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第27話 強くなれ

「煙!? 拠点が襲われているのか! おいっクロ!」


「落ち着けカイン、先ずは情報収集だ」


「そんな悠長なことっ!」


「カイン! クロの言う通りにしろ。想定される最悪の事態はなんだ? 言ってみろよ」


「……拠点が襲われて、皆んなが全滅している?」


「違う! 最悪なのは拠点が壊滅していて、俺達も全滅する事だ」


 命があっての物種。生きていればやり直しができるリュウシンはそう言いたかったのだろうが、カインは理解はしても納得はできない。


「だとしてもっ!」


「あ〜ちょっと僕が行ってくるからさぁ? 偵察はまかせなよぉ〜」


「ゼクト気をつけて!」


 マリベルはゼクトに支援魔法をかけ送り出す。


「なあカイン、お前の気持ちは分からない訳ではないし、気持ちは俺も同じだ。たがな、俺はお前達を喪うほうが嫌なんだよ」


 クロの本音にカインは何も言えなくなった。たまに臭い事を言うクロに心がむず痒くなる時もあるが心はカインも同じだ。


「クロ様、もし……もし拠点が壊滅してたら……」


「生存者と相手の残存兵力の確認をしない事には何とも言えないな」


「そう……ですよね」


「マリベル、今はゼクトからの報告を待つしかない。余計なことは考えるな」


「リュウシン……」


 リュウシンも冷静なわけではない。敵がいるかもしれない状況なのに木のてっぺんに立ち拠点をずっと眺めていた。


『クロ大変! マリ姉が! 場所はそこから南東に一キロくらい! 早く!』


 ゼクトらしからぬ慌てた口調で念話が入ると、クロ達は全力で駆け出した。


「ゼクト!!」


「こっちだよ!」


 ゼクトが血だらけになり、今にも命の火が消えそうなマリエラを抱きしめていた。片腕は落とされ、片目も切られ潰されていた。


「「「マリ姉!!」」」


「あ、あんた達、無事だったんだね……」


「早く治癒を! マリベル!」


「う、うん! 精霊よ!」


「無駄だよ……ちょっとばっかし血を流しすぎたよ。ははっ……」


 必死に治癒魔法をかけるマリベルだったが、見た目の傷は癒えても血までは戻らない。


「嫌……いやぁぁぁ!!」


「マリ姉嘘だろ! なあ!」


 本当の姉のように慕うマリエラが死ぬという現実をクロ以外は受け入れられず涙が止まらない。


「マリエラ何が起きた」


「ふふっ、坊はいつでも冷静だねえ……それでいいさね」


「いつまでも子供扱いはやめろ……」


「勇者が来たらしい」


「「「!!!」」」


 カイン、リュウシン、マリベルはゼクトの言葉に絶句した。


「勇者……ちっ」


「その様子じゃ、あんた達のところにも行ったようだね……うっ」


「マリ姉! もう喋らないで良いから!」


 マリエラは治癒魔法を使いすぎて疲弊しているマリベルの頭を優しく撫でるとクロの方に向き直った。


「拠点にいた誰かが今回の襲撃の件を喋ったんだろうね、急に踵を返してすっとんでいったよ……だから今は伯爵領の兵士達が帰ってくる私らの仲間を待ち伏せているはずさ」


「じゃあ今あそこには敵がいるんだな?」


「坊! うっ! ……行くんじゃない。あそこにはもう誰も生きちゃいないよ」


 マリエラはクロの足を掴み行かせないようにする。


「私らは全滅さ、だから今から言う事を良く聞きな!」


 息も絶えだえでマリエラは吠え、それを五人は静かに見守り息を殺す。


「私ら蒼穹の叡智はあるお方の命令で動いていた。それはこの国、メランコリ国第三王子ヘクター様だよ」


「第三王子!?」


「これを……」


 マリエラがペンダントを外しクロへ渡す。


「これは?」


「それを持ってヘクター様に会えばわかってくれる」


「いや、待ってくれマリ姉! 俺達みたいな奴等がどうやって王子に会えばいいんだよ!」


「カイン……全て坊に任せばいいんだよ」


「無茶を言いやがる……」


「あんた達はバカだからさ坊の言う事をよく聞いて、坊のために動くんだ! わかったね?」


「俺にどうしろと」


「蒼穹の叡智に所属している幹部達は皆んなヘクター王子の影の部隊だったんだよ。あのマクベストなんて本当は表の親衛隊のホープだったんだよ。なあ? 笑っちゃうだろ? 私は鑑定スキルを使えるからすぐに第三王子付きになってね、あいつとはその時からの付き合いだったのさ」


「マリ姉……もうわかったからさ? しゃべらないでよ」


 マリエラは一人ずつ手を握り目をまっすぐ見ながら語り出す。


「ゼクトは坊の目になるんだよ」


 ゼクトは何度も頷く。


「マリベルあんたは坊の心を支えてやりな」


「うん! わかったよ、わかったから!」


「リュウシン、あんたには辛い思いをさせるかもしれないけど……坊の影となって動きな」


「……あぁ、必ず!」


「カイン、あんたは何も考えずに坊の盾となって常に側で指示を仰ぐんだよ! 勝手な行動はしたらいけないよ。あんたはバカだけどそのバカがみんなを助けるからね」


「マリ姉! 俺にだけ一言多いよ! でも本当の事だから了解した!」


「坊……あんたは拾った頃から随分と強くなったね……けど坊、力を過信してはいけないよ……上手くやるんだ、あんたなら出来るはず」


「マリエラ……」


「この子達は坊を裏切らない。だから絶対に……守ってあげて欲しい」


「言われなくてもわかってるよ」


「坊……もっと近くに来ておくれよ……もうあまり見えないんだよ……」


 伸ばした手をクロは掴み頬に当てるとマリエラと目が合う。


「ふふっ……坊も泣くんだねぇ、私は嬉しいよ……」


 決して声は出さない、冷静さを失わない、そう自分を制して一人毅然とした態度で接していたつもりだったが、マリエラの最後の言葉に涙を止める事は出来なかった。

作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品はカクヨムでも掲載しております。

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