第2話 姫が見た真実
一週間後、青年は王都に招かれた。
彼が救ったのは、セルフィア王国の王女——ルミエル。
十五歳になったばかりで、聖なる神殿の職業鑑定によって「聖女」の称号を得た人物だ。
王城に入るため、青年も職業鑑定を受けることになる。
大理石の間に置かれた鑑定石に右手を置き、目を閉じる青年。
——本気を出せば石は砕ける。だから彼は力を極限まで抑えた。
光が走り、結果が表示される。
E——最下級
一瞬の沈黙の後、笑い声が広がる。
「Eだと? 姫様の護衛が?」
「農夫でもCくらいはあるぞ」
青年は何も言わず、ただ微笑んだ。
(この方が都合がいい……)
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その夜、ルミエルは日記を開き、森での出来事を思い返していた。
——あの日、襲撃者の中にはA級の騎士もS級の魔導師もいた。
それを、この青年は——まるで蟻を潰すように、一瞬で。
「……あなた、何者なの?」
彼女は答えを求めるように月を見上げた。
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翌日、玉座の間。
「父上、この方を——私の専属護衛にしてください」
ルミエルの言葉に王は眉をひそめる。
「Eランクの男を、か?」
「はい。……私は見ました。彼はEではありません」
重臣たちが失笑する中、ルミエルは一歩も引かない。
やがて王はため息をつき、「好きにしろ」と命じた。
こうして青年は——表向きはEランクのまま、姫の側に仕えることになった。
人々は嘲笑い、噂は広がる。
「姫は田舎者を拾った」
「数日で逃げ出すさ」
だが青年は心の中で静かに笑っていた。
(笑えるうちに笑っておけ……真実を知った時、立っていられるかどうか)




