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第80話 スキルの種子

「ボン爺、こいつの処理を任してもいいか?」


「依頼達成の報告をしても?」


 勇者パーティーは暗殺依頼が入っており、依頼主に達成の報告をする義務が必要となる。今回の依頼料は勇者という事もあり破格で、庶民ならば一生遊んで暮らせるほどのお金を手にすることができる。


「いや、暫く黙っておけ。こんなやつでも世界の希望と言われた勇者だから頃合いを見てからの方が良いだろう」


「では、この遺体は魔法で保護しておきましょう」


「そうしてくれ」


 クロは刎ねた首をボン爺に投げ捨てまだ微かに息をしているコンドイサに歩よる。


「おーい? まだ生きてるか?」


「うぅぅ……某の部下達は……無事なのだろうか?」


 新撰一家はイリアにより斬り伏せられ、誰一人として動いている者はいない。ふざけた名前の連中だったが死にゆく局長に事実を教えるべきなのか、それとも憂なく逝かせてやるかクロは悩む。


「お前の仲間の事なんぞ知らん」


「なっ……」


「だがお前の仲間は安否を心配しなくてはならないほど弱いのか?」


「ふっ……そうであった。あいつらは簡単に死ぬような悪童ではないな……」


「知らんけどな」


「ふふっ……一つ尋ねても良いだろうか?」


「なんだ?」


「某は死ぬ……のだろうか?」


「死ぬ」


「そうか……ぐぅぅぅ!」


 コンドイサは倒れた身体を残った力を使い起き上がり正座をする。


「介錯を……」


 コンドイサはそう言うと脇差を使い切腹の準備をする。

 命が尽きかけている人間とは思えないほどの美しい所作で凛とした表情で、顔色一つ変えず腹を十文字に掻っ捌いた。


「お見事!」


 落とした首を丁寧に拾い上げ、見開いた瞼をそっと閉じてあげると先に逝った新撰一家の連中と共に教会にある墓場で丁重に埋葬する事にした。


【やあやあ! お疲れ様! 期待以上の働きだったね? まさか殺すとは思わなかったけどね〜】


(デニス! てめぇはいつかぶっ飛ばしてやるからな!)


【何をそんなに怒ってるの? 罪悪感でも生まれたかい?】


(罪悪感? そんなものは無い! ないが……個人的にお前にはムカついてるけどな!)


【そんなに怒らないでよ〜。君は僕の使徒だよ? もっと敬ってくれてもいいんじゃないかなあ】


(こっちはお前の個人的な趣味を守るために死ぬ思いしてんだよ!)


【それに関してはぐうの音も出ないね! あははははっ!】


(なあ? 勇者を殺してしまったけど問題はないのか?)


【魔王と勇者はセットみたいに思われてるけど、過去に魔王が勇者を倒した事もあるし問題ないよ】


(勇者負けてんのかい!)


【それに今の魔王は戦争する気が皆無だし、あと三百年は大丈夫だろうね】


(勇者って一体……なんかあいつ可哀想になってきたな)


【あの勇者は失敗作だったね〜。無自覚系チートの末路って感じだよ】


(まあこれで後顧の憂いはなくなったし、これで俺もやりたい事に集中できるな)


【敵討ちかい? そんな前時代的な考えやめて楽しく生きようよ】


(邪魔者を排除するだけだ。俺は早くカジノを開いて悠々自適な生活を送りたいんだよ!)


 上に昇っていく程やらなければならない事が増えていく。物事が順調に進んでいる時に限って厄介事が舞い込んでくる始末で、気づけば神の使徒にされていた。使徒という言葉は聞こえは良いが特にチート能力があるわけでもなく、名ばかりの名誉職のようにしか思えない。


【君は苦労人という称号が似合いそうだね】


(冗談でもやめてくれ……神が言うと笑えねぇ……)


【それじゃあ可愛い使徒君に助言でもしてあげよう】


(嫌な予感しかしないのだが?)


【まあ聞きなよ? 魔法使いたいよね?】


(おっ!)


 クロは魔法が使えない。いや、正確には魔法による攻撃や回復が使えないが魔力量でいえば常人を遥かに超えて持っている。魔闘術は魔法に近い性質で、自分にバフをかけているようなモノなのだから魔法は使えていると解釈してもよいのだろう。でばなぜ攻撃魔法や回復魔法が使えないのか?それは攻撃魔法や回復魔法の素養がなくスキルを持っていないからだった。


【君の属性は闇と火なんだけど、分かっていると思うけど素養がなくて魔法が使えない。補助するスキルすらないから初級の魔法すら扱えない】


(無駄に魔力量だけは多いから宝の持ち腐れ感は否めない)


【魔法を後天的に使えるようにするのは無理なんだよね。だから無属性魔法で魔法を再現する方法をとればそれっぽいモノは放てるようになるよ】


(無属性魔法か……よくわからん。それに無属性とはいえ魔法だよな? 無理なんじゃないか?)


【そこはさ? 神の使徒である君に今回のご褒美として無属性魔法のスキルの種子を君に植え付けるから頑張ってよ】


(いやいや、それなら闇と火の魔法が使えるように素養を付けてくれたらいいんじゃないか?)


【それじゃあ面白くないじゃないか〜】


(人の人生で遊んでんじゃねえ!)


【ではでは、しっかりと修練をつむんだよ〜】


 デニスは手を振りながら天へと昇っていった。


「無属性魔法か……詳しいやつに聞くしかないか」


 軽い感じで付けられた無属性魔法スキルの種子は今後の戦いに於いて化け物級にやばいチート能力になると誰も想像していなかった。

作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品はカクヨムでも掲載しております。

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