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15.「いざ、魔王島へ」

 時は少し遡って。


「ん~! やっぱりロマノシリングのポトフが一番よね!」

「うん! 美味しい!」


 僕らは、オースバーグ王国王都にて、魔王との決戦前の最後の食事を楽しんでいた。


「ねぇ、ルド君……ルド君は、何があっても私のことを信じてくれる?」


 食べ終わった後、真剣な表情で、対面に座るお姉ちゃんが訊ねる。


「うん、信じる! だって、お姉ちゃんすごく優しいし、良い人だもん!」

「……そう……ありがとう……それなのに、ごめんなさい……」

「え?」

「ううん、何でもないわ」


 声が小さくて聞こえなかったので小首を傾げて聞き返すと、お姉ちゃんは首を横に振った。


※―※―※


「お馬さんたち、今までありがとうね!」

「「ブルルルッ」」


 僕らの旅を支えてくれた馬二頭に礼を言って、最初に買った商人さんに買い取ってもらった。


 空を見上げる。

 太陽が燦々と輝いていて、絶好の魔王討伐日和だ。


「お姉ちゃん、それじゃあ、行くよ!」

「ええ、お願い!」

「固有スキル〝呼吸〟!」


 僕らの背中に翼が生えて、大空へと舞い上がっていく。


「見て、パパ! あの人たち、翼が生えて空飛んでる!」

「はっはっは~。それは愉快だな――って、本当に翼生えて空飛んでるー!」


 王都中央通りを歩く父娘が空を見上げて目を見開く中、僕らはグングン上昇していく。


「そう言えば、ルド君、またレベルアップしてたわよ。LV 400になってたわ!」

「またまた上がった! やったああああああ!」

「くすっ。固有スキル〝呼吸〟が<LV 3>になっているわ。あと、〝パンチ〟も<LV 2>になっているわね」

「〝パンチ〟まで! 嬉しい!」

「それと、私もLV 208になっていたわ」

「お姉ちゃんと一緒に上がった! わ~い!」

「……フフフ……これだけ高レベルになれば、あとは、魔王とぶつかり合ってるのを距離を取って傍観、倒すまで安全圏にいれば、目標達成ね」

「お姉ちゃん?」

「ううん、何でもないわ。気にしないで」


 しばらくして、高空へと到達した僕らは静止した。


「ここ!」

「本当に王都の真上なのね……生まれ育った国の上空に魔王城があっただなんて、変な感じだわ……」


 僕が指差すと、お姉ちゃんが何とも言えない複雑な表情を浮かべる。


「認識阻害魔法を突破して感知するとは……どんなカラクリか知らぬが、魔王島がここにあることは見抜いているようじゃのう。褒めてやるのじゃ」

「「!」」


 突然、地の底から響くような、低くて暗くて怖い声が響いた。


「誰!? 魔王!?」

「ククク。その通りじゃ」

「あら、結構簡単に答えてくれるのね。場所も白状して、正体も明かしてくれるだなんて」

「なぁに。真実を告げたところで問題は無いと判断してのことじゃ。魔王城がある魔王島の場所を突き止めたとて、お主らが侵入することは不可能じゃ。何せ、この魔王島には『不可触魔法アンタッチャブル』が掛けられており、上陸はおろか、触れることすら不可能――」

「たあああああああああ!」


 パリーン


「………………へ?」


 僕がパンチすると、何も無かった青空に〝罅〟が入って、金属が割れるような音と共に粉々になり、中から〝浮遊する島〟が出現した。中央に聳え立つ漆黒の城は魔王城だろう。


「なっ!? は!? え!? 何故触れられるのじゃ!? しかも、一発で破壊したじゃと!?」

「〝お祈り〟したから! えっへん!」

「そんなんで願いが成就してたら、失恋に泣く乙女など出てこんじゃろうが!」


 胸を張って答える僕に、魔王が声を荒らげる。


「くっ! 儂の魔法を一度破ったくらいでいい気になるなよ! 『プロテクト』!」


 魔王島全体が、光り輝く魔法障壁で覆われる。


「ククク。これでお主らは、永遠に儂のもとに辿り着くことは出来な――」

「神さま、お願いします! 〝お祈り〟サンダー!」


 ドーン

 パリーン


「ひゃい? 儂の最上級防御魔法が、雷撃一発で……!? いやいやいや、まぐれじゃろうて! 『プロテクト』!」

「〝お祈り〟サンダー!」


 ドーン

 パリーン


「そ、そんな馬鹿な!? 『プロテクト』!」

「〝お祈り〟サンダー!」


 ドーン

 パリーン


「う、嘘じゃろ!? 『プロテクト』!」

「〝お祈り〟サンダー!」


 ドーン

 パリーン


「……はぁ、はぁ……こ、このままでは魔力が……こうなったら仕方ない! 出でよ! ドラゴン軍団!」

「「「「「ガアアアアアア!」」」」」


 魔王島のあちこちから、大勢のドラゴンたちが現れ、飛んできた。

 見ると、それぞれ、僕たちに向かって炎や氷、雷など、数え切れない程のドラゴンブレスを吐いている。


「ククク。お主らが苦労して倒した四天王のアイスドラゴンと同格のドラゴンたちが千匹以上おる! これで、今度こそ終わり――」

「固有スキル〝パンチ〟!」

「「ギャアアアアアア!」」

「……ん?」


 僕が空中に静止したまま、腰を落として右手を引き、力強く突き出すと、無数のドラゴンブレスを掻き消しつつ、二匹のドラゴンを撃ち落とす。


 見ると、お姉ちゃんも翼を自在に操りながら、「やあああああああああ!」と、一匹のファイアドラゴンを一刀両断していた。


「固有スキル〝パンチ〟!」

「「「「「ギャアアアアアア!」」」」」

「……え?」


 今度は五匹同時に仕留めた。


「固有スキル〝パンチ〟!」

「「「「「ギャアアアアアア!」」」」」

「……はい?」


 今度は十匹同時に倒した。


「固有スキル〝パンチ〟!」

「「「「「ギャアアアアアア!」」」」」

「……う、嘘じゃろ!? 嘘と言うてくれ!」


 今度は百匹同時に討伐。


「固有スキル〝パンチ〟!」

「「「「「ギャアアアアアア!」」」」」

「……はああああ!?」


 今度は千匹同時に討ち取り、ドラゴンは全滅した。


「ルド君、LV500になってるわよ! 〝パンチ〟と〝呼吸〟のスキルレベルも上がってるし、私もLV238に上がったわ!」

「わ~い! やったあああ!」

「何ドラゴン軍団相手にレベリングを楽しんどるんじゃ! 喧嘩売っとんのか!?」


 魔王の声が震える。


「お、落ち着くのじゃ、儂。そうじゃ。あやつらが魔王城に侵入して最上階に辿り着くまで、そこそこ時間が掛かるはずじゃ。その間に立て直して――」

「〝お祈り〟サンダー!」


 ドーン


「………………へ?」


 雷撃で魔王城の屋根を壊すと、最上階にある玉座の間の天井も崩壊、玉座に座る魔王が、唖然としながら、僕らを見上げる。


 玉座の間にフワリと着地した僕らは、魔王と対峙した。


「何してくれとんのじゃ!? 魔王城じゃぞ!? 〝ラストダンジョン〟みたいなもんじゃぞ!? ちゃんと一階の入り口から入って、そこから上って来るのが筋じゃろうが! 頭沸いてんのか!?」

「ここからが本番だ! 行くよ!」

「行くよじゃないのじゃ! 無視するな!」


 こうして、僕らと魔王の戦いが始まった。

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