第42話 説教×贋物×接吻
「「「ハァァァァァァァ!?」」」
懴蛇の拠点内にカイン、リュウシン、ゼクトの声が響く。
「いや、だから女帝潰してきた」
「クロお前!! 戦闘しないためにエリーナを連れて行ったんじゃなかったのか!?」
「まあ結果オーライだ」
「何が結果オーライだ!」
「カインの言う通りだぞクロ! 戦闘云々はいい、お前に何かあったらどうするんだと言っているんだ!」
「クロぉ〜今回は擁護出来ないっていうか僕も怒ってるし〜」
「すまん」
クロはソファにふんぞり返り片手をあげ得意げな顔で謝る。
「お前、それ反省してる奴の態度じゃないからな?」
「はぁ〜クロ、今後は必ず誰かを連れて行くって約束してくれ」
「じゃあ、今夜は四天王の会合が予定されてるからカイン一緒に行くか?」
「はっ? 何で行く必要があるんだよ」
「何でって四天王やったんだから、今日から俺が四天王の一人だろ?」
クロは不敵に笑う。
「あ〜それとゼクト、歓楽区画は俺達のものになったからワイノール商会の会長に話しをつけといてくれ」
「ねえクロ? 僕言ったよね? あそこはワイノール商会が絡んでるから慎重にって」
「だからあそこの会長と今後の話し合いをする必要があるだろ? カジノの融資の件もあるしな」
クロはワイノール商会からの融資でカジノを開く予定になっており、ワイノール商会との交渉はゼクトが代理で行っていたが、クロは女帝との商談が終わった後に直接話し合いをするつもりだった。
「寧ろ女帝が絡んでくることがなくなったから利益はそのまま確保できるし、ワイノール商会としても余計なしがらみがなくなるし悪い話しではないだろう」
「クロぉ〜はぁ……今更言ってもしょうがないからぁ言う通りにするけどさぁ〜僕にも立場があるんだからさぁ〜」
「大丈夫だゼクト、お前なら出来る」
「どこからっ! その根拠ぉ〜! たぶん情報は既にまわっているだろうけどねぇ〜」
ワイノール商会は帝都でも大店で帝国貴族御用達の免状も持っていて影響力は計り知れない。その商会を敵に回すという事は、帝都では仕事が出来ない事を意味する。
「それと、リュウシン」
「……なんだ」
「歓楽区画に店を出している代表達をまとめあげここに来るように言ってくれ」
「ここに?」
「あぁ、歓楽区画は懴蛇が仕切る事になるしな、今後のみかじめ料の設定とカジノ建設のための区画整理の説明、それに伴う賠償やらなんやらやる事が多いんだよ」
「それはお前が女帝をやってしまったからだろ!」
「だからそれは謝っただろ? 古い話しを持ち出すな」
「ついさっきの出来事だろうが! なあ?聖女さんよ、あんたが一緒にいてなぜこうなった?」
「そうですね〜? マザーウルティマが弱かったからではないでしょうか」
エリーナはことの成り行きをクロの傍で黙って聞いていた。女帝達との戦闘を止めることが出来なかった反省をしていたわけではなく、聖女とはいえ、スラムに生まれスラムで育ったエリーナにしてみれば弱肉強食は常であり、カイン達がなぜそこまで怒っているのか理解していなかったからだ。
「そういう事を言っているんじゃない」
「はあ……でも手を出してきたのはマザーウルティマですし、それで負けたのだから文句を言われる謂れはないと思いますが……」
リュウシンはこの聖女の思考は一般的な聖女のイメージとはかけ離れていると理解した。クロは冷静さを持ってはいるが、凶暴性は自分達をしのぐ。ここしばらくはその凶暴性は鳴りを潜めいたためそれを失念していた。そんな二人で行かせてしまったのは自分達の落ち度であると改めて思った。
「なあリュウシン、俺は善人じゃない。だから間違うこともある! だからもう気にするな」
「それを開き直りと言うんだ! まあ今回は無事なら帰ってきたからいいが、次からはそういう役割は俺たちに任せてくれ」
「わかったよリュウシン」
「じゃあ、俺は歓楽区画へ行ってくる。ゼクト行くぞ」
「はぁ〜そうだねぇ〜行ってきまぁす」
ゼクトとリュウシンが納得出来ないのは、その戦闘に自分達が参加出来なかったからであり、彼らもまた善人でなく本質的には悪だった。
カインは自分の存在意義に関わる事なので怒りが収まらない。
「クロ! 俺は二人みたいに納得しないからな!」
「だから謝っただろ? 次は連れて行くって」
「俺はお前のなんだ!?」
「カイン、今回は本当に不可抗力だったんだよ。想像していたより女帝がバカでな? だから、他の四天王もそのレベルなら一気に潰すかって思っているんだよ」
「は? じゃあ今夜連れて行くって」
「そうだよ、事と次第によってはその場で全員殺す事になるな」
「……そうか、わかった」
これはカインを収めるためのフェイクで、今夜行われる四天王の会談でそのつもりは全くない。
「クロ様、私はどうしたら?」
「エリーナは後で教会へ送るよ」
「あら? 私はここに住めないのですか?」
「「え?」」
クロとカインは驚きのあまり声が裏返った。
「私はてっきりここに住むのかと……」
「いや〜それは……なあカイン?」
「え? 俺? そ、それはクロが決める事だから俺はなんとも……」
女手は欲しいところだが、聖女様を住まわせる程のものが整っていない荒れ放題の拠点だった。
「と、とりあえずはエリーナが住めるよう整えないといけないし、今日のところは教会に」
「そうですか……残念です」
「カイン、エリーナを教会まで護衛して行ってくれ」
「わ、わかった」
「クロ様、今日は楽しかったです! それと……」
エリーナはクロへと近づき頬にキスをした。
「騎士様、守ってくれたお礼です……それではごきげんよう」
「ちょっ! 聖女様! まって! クロ行ってくる!」
クロは突然の事に驚き、エリーナは頬を赤らめ足速に去って行った。
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