごまかしているのね!」


「好きなように判断しろ。では、契約通り対価をいただこうか」


 距離をとっていたユオが急に走り出し、メイの手にお手をした。


 メイは血の気が引いて、さっと体が冷たくなる感覚に襲われた。めまいがして、その場に倒れこんでしまった。ユオに文句を言おうとしたが、声が出なかった。


「初めてだから、体の負担が大きいのだろう。しばらくは動けないはずだ」


 ユオはそう言うと、動けなくなったメイの腹の上で丸くなって寝始めた。


 (ちょっと! どうすればいいのよ!)とメイは心の中で文句を言ったが、やはり声にはならなかった。


 やっぱり、先生とセヴェリの出会いも見せてもらえば良かったと、後悔しながらメイは気を失った。




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