40 閑話 とある町の領主様と側近の話
「旅の薬師はどうやら聖女様だったようです」
側近からの報告を受けて領主は頭を抱えた
せっかく娘を治療できる人材を見つけたと思ったら知らず知らずのうちに逃がしていたのだから当然である
事の起こりは街に知らない薬師が滞在しているとの知らせだった
領主の跡取り娘は身体が弱く、寒くなれば風邪を拗らせ、熱くなると体調を崩していた
小さい時から四方八方手を尽くしたのだが一向に改善の兆しが見えなかった
領主専属の薬師も最善を尽くしてくれていた
他の薬師を招くことに嫌な顔をしないどころか率先して手助けしていた
皆が全力で領主の娘を支えていたのだがその甲斐はなく一向に良くなる気配はなかった
この前も旅の薬師が街にいると聞きつけて呼び出した
もう何度目になるか判らない旅の薬師の召喚である
当然?のことながらいままでと同様の結果となった
しかし招いた薬師はちょっと変だった
平民なのに領主に怯えることもない
それどこか平然としていた
気になって側近に調べるように言っておいた
その結果が聖女であった
王国から国外追放されたのだから王国の貴族である領主は敵であろう
当然のことながらその娘の治療なんてサラサラする気がない
そういうことであった
せっかく千載一遇のチャンスを逃した領主は肩を落とすしかなかった




