第21話 魔王さん一家
魔獣のレベルが高い深い森の中をフードの付いた黒いを外套を着た一人の少女が鼻歌混じりで蹂躙しながら歩く。
「フッフフン♪」
パシュー! ズンッ!
Aランク相当の魔獣が何もできないまま、障害物を排除するかのように頭を潰され倒れていく。
「どこだったかなぁ? まだ十年しか経ってないのに!」
少女は道に迷っていた。ここまで鼻歌交じりでやってこれたのは食に関する問題は魔獣を狩る事で解決しており、水も魔法で生成できるのでほぼ着の身着のままやってきた。
「クー元気かなぁ♪」
当時五歳だった十年前に出会った少年と交わした約束を果たすためここまでやってきたが、再会はまだ出来そうにない。しかし、少女は知らない。その少年が自分の事を同じ少年だと認識している事を。
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スフィア・エル・ガルガランドは幼少期から炎を扱う才能に溢れて、魔族の間では炎帝と呼ばれ畏怖の対象となっていた。
魔族は魔王を頂点とし、炎帝、雷帝、氷帝、土帝の四人が四帝として君臨している。
人族とは違い魔族は自由であり、力が全て。魔王は魔王足りえるから魔王であり世襲制ではない。しかし、その一族は魔族の中でも突出して能力が高い。
スフィア・エル・ガルガランドは魔王の子であり四番目の子供だ。
十五歳になり美しく成長した。才気も美貌も兼ね備えてはいるが、魔王の座には興味がない。少女が興味があるモノはクロウという人族のみであり、炎帝の座も煩わしいとさえ思っていた。
魔族は自由だ。炎帝という立場に責務はあるが強制したければ屈服させるしかない。それが出来るのは唯一魔王だけであり、現魔王は娘に超甘い。
魔族は力が全てだ。現魔王は歴代最強と言われる程の力を有しているが、支配欲はそれほどない。魔族領を無駄に広げ戦争をするような事に興味はない。他種族からは恐れられてはいるようだが、魔族領は広く潤っているのでわざわざ戦争をする必要性が見つからないというのが大きい。
歴代最強にして歴代最高の温厚さ。それが現魔王オルト・エル・ガルガランドという男だ。
「スフィアちゃんどこいっちゃったの!?」
魔王オルト・エル・ガルガランドは最愛の娘が居なくなった事にショックを受けていた。
「ま、魔王様! 落ち着いて下さい! 魔力が暴走してます! 城が! 城が!」
魔王は娘ラブというTシャツを作るほどスフィアを溺愛している。末の娘というのもあり、三人の兄達も溺愛していた。
「父上! スフィアがまた人族のところへ行ったそうです!」
長兄のリューイは雷帝と呼ばれてはいるが、父に劣らず妹ラブである。
「兄上! スフィアはもう十五歳だ、どこに行こうが自由だろう! でもまあ心配ではあるが……」
「バジール様! 言葉とは裏腹に魔力が! 辺りが凍ってます! 落ち着いて下さい!」
次男バジールは氷帝と呼ばれ、常に冷静沈着で氷の貴公子として人気があるがスフィアの事に関しては冷静では居られない。
「あぁ! スフィアぁぁぁぁ! なぜ我に相談もなしに出て行く!!」
「ドイル様! 地面が! 地面が割れてます!」
三男のドイルは土帝と呼ばれ普段は温厚で大地に花を咲かせたり、土を耕し、森を作るなどして魔族領に潤いを与えている。歳が近く、スフィアの世話を一番焼いていたのがドイルであったため、その消失感は大きい。
この四人が暴れて城が壊れるのはこれで二回目で、前回は十年前の出来事であった。
「「「「スフィアちゃぁぁぁん!!!」」」」
魔王一家の悲痛な叫びが魔族領に響き渡った。
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