第81話 生涯現役
「若、こちらです」
デニスに今回の報酬として無属性魔法が使えるようになるスキルの種子を与えられたが、すぐにスキルが開花するわけではなく修行が必要だとわかり闇雲に修行しても意味がないという結論に至った。そんな事を考えながら裏ギルドまでやってきたクロは拘束したゲイルとアイリの様子を見に来ていた。
「二人の様子は?」
「男の方は威嚇する元気があるようですが、女の方は大人しくしているようです。今はギルド長が自分達の立場がどうなっているのかを説明している所なのですが……」
「何かあったのか?」
「いや……あの……」
案内をしてくれている男の顔が言いにくそうに顔を歪める。
「良いから言え」
「はい……ゼクトさんがリュウシンさんの拘束を解いて二人して地下牢に……」
裏ギルドに所属している者は懺蛇の組織に属しているものの所属は裏ギルドで、懺蛇の幹部であるゼクトの命令を断る事が出来なかったのだろう。苦笑いをするしかなかった。
「まあなんだ……その……すまん」
「い、いえ! そんな! 若は何も!」
「ボン爺がいるなら余計な事はしないだろうからお前らは気にするな」
「あ、ありがとうございます!」
地下に降りるとゼクトとリュウシンの怒りの声が漏れ聞こえてくる。
「ボンさんそこをどいてくれよぉ」
「師匠! そいつらを許すわけにはいかないんだ! わかってくれ!」
二人は拘束した勇者パーティーの二人に何かしらの制裁を加えるつもりでやってきたが、ボン爺によりそれをさせてもらえなかったようだ。
「捕虜の二人に危害を加える許可は下りておらん。若が来る前にここを退室せい!」
「クロは組織の長だが俺達の間に序列はない!」
「……ゼクト殿、それは組織に属する者として言うてはならん事だぞ? お主らにどんな繋がりがあり約束がされているのかは知らんが、組織として公私混同は無用な混乱を招く。儂を含め懺蛇に服従した組織の人間は若に忠誠を誓い決して裏切らないという契りをかわしているがお主ら二人に従っているわけじゃない」
「師匠! どうやってもそこをどいてくれないですか?」
「リュウシン、組織としての序列は儂よりお主の方が上だが儂は若にこの二人を任された。若の命令を優先するのは当たり前の事であると理解せい!」
「リュウシン〜? たぶん何を言っても無駄のようだし無理矢理突破しちゃおうよぉ」
「ゼクト……」
「こいつらは僕達の敵だよぉ? 引くわけにはいかないよねぇ?」
「師匠……こうなったら力づくで突破させてもらいますれ!」
リュウシンとゼクトにも譲れないモノがあり、ここで引くわけにはいかなったのだ。
「小童共! 儂はこれでも最近までスラム街を総べていたのだ。舐めるなよ!」
ボン爺は殺気を込めた威圧を放つと二人に向け忠告する。
「良いのか? ぼーっと突っ立っているが儂の攻撃範囲内だぞ?」
二人は驚いて後ろに下がり戦闘体勢をとろうとするが、時すでに遅し。首元にはナイフが添えられていた。
「こんなおいぼれの攻撃に反応すら出来ない癖に大口を立たぬことだ」
現役を退いたとはいえ、鍛錬を欠かさない。単純な戦闘力で言えばクロに継ぐNo.2である。
斥候のゼクトとボン爺を師とするリュウシンではどうあがいても勝つ事はできない高い壁であった。
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