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第70話 そうじゃない

「ねぇ〜カルトぉ〜ちゃんと探してる?」


「探してるよ! 全くこうなったのもイリアのせいなんだからな!」


 勇者イリアとカルトは崩壊した懺蛇の拠点を捜索中であった。イリア達の目的はホルンの借用書の奪還で、拠点に到着したのは良かったが拠点内に居た構成員は誰一人として借用書の場所を吐くことはなく、どれだけ仲間が倒れても歯向かってきた。


「しょうがないじゃない! あいつらいくら倒してもゴキブリのように湧いてくるし! キリが無いから一気にやっちゃった方が早いでしょ?」


「だからって建物を壊したら借用書を探すのも大変になるだろうが!」


「もういいでしよ〜? というか、この状態なら借用書もなくなってるんじゃない?」


「まあそうかもしれないけど……」


「それに! 他にもこの悪党から騙されてお金を借りちゃって困ってる人がいるかもでしょ!?」


「ん〜そういう事になるの……か?」


「そうだよ! 証拠隠滅! それなら善は急げよ! アイリに魔法で燃やしてもらおう!」


「まてまてまてまてまてまて! そんな事したらここだけじゃなくてこの辺一帯が火事になって大変な事になるだうが!」


「えぇぇぇ! 大丈夫だってぇ〜」


「それでいつも大変な事になってるだろ!」


 ゴツンっ!


「いったぁ〜い!」


「良いから探すぞ」


 頭にゲンコツをお見舞いされたイリアは不貞腐れながらも瓦礫を再度捜索し借用書を探す。

 しかし、いくら探しても見つからない。そもそも重要者類や価値のある物、金品は全てクロの魔法袋の中に入っており、拠点に置いてあるのは歴史書や伝記、経済学の本など手に入りやすい物や生活雑貨ばかりだ。


「ない! もう嫌! カルト燃やそう! アイリ呼んできて!」


 カルト以外パーティーメンバーは面倒くさがり屋だ。細かい雑務や交渉は全てカルトが行なっており、パーティーに於けるお目付役の様な立場になっていた。唯一冷静な彼は暴走する三人に頭を痛める毎日を過ごし、今回の件も誤解しているだろう三人を嗜めたが猪突猛進なイリアを止める事が出来ず、最悪の事態にならないように後を追った。しかし、不安は的中し現在に至る。


「だから! それはだめだって!」


「何よ! 幼馴染が困ってるんだよ? それを解消するのは小さい頃からカルトの役目でしょ!」


 イリアとカルトは同じ山奥の小さな村から一緒に旅に出て来た。純粋無垢なイリアの事を心配した村長やイリアの両親から同伴するよう頼まれた。カルトはいつもイリアの尻拭いをし、面倒を見てきた経緯があるが、正直なところイリアが勇者として旅立つと決まった時にやっと解放されると喜んだ。だが、そんなカルトの心労を知らない村長達にはカルトが甲斐甲斐しく面倒を見ていると勘違いしており、イリアのお守りが継続すると確定した時に絶望し、逃げる事が出来ないと諦めた。


「役目ってなんだよ! いつも俺の忠告を聞かないで大変な事になるのは全部イリアのせいだろ!」


 勇者に対してここまで強気に出れるのはカルトの特権である。なんだかんだ言ってイリアにとってカルトはかけがえの無い存在で、これまでの冒険で彼が居なかったら多くの困難があっただろうとわかっている。


「ぶぅぅぅぅぅぅ!」


「そんな顔をしてもダメだ!」


 二人がギャアギャアと口喧嘩をしていると、ホルンの食堂で待機していたアイリとゲイルが青い顔をしてやってきた。


「アイリ! ちょうど良かった!」


「イリア……あ、あの……ね?」


「ここ燃やして! ここに借用書があると思うんだけど、ちょっと手違いで建物が崩壊しちゃってさ〜。もう燃やしちゃえば全部なかった事になると思うんだよね〜? だから一気にやっちゃって!」


「イリア聞け! その建物と借用書なんだが……」


 ゲイルは食堂で起こった一部始終を二人に説明した。カルトは頭を抱え、イリアはよくわかってない顔で二人を凝視する。


「イリア?」


「二人は騙されたんだね! 詐欺師は口が上手だし、アイリもゲイルも純粋だから騙されやすいんだよ」


「いや、イリア……違う、そうじゃない! よく聞いてくれ!」


 イリアは黙って二人の話を聞くがずっと怒りを抑えているような雰囲気だった。


「そう……二人は洗脳されちゃったんだね……許せない! こうなったら私がそいつを退治してあげる!」


「待てイリア!」


 人の話を聞かないイリアは怒りに身を任せ食堂は走って行った。

作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品はカクヨムでも掲載しております。

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