プロローグ
世界には魔力が満ちている。それに伴って、魔法も存在している。
人々は、古から魔力もとい魔法と共存して暮らしていた。魔法を使って水を湧かせ、火を起こした。涼やかな風や明るい光をもたらし、豊かな暮らしを満喫していた。
しかし、それは全員に与えられた恩恵ではない。
魔力の量は人によって差があり、十二分に魔力保有量があるものは問題なく恩恵を受けることができるが、保有量が少ないものは灯りをつけるのもやっとだった。
ここで、弱者と強者が出来上がる。
生活のため、弱者は強者に頼る必要が出てくる。最初は快く受けていた強者も、繰り返し続けば見返りを求めるようになる。しかし、弱者が渡せるようなものは限られる。
金だ。
弱者は、見返りとして金を強者に渡し、強者は金を得て弱者に施す。だが、弱者と強者。能力が高いのは後者だ。故に、稼ぎは強者の方が高く、弱者の方が低い。
弱者は強者の能力を羨んだ。自分にない力、地位を。
そして、時間が経つにつれて羨む心は、嫉妬、嫌悪と化す。
弱者と強者の能力は強者が上だが、人数比で言えば弱者が上だった。
弱者は思いを共にする者として集い、今の生活から脱却すべく、武器を集めた。魔法では誰も強者に敵わない。しかし、多くが集って武器を用いればあるいは、と。
強者は、自分の地位に胡座を描き、自身を鍛えることを怠っていた。魔法において、誰も自身に敵うまいと思って。
そしてそれは、ある夜決行された。
闇世に紛れ、弱者は強者を襲撃した。突然のことに強者は慌てふためき、反撃の余地もなく命を落とした。まさに多勢に無勢である。
強者は、弱者が魔法を行使してくると思っていた。しかし、弱者が行使したのは武力だった。それが強者の誤算だった。
これにより、強者は斃れ、弱者が見下される世の中は無くなった。それと同時に、豊かな暮らしも無くなった。
当たり前だ。嫌悪を持っていた相手といえど、自分達の暮らしを豊かにする存在であったことに変わりはない。それを、自らの手で葬ってしまったのだ。
弱者達は己の行動を悔いた。なぜ、倒すという考えに至ってしまったのかと。そして、実行してしまったのかと。
人間はこの過ちを後世には語り継がなかった。自身の汚点を隠そうとした。それにより、この歴史はしばし繰り返される。
神は見ていた。この愚かな歴史を。人間の浅ましさを。
魔力は、神がこの世界に与えた恵みの一つだ。人間を好いていた神は、人間の豊かな生活を思い、魔法を与えた。しかし、その力を人間は争いに変えてしまった。そして、その歴史を繰り返した。
一度与えたものは、神といえど簡単には取り上げることが出来ない。そこで、神は新たに人間に与えることにした。
それが、魔紙である。
時は流れ、新暦1996年、世界は魔力に満ちており、誰でも魔法を行使することができる。ただし、魔紙をもって。
いくつもの国が存在し、多種多様の生物が暮らしている。それに伴い、言語も様々ある。
フィオトガ王国は、世界の中でもその名を広く轟かせている大国だ。豊かな土地、豊かな人材を持ち、他国から友好国として求められている。
それは単に、敵国とならないようにだ。過去に、何度となく繰り返された弱者による強者斃し。しかし、王国においては、その力は意味を為さず、早100年が過ぎ去ろうとしていた。
王国を治める王は、賢王として知られ、武力を持っての制圧は行われていない。しかし、重要なのは出来ないのではなく、していないということだ。つまり、やろうと思えばいつでもできる力がある、ということになる。
王は力を示しつつも、言葉でのやり取りを主とし、他国との軋轢を生まぬように努めた。また、自国の才能あるものを囲い込むことはせず、本人の意思のまま、自由に世界を渡り歩けるようにした。
それにより、他国も王国を脅威としてではなく、一国家として穏やかに見るようになった。また、それまで見ることの出来ていなかった自国の才能達にも気付き、学問の場を作ったり、留学を許したりするようになった。
世界が開かれるまで、1000年以上の時が経っていた。
よろしければお付き合いください。




