第75話 ハードラックとダンスっちまった
「貴様は絶対に許さない!」
「お前が許しを乞う立場なんだよ」
一瞬のうちに移動したクロの蹴りがイリアに命中し膝つく。
「身体が重い……」
「さあ何でだろうな?」
「ハァァァァァ!!」
重い身体を気合いで動かしクロに切り掛かるが、精彩を欠いた動きは簡単に避けられてしまう。
「何で!?」
「イリア! どうしたの!?」
「そんな奴いつものようにやってしまえよ!」
いつもの力が発揮できないイリアは困惑し、繰り出す剣技も大振りになってしまう。悉くを軽く躱され、その度に攻撃を受け再び膝をつく。
「いつもの力が出ない……」
そんなイリアを嘲笑うかのようにクロは余裕の態度で近づき顔面を踏みつける。
「勇者とまともに戦うほど自分の力を過信してないんだよ」
「くっ! 何をした!」
「言うとでも? 何もかも自分中心で世界が回っていると思ってるからこういう結果になるんだよ」
「「イリア!」」
劣勢のイリアにゲイルとアイリは駆け寄ろうとしたがクロの手下に阻まれる。
「あんたら、少し大人しくしといてくれや」
「何だと!」
「俺達もはらわたが煮えくり返る思いでここにいるんだわ。今あんたらが無事でいるのはボスの命令で直接手を出す事を止められてるからなんだよ!」
「ひぃ! ゲイル……」
「その忠告を無視したら?」
「たのむけぇ……これ以上俺達を刺激せんでくれ……」
二人の周囲を殺気に満ちた者達が取り囲む。クロの命令で手を出せないフラストレーションは最高潮に高まり、きっかけがあればいつでも爆発してしまう程危うい状態だった。
ボゴッ! ボゴッ! ガンッ!
イリアは抵抗できず顔面を何度も踏みつけられ怒りの顔を滲ませるが、そんなのもお構いなしにクロは蹴り続ける。
「絶対的な正義なんてない、生きている環境によってはお前の行いが悪にもなると理解しろ」
「ぐっ!」
「た、頼む! そんな奴でも勇者なんだ! 世界の希望なんだ! だから……!」
カルトは腕の痛みも忘れ二人の間に割って入り土下座をする。
「お前邪魔だな……腕だけじゃ物足りないないなら首だけにでもなっておくか?」
「やめて願い! カルトをこれ以上……」
クロがカルトにトドメを刺そうとした時、周囲に並んでいた手下の一部がかき分けられ複数な男達がなだれ込んできた。
「双方剣を納めよ!」
割り込んできたのは仁義と書いたマントを着た十二人の男達だった
「往来でこれ以上騒ぎを起こすなら我々が相手をするぞ!」
スラム街で唯一の中立組織で義理と人情で活動する新撰一家だった。
「新撰一家局長コンドイサ!」
「副長ヒジカッタトシダゾ!」
「一番隊隊長オッキシタソーセージ!」
「二番隊隊長ナマクラシンピン!」
「三番隊隊長サイトウイチ!」
「四番隊隊長マツバラチュウ!」
「五番隊隊長タケダカンウッサイ!」
「六番隊隊長イノウエゲンサン!」
「七番隊隊長タニサン!」
「八番隊隊長トードヘー!」
「九番隊隊長スズキミッキー」
「十番隊隊長ハラダ!」
クロは思わず苦笑いをしてしまう。
このスラム街で関わりたくないとすら思っていた集団が組織全員で仲裁に入ってきた。
「ちっ! どうやらハードラックとダンスっちまったようだな」
クロにとっては不運であり、勇者パーティーにとっては幸運の仲裁者の登場だった。
「懺蛇のクロさんに……何をやめろって? あ?」
クロにも引くに引けない理由はある。今ここで勇者というバカに世の中の理を教える事のできるこの機会を失うわけにはいかなかった。
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