第30話 ミルド伯爵はナイスミドル?
「やっほ〜ミルド伯爵〜」
「おぉ! 勇者殿、無事でなによりだ」
勇者イリア一行はエルフのラスティアを連れ!ミルド伯爵の屋敷へ戻ってきていた。
「それで……賊の方は討伐できたので?」
「うんっ! 伯爵が言ってた場所にい〜っぱい居たから倒してきたよ!」
「おぉ! それは重畳!」
ミルドはニヤリと笑う
「伯爵?」
「おぉ、すまんすまん! ん? バスコス神官長の姿が見えんのだが?」
イリア達の顔が曇る。
「うん……バスコス神官長は……」
重い沈黙が流れる。
「なっ! まさか! じゃあ積み……ごほんっ! 保護したエルフ殿は賊の手に!?」
「あっ! ラスティア! あ〜えっとエルフさんは無事保護したよ!」
「それは本当に良かった! いや、バスコス神官長が犠牲になってしまったのに良かったは不謹慎だな……それで? そのエルフ殿はどこに?」
「う〜ん……ちょっと混乱してるみたいでさ……きっとすごく怖かったんだと思うの! だから今はアンリの魔法で眠らせてる」
「そうであったか、いやエルフ殿だけでも無事に保護できただけで良しとしよう。勇者殿! 此度の働き見事であった。後で報奨金を受け取ってくれ。それと陛下にも活躍を余すところなく伝えておこう」
「別にいいよ〜、私達は当たり前の事をしただけだし!」
「いやいや、勇者殿! 正当な評価を謙遜するのは相手によっては侮る事になる。甘んじて受けよ」
「そうなの? 別にいいのに〜」
「イリア? 伯爵様のご厚意を無碍にしては駄目よ! 伯爵様、ありがとう存じます」
アンリはイリアを制しミルドに対して礼をとるとミルドも満足気に笑顔を見せた。貴族とは面倒臭い生き物で、差し出した好意を受け取られない事は侮られたと感じ、プライドを大きく傷つけられると共に、対外的にもケチと捉えかねられないのだ。
「うむ! あぁそうだ、賊の中に大剣を振るう男はいたかね?」
「大剣……? ん〜あっ! いた! 名前なんだっけ……」
「マクベストという名のだが」
「それ! アスベスト!」
「イリア! マクベストだ!」
「うるさいなあ〜カルトは黙ってて!」
「すっごい強くてさ〜! ちょっと危なかったよ!」
「あぁ……俺もカルトもアンリも何も出来なかった……イリアが居なければ俺たちはきっと死んでいただろうな」
「あの……伯爵様、そのマクベストという人を討伐したのは何か問題が……?」
「討伐! いや、そうか死んだか……くっくっくっ」
ミルドは笑いを堪えるのに必死で、バレないように下を向き、背を向けて窓の外を眺める。
「伯爵様? 泣いて震えて……もしかしてご友人だったと……か?」
「えっ! そうなの!? ごめんね伯爵!」
ミルドは笑いが止まらない。
蒼穹の叡智は手のつけられないほどの力を付けていた。後ろ暗い貴族にとって邪魔な存在で、後ろ盾になっている存在が第三王子のヘクターだとわかった時にこれまで蒼穹の叡智の行動原理の意図がわかり狼狽した。ヘクターは我々のような貴族を粛清するつもりなのだと。
それからは討伐するべく有名な冒険者や暗殺者を派遣したがその悉くを退けられ、その度に聞かされる隻眼のマクベストという名ともう一人、名はわからないが手練れの従者。マクベストが倒れたのならその従者も一緒に死んだのであろう。悪徳貴族にとっては朗報でしかない。
「いや、良いのだ……そうかマクベストが逝ったか」
「伯爵様、マクベスト殿はなぜあのような盗賊に身を……俺達は、俺はもしかしたら出会い方が違えばあの方をと考えてしまい!」
盗賊という肩書きとはいえ、勇者と同行するような戦士にまで影響を及ぼす武勇。死んで良かったとミルドは改めて思った。
「それはそうと……勇者殿」
「ん? 何かな?」
「アースハイド帝国に聖女様が誕生したとの噂を聞いてな」
「聖女!!」
「前に聖女がいるなら仲間にしたい言ってあっただろう?」
「みんな! 行くよ!」
「ちょっとイリア!」
勇者と言えば聖女がつきもの。神聖魔法の使い手でヒーラーはイリア達に足りないピースの一つで、魔王討伐には必要不可欠な存在だった。
魔王自身は不可侵を貫き、対話による和平を望んでいるものの人族にとっては脅威でしかない存在であり、勇者イリアは悪の魔王は討伐するものだと思っている。
「あっでも……ラスティアが!」
「エルフ殿は私に任せなさい。エルフ族との友好関係は人族にとっては最重要案件なのでな! 心配はいらない」
「良かった〜、ミルド伯爵は顔は怖いけど良い人だね!」
「はっはっはっ! さあ行くのだ勇者よ馬車も必要な物資も用意してある」
「ありがとうっ! みんな行くよ!」
「ちょっとイリア! 早いよ!」
意気揚々と出発する姿をミルドは不敵な笑みで窓から眺め、馬車が見えなくなると執事を呼び出した。
「おい、エルフの女はどこだ?」
「……はい、旦那様の寝室にお連れしております」
「フフフッ! アハハハハハッ! こんなに上手くいくとはな! そうかマクベストは死んだか! アハハハハッ! バスコスが死んだのは残念だが、まあ良い。しかし、勇者とは便利な道具だな。口の聞き方はなってないが駒として使えるうちは許してやるとしよう」
「旦那様、勇者とはいえ下賤の者にあのような……」
「良いのだビスマルク、あのようなバカでも一応は勇者、人族の希望だ。私に益を齎すのであれば許してやるのも道理」
「左様でございますか……」
ビスマルクに寝室のドアを開けさせると、鎖に繋がれ奴隷印が施されたエルフがベッドに横たわっていた。
「さあエルフを堪能するとしようか」
ミルドは色欲にまみれた笑みを浮かべ凝視していると、魔法の効果が切れたラスティアが目を覚ました。
「おい、エルフ! 貴様は今から俺様の奴隷だ! 楽しませてくれよな?」
「ひいっ!」
エルフの悲痛な叫びは朝方まで止む事はなかった。
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