表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/161

第37話 マザーオアファザー

「はぁぁぁぁぁ!?」


 懺蛇の拠点内にある一室でカインの声が響いた。


「そう叫ぶなカイン」


「カイン様は明るい方なのですね」


 頭を抱えるクロとは対象的にエリーナはニコニコしていて楽しそうだ。


「いやクロ、聖女様を仲間にしたって……」


「神託なんだよ」


「神ねえ……それで神はなんて?」


「エリーナを守れ」


「それだけ?」


「それだけ」


「はい! クロ様は騎士様なのです!」


 カインには絶対神デニスが顕現したとは伝えたが、実はフレンドリーで可愛い子が好きな適当神だとは言えなかった。


「騎士様だと!? おいクロ! お前えぇぇぇ!」


 カインは《《わなわな》》と震えながら両手でクロの胸ぐらを掴み揺らす。首がぐらぐらと揺れるが死んだ魚のような目をして一切の抵抗もしなかった。


「カイン落ち着け」


「リュウシン! 逆にお前はなんで冷静なんだよ! 騎士様て……」


「あははっ! カインは冒険者の次に騎士に憧れてたもんね~?」


「ゼクト! お前は納得出来るのか!?」


「ねえカイン~? これまでクロのやる事に間違いはあったかい?」


「ねえよっ! それとこれとは別の話だ!」


 美少女の、しかも聖女の騎士という役目を神から賜った事に対する嫉妬で狂った男が落ち着くまで一時間を要し、放心状態でぶつぶつと何かを呟き部屋の隅でいじけるに至る。


「それで計画に変更は?」


「ない、エリーナもそれは了承している」


「そうか、それと女帝との件だが……」


 リュウシンはチラリとエリーナの方を向き、話しをしても良いのかを顔で合図する。


「大丈夫だ、続けてくれ」


「今すぐにでも会いたいそうだ」


「今すぐに?」


「今日の夜に四天王が集まる会合があるそうでな、それまでに色々と判断したいんだろう」


 四天王が集まる会合でどんな内容が話し合われているのかは分からない。女帝に懺蛇の情報を与える事が吉と出るか凶と出るかは、クロの立ち回り次第となる。


「マザーウルティマにお会いになるのですか?」


「女帝と面識があるのか?」


「はいっ! 教会に多額の寄附をして下さいますし、元々孤児院にいらしたので」


「エリーナ、彼女がどんな女なのか教えてくれるか?」


「女? はて? マザーウルティマは男性ですよ?」


「「「はっ?」」」


「あっでも、心は女性なので……どちらなのでしょう?」


「リュウシン……お前会ったんだよな?」


「あぁ……直接本人に……妖艶な女だと……去り間際に頬にキスも……」


 絶望から覚醒したカインと慈愛に満ちた顔をするゼクトがリュウシンの肩に手を置き慰める。


「面会には俺とエリーナで行く」


「クロぉ~それは危険じゃないかなぁ~?」


「俺もそれには反対だ! クロ! 俺はお前の何だ? 盾じゃないのか!」


「マザーウルティマはとてもお優しい方なので心配ありませんよ」


 エリーナを連れて行く理由は、面識があるのと聖女の前で血なまぐさい事は起きないだろうという打算があるからだが、それだけが理由ではない。


「こういうのは最初が肝心だ。組織の頭が護衛も連れずに行く意味を考えろ」


「敵意はないという意思表示か。だが、聖女を連れて行く理由は? カインを連れて行かないならそれこそ一人で良いじゃないか」


「それは俺への抑止だ」


「なんでクロの? 女帝ならわかるけどよ」


「あははっ! わかっちゃったぁ~そうだねえ、聖女ちゃんが居た方がいいねぇ~」


「どういう事だ?」


「それはねぇ~……」


ゼクトの話しをクロ手をかざし遮る。


「話しが拗れたら皆殺しをしたくなるだろ」


 クロの言葉に空気がピンッと張りつめる。


「俺はこのスラム街を掌握するよ? でも今はまだその時じゃない。だけど俺も侮られたら《《暴れたくなる》》かもしれない。その時に一緒に居るのがカインだとどうなる?」


「先に手を出してしまうかもしれねえけど……それでも皆殺しするほどか? 話が拗れるだけだろ?」


「だけ? 十分な理由だろ? この話しは俺達のこれからを左右する。上手くいけば巨万の富が手に入るし、破談になれば全てを力で支配するしかなくなる。だからエリーナが一緒なんだよ。さすがに知人を目の前で殺すのは気が引けるからな。それに……」


 クロは少し焦っていた。仲間達と安心して暮らせる場所を作るため敵を排除し支配する。その思いが徐々に強くなっていった結果、実力行使で物事を解決しそうになる。それが一番簡単だからだ。しかし、力による支配には限度があるとも理解しておりその狭間に揺れている。

 そんな張りつめた空気の中、クロの顔に細く白い手が伸びてくる。


「クロ様、お顔が怖いですよ?」


 エリーナはクロの強ばった顔を両手でほぐし、目をまっすぐ見てくる。


「クロが連れて行く意味がよく分かったよ」


「くくくっ! カイン俺も同感だ」


 エリーナの行動で張りつめた空気が一瞬でお花畑のようになる。


「さぁ、行こうか! 女帝マザーウルティマの所へ」

作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品はカクヨムでも掲載しております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ