第74話 ケジメ
「ふざけんじゃないわよ! あなたに何の権利があるっていうの!?」
クロはやれやれといった感じで耳をほじる。
「ちょっと聞いてるの!?」
「うるさい勇者だな。そんな大声出さなくても聞こえてる」
「なっ!?」
イリアはわなわなと震えながら腰に差した剣を握るが、抜く寸前にカルトに止められる。
「カルト! 邪魔しないで!」
「イリアちょっと黙って! ゲイル! アイリ! 二人でイリアを抑えてて!」
「お、おう」 「うん」
「ちょっと二人とも離して!」
イリアはギャアギャアと騒ぐが二人に抑えられ下がっていった。
「あの……懺蛇のクロさん、まずはお詫びをさせて頂きます」
「お詫びねぇ……」
「この度はうちのパーティーメンバーがご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。落ち度は完全に勘違いしたこちらにあります」
「ちょっと! カルト何言ってるのよ!」
「うるさい! イリアは黙ってて!」
カルトの本気の激怒はいつぶりだろうか。普段は小言をぶつけられる事はあっても、最終的には自分の意見に同意してくれて後始末をしてくれる。そんな安心感もあって自由に自分らしく振る舞ってきた。しかし、今目の前にいるのは鬼の形相をした幼馴染であった。
「ご、ごめんなさい」
イリアは苦笑いをしながら抜きかけた剣を鞘に納めた。
「拠点を破壊してしまった弁償もできる限りさせていただくつもりです」
「君はまともな思考をしているんだな。まあその謝罪はわかったがケジメはつけてもらわないとな」
「ケジメ……ですか? 何をしたら良いんですか? 俺の腕一つで良いなら今すぐにでも切り落としてもらっても構わない」
「カルト何を言ってるの!?」
「そうだ馬鹿な事はやめろ!」
「いやぁぁぁ!」
カルトは右腕を前に出しクロの目をじっと見る。
「茶番は嫌いなんでね、遠慮なくいただくよ」
ザンッ!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
クロは差し出された腕を一切の躊躇もせず切り落とした。
「カルト! 貴様ァァァァァァァァ!!」
「動くなイリア!!」
「……許さない……絶対に許さない…!!」
ドンッ!!
「ぐっ!」
今にも襲いかかりそうなイリアが吹き飛び、巻き込まれるようにゲイルとアイリも一緒に吹き飛ぶ。
「さすが勇者といったところか? 硬いな」
三人を吹き飛ばしたのはクロで、魔闘術を使い一瞬で三人の前に移動し渾身の蹴りを放っていた。
「なあ勇者イリア、仲間の覚悟を台無しにするのか?」
「腕を切り落とすほどの事なの!? この人でなし! 絶対に許さない!」
クロは大きなため息を吐きカルトの方へ振り返る。
「今回の件は君のその覚悟に免じて手打ちにしてやるよ」
「……すまない」
「でも君も報われないよな?」
「……どう言う意味ですか?」
「見てみなよ? 腕を犠牲にしたのに肝心の勇者様はやる気満々だぞ?」
クロは苦笑いをし、カルトは剣を抜いて構えているイリアを見て絶望感に襲われる。
「イリア何をしているんだ……! ぐっ……」
「カルト! ちょっと待っててね! こいつ倒して聖女様にサクッと腕を治してもらおう!」
「やめろイリア!! 何でっ!?」
「大丈夫! 大丈夫! こんなやつ私がちょちょいっとやっちゃうからね!」
完全に戦闘体勢に入ったイリアが剣を振り回しながら歩いてくる。
「何も伝わらないって一番悲しいよな……君、何でこんな奴と一緒にいんの?」
「クゥゥゥゥ……」
カルトは悲しさと悔しさで涙が止まらない。
「それと、何で聖女がお前らの味方になってくれると勘違いしてんだ?」
「黙れ悪党! 聖女が勇者と一緒に冒険するのは当たり前でしょ!」
「だからなんで当たり前なんだよ? お前らが会いたがってる聖女は戦闘が嫌いなんだぞ?」
「そんなの聖女としての使命を受けたんだから嫌いでも一緒に魔王を倒さないといけないの!」
「それはお前の見解だろ? そもそも聖女になった時に魔王討伐っていう使命は受けない」
「はぁ!? なんでそんな事あんたが知ってるのよ!」
「そんなの俺が聖女エリーナの恋人だからに決まってんだろ」
イリアの顔が強張り剣先を向け覇気を放つ。
「そっかそっか……聖女ちゃんも洗脳されてるんだね……悪は滅ぼさないと……」
「カルトって言ったっけ? 残念だが君の腕は無駄に切り落とされた事になりそうだ」
「う、嘘だ……ろ?」
勇者イリアとの戦闘が始まろうとしていた。
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