「世界のナベツネ」死去
◇政界、野球界に絶大な影響
筆者:
今回は24年12月19日に98歳で逝去が報道されました読売新聞主筆の渡辺恒雄氏、通称ナベツネ(本稿では渡辺氏)について個人的な意見を述べていこうと思います。
質問者:
具体的にどのような方だったんですか?
筆者:
まず「主筆」という地位について皆さん聞き慣れないと思います。
主筆と言うのはその会社の言論の最高決定権者であり、論説だけでなくニュースも含めて社論の全ての決定権を持ちます。
このような地位に2016年から就任し、それ以前も会長職などに就き、名誉職とは思えないほどの発言力を持っていました。
それだけの力を持っていたのはやはり「功績」が絶大だったからでしょう。
読売新聞社に入社後、正力松太郎氏に抜擢され、田中角栄元首相や中曽根康弘元首相などと繋がりがありました。
政治力は新聞が「消費税軽減税率8%」に含まれていることも大きなものを感じます。
憲法改正にも強く意欲的で、
渡辺氏が社長だった「1994年読売憲法改正試案」の時点で「緊急事態条項創設」がありました。
『国の独立と安全又は多数の国民の生命、身体若しくは財産が侵害され、又は侵害されるおそれがある事態が発生し、その事態が重大で緊急に対策をとる必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、全国又は一部地域について、緊急事態の宣言を発することができる。』
と定義としては幅広く危険視できます。
このように今の自民党の政策に対しても非常に大きな影響力があるのです。
質問者:
今、定義についてあれだけ危険視されている緊急事態条項についてそんな前から提言していたのですか……。
筆者:
ただ、同時に「ブレーキ機関」として「一切の条約、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する唯一の裁判所である。」憲法裁判所の設置も提言。20日以内の国会の承認が無ければ設置の解除の規定も存在しているので、「緊急事態条項暴走」を防ぐ要素もあります。
「自民党案はナベツネより酷い」と見ることも可能なのです。
質問者:
こんなにも嫌われている方より自民党の案の方がもっと酷いって凄い話ですね……。
筆者:
そんな政治にも影響力のある渡辺氏ですが、
2007年、第54回カンヌ国際広告祭で世界のメディア業界の中から傑出した人物を讃える「メディアパーソン・オブ・ザ・イヤー」を受賞しました。
当時は朝夕刊で1400万部の世界一の発行部数である読売新聞ほか、テレビ局、出版社、プロ野球球団など広告媒体としても大きな影響力を持つグループを率いていることが評価されたようです。
質問者:
政治的に影響力があればそれぐらいの勲章は“当たり前“とすら思えますね……。
筆者さんは野球好きですが、読売と言えば巨人ですよね?
筆者:
野球について渡辺氏が脚光を浴び、そして嫌われた大きな事件は2004年の「球界再編問題」です。
当時、近鉄とオリックスの合併、ライブドアOR楽天の新規参入、1リーグ制の移行議論、などの様々な問題がありました。
そんな中、当時球団オーナーも兼任していた渡辺氏は当時選手会会長の古田氏が「選手を無視して話を進めないで欲しい。選手とオーナーで対話を」という提案に対して世間的に大きく知られている、
「分をわきまえなきゃいかんよ。たかが選手が」
と発言し、大炎上しました。
世論の大反発もあり、近鉄とオリックスの経営統合はあったものの1リーグ制は断念。
近鉄の選手のオリックスと楽天への分配が決まりました。
あの当時まだ子供で事件の全容や事の重大さはよく分からなかったんですけど、
「ナベツネとかいう爺さんに古田が勝ってよかった」という事は何となく覚えていますね(笑)。
質問者:
その後、渡辺さんは球団オーナーから辞任しましたがこの一件が原因だったんですか?
筆者:
それもあったと思いますが、2004年8月13日の当時明治大学野球部に所属していた一場靖弘氏に対する裏金事件が発覚したことが球団代表を退いた直接の原因でした。
昭和の時代から平成の中頃ぐらいまでは「江川事件」を代表として色々と制度の穴を付いて「金権政治」に近いことをやっていました。
元総理大臣の田中氏や中曽根氏の「政治的手腕」を間近に見てきた渡辺氏もそれに倣って「選手を獲得」してきたのでしょうね。
◇「対米従属保守」を量産した読売
質問者:
世間様が見ていないところで、お金で選手が動いたら問題ですよね……。
読売新聞は1400万部販売していた時代もあったようですけど、
保守的な新聞という事で有名ですよね?
筆者:
ただ、僕が思うに「アメリカ様の意向に沿った保守新聞」と言う感じがします。
米兵が事件を起こしてもあまり取り上げませんしね。
これは渡辺氏の上司だった正力松太郎氏がCIAのコードネーム「PODAM」を持っていた事実上のスパイであることがアメリカの公文書から分かっています。
そのために読売新聞や日本テレビが「アメリカのプロパガンダ機関」としての性質が強いのだと思います。
日本でトップの新聞媒体が他の国の意向に沿うような状況と言うのは国益を棄損すると考えます。
徐々にではありますが、日本を「悪い方向」に導いてきた張本人であると僕は評価しています。
質問者:
しかし、近年はその読売新聞の発行部数も日本テレビの視聴率も低下しているのですが……。
筆者:
政治においてもSNSなどのいわゆる「ニューメディア」がテレビや新聞などの「オールドメディア」よりも影響力が増してきていますよね
結果や候補者の是非についてはここでは語りませんが、
今年起きた大きな選挙である東京都知事選挙や、兵庫県知事選挙や衆議院選挙の国民民主党の躍進にSNSが大きく活用されました。
そんな中で「新聞・テレビのボス」とも言える渡辺氏が亡くなったのはメディアの移り変わりの象徴とも言える事象でだと思います。
◇これからの「メディア」の在り方
質問者:
ニューメディアVSオールドメディアの対決で今後はニューメディアが勝っていくのでしょうか?
筆者:
どちらかというと皆さんは「色々な視点」と言うのを求めているのだと思います。
正直な話、ほとんどどのテレビや新聞は「左VS右」というイデオロギーの立場以外に「特色」と言うのが見えてきません。
そのような状況に少なからず読者・視聴者は不満を覚えていたのではないでしょうか?
そんな中でSNSなどはデマなど玉石混交ではあるのですが、「様々な視点」を提供していることから「刺激的」なのだと思います。
ですから、「オールドメディア」もSNSと同様な「様々な視点」を提供することが出来れば皆さん戻ってくると思います。
オールドメディアは情報を入手する上での信憑性ではニューメディアを上回ることは否定できませんからね。
質問者:
それならどうしてオールドメディアはどこかしらか偏っているのでしょうか……。
筆者:
やはり広告主である「スポンサー様」の影響力が非常に大きいからでしょうね。
「スポンサー様」に都合の悪い情報を流すことは出来ないでしょうし、
政府も「政府広報」という形でお金を出しています。電波を使う事を総務省から認められていることも大きいでしょう。
このようにオールドメディアに「ある程度の政府への忖度」と言うのは「やむを得ない」と、考慮していく必要があります。
ただ、視点が増えなければ「オールドメディア」の広告出稿数は減少し「ニューメディア」はその分だけ拡大し続けるでしょうね。
質問者:
しかし、SNSもデマ情報と言うのは酷いですよね……。
発信している情報が例えデマであったとしても、
アテンションエコノミーで見られれば見られるだけ収益が増えると言う状況ですから……。
筆者:
デマ情報の定義と、デマを流布し他者に損害を与えたものに対して処罰、収益剥奪などの法的制裁を持たせることが大事です。
それと同時に責任を持って発信することの倫理観を学んでいくことが非常に重要だと思います。
今、SNSを活用している全ての方はメディアの発信者としての責任と受け取る側としてのリテラシーの両方を兼ね備える必要があります。
皆さん知らず知らずのうちに「小さいメディアとしての力」を持ってしまったという事を自覚してSNSを活用していく必要があると思いますね。
質問者:
確かに、「オールドメディア」とか批判気に言っておきながら自らも「メディアの責任」を少なからず持っているという事を自覚していく必要がありますね……。
筆者:
僕も今後も引き続き自覚をして発信していこうと思います。
持っていないように見えるのであれば、これでも自覚を持っているんですとしか言いようが無いんですけど(笑)。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は
・渡辺恒雄氏の死去と、起こした出来事について触れていき
・今後はニューメディアに移行するものの利用者の全てが「自覚」を持って発信していくべきだという事をお伝えしました。
今後もこのような社会的に注目されている出来事について個人的な意見を発信していきますのでどうぞご覧ください。