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第101話 順風満帆なご都合主義に鉄槌を

カクヨムに公開している話数に合わせるため、一気に101話まで公開させていただきました。

次話からはカクヨムの更新と共にこちらも更新させていただく形になります。

システムの違いで変な表示の仕方になっている場合があるので、誤字と共にご報告いただけたら幸いです。

 チートキャラとの戦闘は二度目で、前回は無自覚系の頭がお花畑の勇者、今回は召喚者が相手となるわけだが勇者と同様に理不尽な能力で戦況を覆される恐れがある。


「それで、情報は集まったか?」


「ええ、こちらに」


 ボン爺と共に現れた陰の一人が精査された報告書の束を差し出す。一枚一枚じっくりと読み、攻略法を考える。


「ケンタ・イイヅカの戦闘能力は中級冒険者程度というのは本当か?」


 報告書には一週間の行動記録から交友関係、個別の戦闘能力や性格が事細かに記されており、ケンタ・イイヅカの個人戦闘能力の危険度はCだった。

 危険度の指標としては


 SSS  回避不能(厄災級)

 SS   超絶危険(英雄級)

 S   超危険(人外級)

 A   危険(上級冒険者)

 B   やや危険(ベテラン冒険者)

 C   注意(中級冒険者)

 D   普通(低級冒険者)

 E   ゴミ(チンピラ)


 といったところだろう。


「身体能力は高い方ではあるようですが、戦闘自体は得意ではないようです」


「俺としてはSSといった感じだがな」


 ケンタ・イイヅカのもつポーション精製のスキルは詳細こそ不明だが想像の範囲内で想定される使用方法は戦闘面に於いても凶悪になりうるスキルだと認識している。


「このケンタ・イイヅカは戦闘になると後方支援にまわる事が殆どで、前線での戦闘は獣人の女とドラゴニュートの女が担っており、この二人の危険度はAです。ケンタ・イイヅカの傍には常に戦闘メイドが控えておりうかつには近寄れないでしょう。それと魔術に長けた女エルフがいるようで、この女も戦闘メイド同様危険度はB+といった感じです」


「ボン爺、一週間前に聞いた謎の女というのはこのエルフの事か?」


「どうやらそのようですな」


 召喚者は二人、もう一人の召喚者は緑川桜子。浄化スキルという戦闘特化ではないにしても同じ召喚者だ。身体能力のチートはこの女にもかかっているはずだが、報告書に書いてあるパーティーメンバーには含まれていない。


「この交友関係一覧にあるサクラコ・ミドリカワという女はなんでパーティメンバーじゃないんだ? ケンタ・イイヅカの恋人とは書かれているが、名前から推測するとこの二人は同郷だろう?」


 召喚者だという事はデニスからの情報で知っている。故に戦闘に参加しない理由が知りたかった。


「その女は気の弱いところがあり戦闘には参加しないようですね。一応、戦闘能力は有しているようですが危険度は皆無でしょう」


「この女の浄化スキルは邪魔だな」


「奴隷商としてはそうじゃろうなあ」


「奴隷紋を消すとはこれはまた規格外というか、病気の治療を無償で行う。まさに聖女だな」


「……エリーナ様のように聖女の称号は持ってはおらんようだが、行いそのものはまさにそうじゃの」


「あれはまあ聖女という名を持っているだけで万人に尽くそうなどとは思ってないからな」


 エリーナはデニスのお気に入りというその一点のみで聖女となっている。スラム育ちのエリーナにしてみれば、弱ければ奪われ、弱ければ死ぬ。死にたくなければ奪うしかないという価値観が強く、頼りにしてくる弱い者に対して慈悲の心はあるが、頼ってきた者が死んだとしても大きな感情の揺れはない。


「若、どのようになさる?」


「まとめての戦闘は分が悪いな。総力をあげてかかればやれん事はないだが、表の街の英雄と聖女の居るパーティーを大っぴらに殺すとなると大義名分がいる。どうやら皇帝のお気に入りのようだし、国と事を構えるのには時期早々だ」


「暗殺が無難じゃろうな」


「ただなあ~。ただ暗殺するにも根城にはこいつらと……」


「元勇者パーティーの剣聖ゲイルじゃな? だが、あいつは記憶を失っており戦闘できる状態でもないからのう」


 確かに寝たきりになっている記憶をなくした剣聖など敵ではない。しかし、それは常識の範囲内での話だ。腐っても剣聖であり元勇者パーティーの一員なのだ。びっくりするようなタイミングで覚醒して牙を剥くそんな危険性がある。否、必ず起こる。


「剣聖ゲイルの危険度はSだ。何をやらかすか分からない不確定要素と考えろ」


「若は慎重すぎると思うが……」


「危機察知能力と言ってくれ。とりあえず鑑定阻害の魔道具を用意してくれ」


「鑑定スキル持ちだとお考えに?」


「商人のふりをしてケンタ・イイヅカに近づく。だから用心の為さ」


「あまり顔を表に晒さない方が良いと思うがの」


「そこは変装するさ。 名前は……そうだな旅の行商人()()()とでも名乗ろうかな」


「なにやらあまり行商が得意そうでない名前じゃのう……」


 ~~~~~~


「あっ! クロウさん! お待たせしました!」


「いえいえ、私も今来たところですよケンタさん。まあ立ち話もなんですからかけて下さい」


 旅の行商人らしい少し汚れているがしっかりとした素材を使った服を着て、報告書にあった行動記録を元に接触するのは簡単だった。商談と称してスラムと表の街の丁度中間に位置する店にケンタ・イイヅカを一人で誘い入れることに成功した。ここはもちろん懺蛇の息がかかった店であり()()()いざこざがあっても表沙汰にはならない。

 戦闘メイドかドラゴニュートの護衛くらいは覚悟していたが、都合よく一人で来てくれた事で順風満帆なご都合主義が潰える確信をした。

作品を読んでいただきありがとうございます。

この作品はカクヨムでも掲載しております。

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