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第61話 仲間に?

「このまま全部話して満足して昇天してくれないかな」


(ちょっと! 聞こえてる! もはや独り言じゃない!)


「いちいち騒ぐな悪霊(仮)」


(キィィィィィ!!)


「クロ様……お静かに!」


「ふんっ」


 リナ(エリーナ)に怒られたクロは肩肘をつき明後日の方向を向くと、ヘレンはやれやれといったジェスチャーをし続きを話し出す。


(力を持ったバレッタ様は国の有力者に目をつけられ始めたの。もちろん利用するつもりでね)


 ヘレンの声に怒気が混じり、身体が仄暗い感情のオーラで包まれる。


(バレッタ様はそんな有力者には屈しなかった。でも……それがいけなかった)


「うまく立ち回らずに全て拒否したんだろ」


(そうなんだよ。別に力を過信したわけじゃないんだけどね? バレッタ様は弱者の為にしかその力をつかわなかったの)


「貴族はプライドの塊だからな。たかが女に侮られたと思われても不思議ではないな」


 貴族とは地位と名誉が全てであり、その為に利用できるものは利用し、邪魔者は排除する。それが貴族にとっては普通である。


(だから私はバレッタ様をそんな悪意から守ろうと思って数えきれないくらい人を殺した。でも相手も馬鹿じゃないから段々と送り込まれる殺し屋も強くなっていってね……私はバレッタ様を庇って生命を散らした。嫌ではなかった。バレッタ様と過ごしていくうちに彼女の強い信念とか矜持に共感しちゃってね。「こんな日々も悪くない」なんて思っちゃった)


「だから死んで幽体になってまで仕えたのですか?」


(私は妖精の中でも上位の存在だったから、肉体を捨て下級精霊としてこの世にとどまったというのが正解かな?)


「じゃあヘレンちゃんは精霊様なんですか?」


(下級だけどね)


「でも、お姿は妖精ですよね?」


(精霊は生命体なんだよ。下級精霊は受肉しないと形を保つことができなくてね、死にたてホヤホヤの自分の身体を使ったってわけ)


「そんなに簡単に受肉できちゃうと、死んだ人の身体に下級精霊が宿ってしまって大変なことになりませんか?」


(受肉には精霊の意志と契約相手が必要になるからそう簡単には無理だよ? それに精霊との契約は精霊側は服従という枷が付くからね)


「要するに、お前は死んで運良く精霊になったから改めてバレッタと契約する事でこの世に顕現できたって事か」


(うん、だから私は霊というより召喚獣に近いんじゃないかな〜)


「じゃあ魔物か、魔物なら討伐しても問題ないな」


(精霊! 下級でも精霊なの! 魔物と一緒にしないで!)


「それで、なぜ主人についていかずここにとどまっているんですか?」


 自分を召喚獣と例えるなら、召喚主から離れとどまる事に無理がある。


(バレッタ様は皇帝の指示で戦争に行く事になってね。さすがにバレッタ様でも皇帝からの要請は断れないから嫌々ながらも出陣する事になった。当然私もついて行くつもりだったのにバレッタ様から「あなたはこの館を守って、私の帰りを待ってて欲しいの」って言われてね。ここにはバレッタ様の家族もいたし、守るべき対象が沢山いたから一番信頼できる私を置いていきたかったんじゃないかな)


「それはいつのお話しですか?」


(ん〜わかんない。時間の概念が無くなったから意識してなかったよ。アハハハッ!)


 帝国はここ三十年近く大きな戦争を起こしていない。


「お前、何十年も帰らない主人を待ち続けているのか? 馬鹿なのか?」


(う、うるさいっ!)


「ここに居たバレッタの家族はどこに行った?」


(バレッタ様が出陣してから一年くらいは居たけど……私はこの館も守ってと言われたし……ついていかなかったから何処にいるかなんて知らないや)


「はぁ……そのバレッタってやつがどうなって、その一族が何処に行ったかは調べりゃわかるけど」


(本当に! じゃあ!)


「俺にそんな義理はないからな」


(なんで!? ねえお願い! 私はバレッタ様に会いたいの!」


 悲痛な顔を浮かべ懇願するようにクロに掴みかかるが、その手を簡単に払い除けられる。


「俺はこの館を買った依頼人から悪霊を討伐してくれと頼まれただけだ。何でお前の願いを叶えてやる必要がある?」


(えぇぇぇぇ……そこは可愛い精霊ちゃんの願い事を聞いてあげて協力する流れじゃないの!?)


「は? それを調べてどうするんだ? 恐らく死んでるぞ?」


(そんな事わかってるわよ! でも私は……)


 主人の言いつけを守り、健気にも館を守り続ける精霊。そんな話しを聞けば協力してあげたくなる人は多いだろう。リナ(エリーナ)も話を聞きながら涙を流さずにはいられないとばかりにハンカチで涙を拭っている。しかし、クロは違った。この男はそういったお涙頂戴劇場はどうでもよく、興味もない。むしろ嫌悪する人種であった。こういった話を聞いた者のとる行動は大まかに三つに分かれる。


 1.善意から協力し捜索をする


 2.協力するが見返りを要求する


 3.そんなの関係ねぇ!


 今後の流れとしたら1と2の場合は最終的に満足して昇天するか仲間になるといった感じだろう。


「だからなんだ? それがわかってんならさっさと出て行くか成仏しろよ」


(ひどっ! お兄さん日本人だよね!? 心の機微に敏感な日本人だよね!? 察する能力世界一の日本人だよね!?)


「俺はギャルが嫌いだ、そしてJKもな。でもそれはこの際なかった事にしてやらんでもない」


(お、おう……)


「だが、俺とお前の関係は敵であり、お前は討伐対象でしかないし、俺はお人好しではない」


(歪んでる! てめぇの血は何色だぁぁぁ!)


「クロ様……協力をしてあげては……?」


 さすがのリナ(エリーナ)も困惑した顔でクロを見る。しかし、そんな事は何処吹く風と言わんばかりにクロは意に返さない。


「俺の協力を得たいなら益を示せ」


(そうしたら協力してくれるの!?)


「俺を納得させる事ができればの話だがな」


(……あんたと契約する! 私と契約すればあなたにとって大きな力になる! だからっ!)


 ザンッ!


(えぇぇぇ……)


 ヘレンはクロの繰り出した剣戟により霧散した。


「くだらん」


 リナ(エリーナ)は予想外の結末にフリーズしてしまった。

作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品はカクヨムでも掲載しております。

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