第43話 暗殺者
「それで? あんたは誰だ?」
クロは誰もいないはずの部屋の本棚の横に向かって喋りかけた。
「ふっ……気付いていたとはな……なぜわかった」
本棚影から一人の男がスッと姿を現し、短刀を抜きクロに近づく。
「殺気は抑えていたが、他に漏れてるモノがあるんだよ」
「ほう……教えてもらえると有難いんだが?」
「それは乙女の秘密だろ? それで? 裏ギルドの使者さんは何かようかな?」
「使者ねぇ……」
影から現れた男はクロの眉間を狙い突きを放つがかわされる。そのまま刃を横にし薙ぎ払ったがそれもクロにかわされる。
「ぐっ!」
ガシャンっ!!
男は腹に蹴りをくらい後ろに吹き飛ばされた。
クロは男が落とした短刀を手に取り喉元に突きつけた。
「最後に言い残す事は?」
ぷっ!
「ちっ!」
男は口から針を飛ばし、クロはそれを腕に受ける。
「毒針か?」
「大型魔獣すら一瞬で麻痺させる猛毒なのだが……」
「残念、手甲に刺さったが皮膚まで貫通してないから無問題」
内心冷やりとしている。戦闘中に心の動揺を見せる事は死に繋がり、つけいる隙を与えてしまうため平然な顔を崩さない。
「それより、そんな猛毒を口の中に入れてよく平気だな」
それは前世の時から疑問だった。マンガなどでもよくある毒針攻撃は口からというのがセオリーだ。口に含んでいるのにそいつには毒の効果がない。毒に耐性があるとしても、長時間含み続ければ死に至るはず。そう思ってしまうと聞かずにはいられない。
「コツがある」
「教えてくれたりは?」
「ふっ……乙女の秘密だ」
改めて説明する必要もないが、この二人は男だ。いや、相手に限っては心が乙女なのかもそれない。
「そうかよっ!」
クロは魔導術を使い、一瞬で男の背後にまわり腕を極め首筋に短刀の刃を当てる。
「それで、裏ギルドの使者さん? 俺に伝言があったりする?」
「……今夜、闇区画の裏ギルド本部に招待すると……」
「そうか、それでものは相談なんだが?」
「なんだ」
「俺に付く気ない?」
男は一瞬驚いた顔を表情になったが、すぐに平静を取り戻す。
「愚問だな」
「そうか、じゃあ仕方ないか」
クロが首筋を切り裂くと噴水のように血が吹き出し、悶え苦しむ男の心臓をひと突きする。男は前のめりにぴくぴくと痙攣しながら絶命した。
「そこのもう一人隠れてる人」
今度は窓際のカーテンから覆面を被った女が現れる。
「はあ……ここのセキュリティはどうなっているんだよ」
思わずため息が出る。
「プロの殺し屋というのは恐ろしいな」
「………」
女は喋らない。恐らくこの男より強いであろう女は武器も構えずじっとこちらの様子を窺う。
「首領ボンに伝えてくれ」
「…………」
「確かに招待承ったと」
女は少し頷くと、消えるように部屋から出て行った。
クロは死体の後処理が面倒だなと思い倒した男の方を振り向くと、そこに死体はなかった。
「手練すぎるだろ暗殺者……」
裏ギルドに所属している暗殺者の質は高い。それを裏付けるかのように一瞬の隙をついて死体を回収する技量に感嘆のため息が漏れる。
「裏ギルドか……さすが四天王最強の集団だな。ただ早速手の内を見せてきたって事は試されたんだろうな……新参者という立場だから仕方がないが、舐められたもんだな」
クロに仄暗い感情が蠢く。
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