8 筆頭公爵へのざまあ
身体から力が抜け落ちるようだった
いや身体に力を入れようとしても入らないというのが正しいだろう
おかげで床に倒れこんだ
ああこの冷たくて固い感触は久しぶりだ
そう思った
私は筆頭公爵の当主となるべくして生まれた
ただ身体が弱く、生まれてからほとんどのをベットで過ごす日々だった
だから身体に良いとされることは何でもした
苦い薬
身体に良い食べ物
適度な運動
湯治
ありとあらゆるものを試した
だが身体が普通になることはなかった
諦めかけた時、聖女が現れた
王家が囲ったとの噂が上がったのですぐに治癒を頼み込んだ
結果して大成功だった
何回かの治癒魔法により普通に暮らせるようになった
まさに奇跡と言って良かった
喜んで後ろ盾になることを申し出た
まあ当然のことながら王家からは断れたのだが
当然のことながら王家は治癒魔法を交渉の切り札とした
国内の貴族しかり
国外の外交しかり
そんな慢心が悪かったのか、使い過ぎたのか聖女の力は年々衰えていった
王には「一度休ませた方が良い」と進言はした
だが王は聞かなかった
まあ休ませたからと言って良くなる保証はないのだ
逆にできるだけやらせた方が得になる場合もある
そこは鶴の一声で決まった
まあ治療を望む貴族の声が多かったからね
しかし最近では聖女の力の衰えは目に見える程だった
聖女自体もきちんと食べて休んでいるのになぜだか判らないと言っていた
だから取り込むために王子の婚約者にしていたがもはやその意味がなくなっていた
それゆえ王は王子に婚約破棄をさせた訳だ
まあついでに国外追放まで言いだしたのは王子の独断だろう
使えなくても念のため取り囲んでおくくらいの知恵は王だってする
それが悪かったのか大広間にいた貴族達が急に倒れ出した
もちろん私も、だ
ああこの冷たくて固い床の感触は久しぶりだ
・・・しかし一体どうなったんだ?
まさか女神さまの使いの聖女を貶めたから天罰が下ったのか?
冷たくて固い床の感触を感じながら意識が段々薄れていくのを自覚した