9 国王派の侯爵様へのざまあ
「痛たたたたっ」
急に右の脇腹が痛くなった
この痛みには覚えががる
『魔女の悪戯』だ
腰が急に痛くなるのが『魔女の一撃』
脇腹が痛くなるのが『魔女の悪戯』
特にタチが悪いのが『魔女の悪戯』だ
なにせ痛みが数日続いたかと思うと最後には死に至るのだ
薬師に見せても、医者に見せてもどうにもならない
どんな薬も効かないという最悪の病気だ
もっとも近年ではそうでもなくなった
聖女の治癒魔法があるからだ
教会が見つけた貴重な治癒魔法使いを国王は召し上げ『聖女』として祭り上げた
そして交渉の切り札として使うようになった
わが侯爵家は代々国王派である
おかげで『魔女の悪戯』が起こったとき聖女の治療を受けることが出来た
・・・国王に対立していた伯爵家の息子が『魔女の悪戯』に罹った時は「聖女の体調が悪い」との理由で治癒魔法を使わせず、見殺しにしたので幸運だったと思う
まさに最強の交渉の切り札を得た国王は国内だけでなく、国外でも無敵の存在であった
もっとも使い過ぎたせいか近年では力の衰えが酷くなってきていた
最初のうちは貴重な切り札なので衰えを隠していた
だが、やはり衰えが酷くなると隠し切れなくなってきた
もはや捨てるのもやむを得ずという所まできていた
切り捨てるのはまあ仕方がない
だが国外追放はやり過ぎだろう
多分初めての大舞台に調子に乗った王子の独断だろう
王としてはここは口出しせずに後で秘密裏に聖女を回収、保護と言ったところだろうな
いや我が家にその命が下るかもしれない
そうしたら今までの礼も含めて厚遇してやろう
そう思っていたら『魔女の悪戯』が来た
一体何が起こったのだろう?
いや早く聖女に治療をして貰わねば!
いくら力が衰えたといっても時間をかければ治癒できるだろうからな
そう思うが痛みのあまり動くことができない
ただ冷たくて固い床に蹲って痛みに耐えることしかできなかった