思ってたのと違うぅ!!
いや、いやいやいや!?
はじめまして、黒峰 蒼27歳、しがない会社員です。
すみませんね、色情報多い名前で。
って、そんな事は今はいいんだよ!!
言わせてください!あのセリフを!!超有名なあのセリフ!!
「ちょ、待てよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
あんまり小説読む方では無い俺でも分かる。
俺が思ってた【転生】と違う!!
なんとなくの理想ってのがあるだろ?!
ファンタジー!って感じで!ドラゴンとか飛んでて!建物もヨー○ッパ!?みたいな感じで!!って。
俺が今立ってるの、、、
めっちゃ和風。
世界観が【和】なんだよね。
元々、神社仏閣とかは好きだし、着物とか、あの独特の街並みも大好きだぜ!?
でも、転生って言ったらここじゃない感は正直否めない。
転生前だって、よく見る、死んでしまって、とか本に吸い込まれて、とかとも違った。
仕事終わり、通勤路の街頭に照らされる道を歩いていたら鳥居が立ってたんだ。
普段と違う事と言えば、時間が遅いからか人とすれ違う事は滅多に無い帰り道。
でも今日は五人程の集団を見かけた。
それくらいだ。
鳥居に見覚えは無かったが、いつも携帯見てて気付かんかったんか?くらいに思ってそれ以上疑問を抱く事無く通った。
、、、そしたらここにいた。
よし。俺が今見ている視覚情報を整理しよう。
目の前には大きな鳥居。
一応もう一度通ってみたが元いた世界に帰る事は出来なかった。
鳥居の奥にはいかにも和風な建物、賑わう町、歩いているのは着物を着たツノが生えた人間(鬼神、か?)、立って歩く人間と同じ程の背丈をした犬、猫、きつね、その他動物達。
動物も着物着るのか、、。
町の反対側、つまり俺の後ろには木々が生い茂る山が連なっている。
何度か深呼吸し、どうしたものかと鳥居付近をグルグル回っていると、
「おい。」
低くゆったりとした良い声の持ち主が俺を肩を掴んだ。
「先程から何をしている。
風体からして物売りでは無いな?」
いきなりの事に早なる鼓動を抑えながら声主の方向を振り返ると、キリッとした顔立ちのうさ耳を生やした男が立っていた。
か、顔と耳のギャップがすごい、、、!!
これがこいつの第一印象だった。
「実は、、、」
話して信じてもらえるものなのか、変な奴だと思われて捕らえられたりしないだろうかと不安はあったが、一人では対処出来ないと確信があったため、俺は今までの経緯を話した。
【転生】と言うより、【迷い込んだ】の方が正しいかも知れない、と言う事も含めて。
俺のおぼつかない説明を最後まで聞いてくれた心優しい男は両耳を折り曲げ、腕を組み考え込んでいた。
「ふむ。我も【転生者】という物は書物で見た事があるが。【迷い込んだ】となると生きたまま己の世界とは違う世界に来てしまった、という事であろう。
知識が及ばず申し訳ない。我は今から大社に行く予定だ。共に来い。主様ならば分かるやも知れぬ。」
主様、とはこの国を治めている人らしい。
俺はこの親切な男と共に大社に出向く事となった。
道中の会話で男の名前が
京雷だと知った。
うさ耳なのに、名前が厳つい、、
京雷の耳が印象強すぎてか俺はいちいちツッコまずにいられなかった。
洋装の俺が気になるのか周りから視線を感じながらも大通りらしき一本道を抜けると、今までに見たどの神社仏閣よりも大きな大社が現れた。
ぅう、、。緊張する、、。
京雷が主様に会うための手続きを済ましてくれている間に俺は必死に心を落ち着かせる。
実際に御簾越しに主様と対面する瞬間、嘔吐しそうになった。
空間を纏う空気が背筋を伸ばさずにはいられない。
、、、初めての面接!面接みたいな感じだ!
俺はなるべく簡潔に、分かりやすく事情を説明する。
すると、ペラりと紙をめくる様な音が聞こえ、主様は抑揚の無い声でこう言った。
「まず、貴方は今、既に死んでおります。
貴方が元いた世界で鳥居を見る前、貴方の心臓は止まってしまったようです。
そこで一般的には死後の世界から遣いが来るのですが、、、。
貴方は遣いが来るよりも先に、この世界へ繋がる鳥居をくぐってしまったようです。
ですので、貴方が仰るように【迷い込んだ】のであれば正式な手続きを行い元の世界へ送還するのが世の理ですが、亡くなっているのであれば、【転生】で間違いないでしょう。
ちなみに死因ですが、転倒した際に舌を噛んでしまいショック死したそうですよ。」
ほうほう!そうなんだ!!御簾越しにうっすら見えるあの本って俺の事全部書いてあって、えぇ!?!?
え!?俺死んだの!?
死因それ!?転倒?!舌噛んだ!?ショック死!?
だざすぎんだろ俺ぇ、、、。
一昔前の漫画なら頭上を小さなヒヨコがぴよぴよ駆け回る感じの衝撃と驚きだわ!!!
主様は何も言葉が出ず放心状態の俺を焦らす事無く待ち続けてくれた。
「俺、、は。ここでどうやって暮らしていけば良いのでしょう?」
全ての事を理解出来た訳ではもちろん無いが少しづつ、主様の言葉を飲み込み、俺はこれからどうすれば良いのか聞いてみた。
「この国の者達は大なり小なり妖術を使う事が可能です。妖術にも種類があり、自身の身体を使う者、力を物に移動させて使う者。
細かく細かく言えば十人十色、同じ術は二つとありません。
貴方も自分に適した術を見つけてください。
幸い、社の中に妖術管理局があります。
そこでどんな適性があるのか調べられてはいかがでしょう?」
何も知らない俺に丁寧に対応してくれた主様。
この人が治める国なら、思い描いてた【転生】とは多少違うけど楽しくやっていけそうな気がする。
数十分前の不安しか無かった気持ちとは打って変わって新たな人生の幕開けに少し心踊らされる。
なんて単純な男なんだ俺は。
だって!!妖術使えるかもー、とか、、ちょっと嬉しいじゃんかよ、、、!!
「ご丁寧にありがとうございました!」
主様に礼を言い、妖術管理局なる場所へ向かう。
部屋の前で待っていた京雷に
「京雷、俺の妖術適性何だろうな!」
と、声を弾ませると仏頂面だった京雷の口元がフッと緩んだ。