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第97話 空気嫁ください

 意気揚々と格好つけた感じで部屋を出て冒険者ギルドに向かったにも関わらず、現在クロが居る部屋は冒険者ギルドの一室ではなく、目の前には皮膚が緑色のゴブリンの様な見た目をした男が座っていた。


「なあドルトランド?」


「はい、なんでしょうか?」


「何か良い感じで部屋を出たのにすぐに呼び止めるってさ……少しは空気を読め」


 ドアを閉め、いざ冒険へという感じで歩き出した後を申し訳なさそうな顔をしたドルトランドが小走りで追いかけてきた。そのまま奴隷区画に在るドルトランドの拠点へとやって来ていた。


「それは申し訳ございませんでした」


 見た目はゴブリンだが、本人曰く人間なのだと言い張るその顔は丁寧な口調に反してちょっと怖く、微塵も申し訳ない感じが伝わってこない。


「それで? 俺に恥をかかしてでも呼び止めないといけなかった理由はなんだ?」


「……私が扱っている奴隷には四肢のいずれかが欠損した使いものにならない奴隷も居る事はご存じでしょう?」


「ああ、あのモルモット達か」


 四肢のいずれかが欠損した奴隷も扱っている理由は、出所不明の怪しい魔道具を使用させたり、新薬の投与実験など非人道的な扱いをしたい顧客にとっては安価で手に入るこれらの奴隷を重宝している。もはや人扱いはされず、通称モルモットと呼ばれ禁止している国も多い。


「ええ、実はその中に元勇者パーティーの男が居まして」


「……ん? あっ! あれか? 剣聖とか呼ばれていたなんだっけ……ゲロみたいな名前の」


「惜しいですな、ゲイルという名前の男です」


「でもあいつって確か……」


「そうなんです、舌を抜かれ四肢を切断した後に死ぬまで放置してたらしいのですが……」


「……まさか死ぬ前に攫われたと?」


「いえいえ! そうではありません。さすがは勇者パーティーの一員と申しますか……自己治癒力が異常で、さすがに欠損こそ治りはしませんでしたが止血には成功していたようで、放置しろという命令だった為に殺すこともできず持て余した裏ギルドの職員から相談されましてね? それだけの治癒力をもっているなら実験体に最適だと思いモルモット入りさせて売りに出していたのです」


「あのバカ勇者の仲間だけに規格外な奴だ。まあ殺せとは命令してなかったしな、生きながらえたのも運が良いのかわからないが……四肢が無くては何もできないし、好きにしていいぞ?」


「それが問題が起きまして……」


「どういう事だ?」


 ドルトランドの話しによると最近、貴族風の少年がモルモットを中心に奴隷を買い漁り欠損した部位を治癒し、パーティーメンバーとして共に活動しているらしく、その勢いはSランクに届きそうとの事。


「まさか、そいつが買い取ったのが……」


「はい……ゲイルです」


「いくらで売れた?」


「は?」


「だからいくらで売れたんだ?」


「モルモットとしては破格の金400枚でございます」


 モルモットの相場は金2枚程度で、金400枚というのはエクストラスキル持ちの有用な奴隷ですら稀の設定だった。


「元々売る気はなく、組織で有用に活用しようと思ってましたので……吹っ掛けた金額だったのですが即金で支払われたので止むを得ず……まさか四肢を治癒しているとは思いもよらず……その……そんな魔法聞いたことなく……四肢を復活させるなんてあの伝説の薬であるエリクサーくらいしか……」


(エリクサーって伝説なんだ……なんかいっぱい使った記憶あるのだが……)


「それを知ったのはいつだ?」


「つい先日でございます」


「名が売れて表に出てきたから気づいたって感じか」


「不徳の致すところでございます……」


「まあいいさ、大儲けだなドルトランド?」


「不快に思わないのですか?」


「なぜ? 産廃だった元勇者パーティーのメンバーが高値で売れたんだぞ? 喜べよ」


「強大な治癒魔法を使用するヒーラーに、元勇者パーティーの剣聖、神速という二つ名を持つ獣人の女に鉄壁のタンク職のドラゴニュートと戦闘もできるメイドに不思議な力を持つ謎の女という変わったパーティなのですが……どうやら皇族の覚えも良く、権力と力を併せ持つ存在になりつつありそうなのです」


(あ~やりにくいタイプの成り上がり系チートキャラだな……)


 このタイプは最初敵対こそするが、後に裏の組織ともなぜか円滑に事を進め協力関係を結んだりする。放っておくと建国すらしかねない危険な相手だ。


「因みにだが……そいつ珍しい料理を流行らせたり、不思議な魔道具を作ってたりしないか?」


「ご、ご存じだったのですか!?」


(確定だ……現代知識でチートする転生者に違いない)


「いや、直接はしらん。しかし……不快な存在ではあるな」


 自分自身が転生者であるクロにとっては同郷の存在かもしれないという喜びより、善行をして成りあがる存在そのものが嫌いだった。


「そいつの名前は?」


「ケンタ・イイヅカ。パーティー名は……栄光の翼でございます」


「そうか…」


「いかがなさいますか?」


「殺す」


 帝国を出る前にやることができてしまった。

作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品はカクヨムでも掲載しております。

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