第98話 本性って傲慢な時に出るよね
「ケンタ・イイヅカねえ……」
「あら? お知り合いなのですか?」
ドルトランドの話しを聞いた二人は一旦拠点へと戻っていた。 "殺る" と決めたものの情報が不足しており、真正面から突っ込んでいくような馬鹿ではない。
「同じ世界線から来たかはわからないが、名前は俺がいた世界ではありふれた名前だな」
「こちらに引き入れるという選択肢は……?」
「ないな」
「では……冒険はしばらくお預けなのですね……」
「すぐに片付けるから拠点で大人しくしておいてくれ。何だったらカジノで遊んでてもいいぞ?」
「うふふっ。私が破産したらどうなさいますか?」
聖女がギャンブルに狂う姿。それはそれで面白いとクロは思った。そして、身内がカジノに嵌り破産するという可能性はゼロではない。
「奴隷落ちだな」
「まあ怖い!」
言葉に嘘がない事はエリーナにはわかってしまう。寄り添い支えている自分にすら牙を剥く冷淡さに対し、恐怖より快感を覚えてしまっている。
「若、お早い戻りですな?」
「……ボン爺よ、そう苛めてくれるな」
しばらくはこの弄りをされるだろうとクロは覚悟していたが、中々に恥ずかしい。
「剣聖ゲイルの件ですな?」
「わかっているなら話しは早い、あいつを治療した奴の情報を集めろ」
「殺すので?」
「気に入らないから殺すというのは傲慢か?」
「ふふっ……まさか? 我々は聖人なのではない。気に入らなければ殺す! けっこう!けっこう!」
ボン爺は高らかに笑う。悪党とは理不尽であり傲慢でなければならない、己の欲求のまま生きることが悪役としての王道なのだとクロは拗らせている。
「なあボン爺? 今すぐにでもわかる情報はあるか?」
「うむ、ケンタ・イイヅカの見た目は短髪の黒髪に黒目、人当たりが良く礼儀正しい。定期的に商業ギルドにポーションを納品しとるらしいが、その効能が通常より高く納品する量も桁違いとのこと」
(ヒーラーという情報だったが……回復系魔法じゃなくて精製スキルっぽいな)
「ケイタ・イイヅカの情報をメインに関わりのある者全て調べ上げろ」
「御意に」
クロの号令と共にボン爺の姿が目の前から消えた。
(転生者じゃなく、召喚者の可能性が大きいな)
【正解! さすがクロッチだねぇ】
「あれ? デニス様??」
【やあ、エリーナちゃん!】
「今日は顕現なさらないのですか??」
【あれは大きな力が必要とするからねぇ。使いすぎると色々とまずいんだよね】
「じゃあ出てくんな糞神! これもある意味顕現だろ」
【君はいつも辛辣だねぇ……僕は神だよ? もう少し敬ってくれていいんだよ? これは神託! ありがた~い神様通信だよ】
「その神様通信のメルマガを配信停止にしたいんだが?」
【んんん? 良いのかな? 超重要神託だよ?】
神様通信侮るべからずといったところか。
「ふんっ! んで? やっぱり召喚者で合ってんだな? というかお前が関わってるとか言うなよ?」
【ん~残念ながら僕とは違う神というか女神?が呼んじゃったっぽいんだよねぇ……二人】
「ちょっとまて! もう一人いるのか!?」
【僕さぁ~あの女神嫌いなんだよね! なんか善人ぶっちゃってさ! だからさ……さっさと殺せ】
人では到底贖うことができない殺気の重圧が部屋を覆い、生きている事が奇跡だと認識させられる。特別扱いされているエリーナでさえ苦しそうに顔を歪めてしまうほどだ。内面からあふれ出したこの殺気が本性だとするのなら、今はまだ敵に回してはいけないと改めて実感した。
「くっ……お前に言われなくても殺るっての!」
【これでも抑えているんだよ? でもさぁ本当に君は面白いよねぇ、この神気をあてられてもまだそんな口きけるんだから】
「神気だ? 殺気の間違いだろ!!」
神に対する冒涜はお気に入りの人間という事で大目にみてもらっているようだ。
【あ~そろそろ時間がなくなっちゃうから端的に言うねぇ? 召喚者は二人、ポーション精製のスキルと鑑定スキル持ちの飯塚健太くんと、その幼馴染の女の子で緑川桜子ちゃん。桜子ちゃんは浄化というスキルをもっているよ】
「ポーション精製と鑑定、それに……浄化持ちの女か……」
【ね!? むかつくでしょあのくそ女神!! 対抗策として色々なスキル付与したいんだけど、君はちょっと存在がイレギュラーすぎてねぇ……難しいんだよ】
「チート能力におぼれて調子にのっている奴を努力で手に入れた力で鏖殺する方が楽しいに決まってんだろ」
前世の人格の真島三太は戦闘狂だった。ただただ強者と戦いたいという純粋な思いと。徒党を組んで我が物顔でフィールドを独占する奴らを鏖殺。そして響く怨嗟の声が言葉にできない欲を満たしてくれた。
今世にもその影響は強く残っており、仮想世界ではなくリアルで繰り広げられる殺し合いに喜びを感じないわけがない。
【あはははっ! それは重畳】
デニスは満足気に笑い、去っていった。
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