第83話 生と死の分かれ目
「では、こちらに……」
ボン爺の案内で部屋に入ると、無表情で座る勇者パーティーだったゲイルと怯えた表情でこちらを伺うアイリが拘束具をされたまま座っていた。
「女の方はいいのだが……男の方は少々うるさいので舌を抜いておる」
「そうか(えっぐ!! 舌を抜くって何!?)」
ゲイルは舌が抜かれているため何を言っているかわからないがその表情から恨み節を言っている事がわかる。
「女の方は助かりたいという思いが強いのか素直に聞かれた事に答えてくれておるよ」
「じゃあこっちの男はもういらないな?」
「そうですな」
ゲイルの顔が強張り必死に何かを訴えてくる。しかし、何を言っているのかがわからないため無視をする。
「四肢を切り落としてしばらく延命させろ」
「すぐに殺さなくてよろしいので?」
「絶望を刻み込み無力を痛感させ、自分達が何を相手にしていたのか理解させてやらないとな」
「簡単に死ねると思うなよと?」
「まあそんなところだ」
ゲイルの目から涙が流れ、拘束されているにも関わらず懇願するように地べたに這いつくばると、クロは顔を蹴り上げ踏みつける。
「いつまでも勇者パーティー気取りでイキって
たんだろ? そんなんだから寿命を短くするんだよ」
クロはゲイルの顔を踏みつけながら魔法袋からボール大の塊を取り出すと顔の横に置いた。取り出したのは勇者イリアの首だった。
ゲイルは声にならない叫びをあげ、アイリは恐怖からか失禁してまった。
「直前まで見てただろ? お前らの勇者は死んだよ。もしかしてお前がイキってたのは勇者が助けにきてらくれるかもと期待していたからか?」
クロの問いにゲイル目が希望から絶望へと変換していく。彼の中で勇者イリアは破天荒で本能のまま行動する異端児という認識だった。そんな人物に付き従いパーティーを組んでいたのは彼女が勇者であり、剣聖と呼ばれた彼であっても実力差は歴然で、その絶対的な力は憧れの対象であったからだ。
「おいおい、もっと反抗しろよ? お前の仲間を殺した男が目の前にいるんだ。一矢報いる気概はないのか?」
ゲイルの心は完全に折れていた。最後の希望が目の前で首だけになっており、雑に扱われる。その光景が自分が辿る未来の姿なのだと悟ってしまった。
「つまらん……ボン爺、こいつを処理しといてくれ」
「ご自身でやらないので?」
「興が削がれた」
「では……」
ボン爺が片手を上げるとどこからともなく人が現れゲイルをどこかへ連れていった。
「この女からは何を聞き出した?」
「後ろ盾になっている貴族と、懇意にしている商人や領民などといったところかのう。後ろ盾になっている貴族は例のあの件の黒幕みたいだったから深く聞こうと思っていたのだが……大した情報はなかったのう」
「世間は狭いな」
「どうやらあの貴族の表面しか見えてなくて、いかに素晴らしいか熱弁しておったよ。まあ我々が調べ上げだ欠陥を説明したら急に大人しくなったから馬鹿ではないようだわい」
「じやあもう用済みだな」
アイリはその言葉に大きく動揺し首を横に振り必死にアピールをする。
女一人程度いつでも殺せる。しかし、まがりなりにも勇者パーティーだった女だ。後顧の憂いを断つべく処分してしまう方が正解だろう。
「……殺さないで……お願い」
クロも鬼ではないが処分以外にいい方法が思いつかない。
「なあボン爺、この女の使い道で良い案はあるか?」
「奴隷として売り払うのはどうだろうか?」
「おお! それは良いな! よしっ女! 首の皮一枚で死ぬ事を免れたぞ!? 良かったな?」
「ひっ! ど、奴隷にだけは! お願いします! お願いします! なんでもしますから!」
「それはお前を買ったご主人様にでも言うんな」
アイリの必死の訴えも叶わず奴隷落ちが決定した。
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