ダンジョン攻略必勝法、教えます
「いいいっそげぇーーーーー!」
巨大火の玉が作ってくれた道を私達は突き進む。
遺跡も破壊のせいでフロア単位の移動がおぼつかなく、動くたびに引っかかっていた。
本格的に崩壊したら報酬が埋もれちゃう!
まったく誰のせいでこんなことに!
「マテリ、おめぇのせいだからな!」
「何も言ってないぃーーー!」
相変わらずミリータちゃんは心を読んでくる。
ドワーフにそんなスキルがあるなんて知らなかったなぁ。
気がつくとフィムちゃんが私と並走してるけど、なんでしょうか?
「師匠! ボクは未熟でした! 偽の師匠に騙されてしまって……!」
「あ、そ、そうなんだ」
「だから今こそ、ボクは師匠をここで超えます!」
「だからの繋がりがまったくわかんないけど、どうでもいいや」
そうか。
ということはミリータちゃんも私の偽物に会ってるのかな。
周囲から見たら、私はちょっと物欲が強い女の子で少しだけ変に思われてるかもしれない。
だけどこの二人はついてきてくれるのが嬉しい。
ミリータちゃんはアイテム中毒だし、フィムちゃんは自分が勇者と思い込んでる。
こんな濃い女の子達が私みたいな平凡な女の子を慕ってくれているんだ。
「マテリ、また自分を棚にあげなかったか?」
「もうやだ怖い」
こんなこと言ってるけどミリータちゃんはなんだかんだ言って私を信じてくれている。
だから転移の宝珠を使わずについてきてくれたんだ。
私も信じていたよ。何せ一瞬で魔物だと見抜いたからね。
あんな魔物にミリータちゃんは騙れない。
「オラの偽物が出てきても、おめぇならミッションで解決だな」
「しょんなことないよ!」
ピンポイントすぎて泣きそう。
気を取り直して、いよいよ最終フロアが近づいてる。
私の五感がそう言ってる。
「あそこが最終フロアだ!」
「よぉぉーーーーしゃぁああぁーーーーー!」
ついに見えた最終フロア!
遺跡の中心核でもあるあそこに私の報酬がある!
ダッシュダッシュダッシュで向かうと、謎の三人が立っていた。
まさか番人的なボス?
「ククク……一足、遅かったな」
「え? なに? 泥棒?」
この声は人間だ。
つまり先客がいたわけだけど、私の報酬を盗もうとしてるのは誰さ。
「この神器は俺達、紅の刃がいただいた!」
「残念だったわね! 落とし穴に落ちてまた落ちて転がっていったら運よくたどり着いたのよ!」
「これが一級の実力なのさ! フハハハー!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ミッション発生!
紅の刃を討伐する。報酬:クリムゾンクイーン
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「ファイアボボボァァルァーーーーーー!」
「ぎゃぁぁあーーーーーー!」
「やな感じィーーーー!」
「パワーが違いすぎるぁぁぁーーーー!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ミッション達成! クリムゾンクイーンを手に入れた!
効果:攻撃+800 炎属性ダメージが上がる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
無事、遺跡荒らしを討伐できた。
他人の報酬を横取りなんて倫理的に許されるはずがない。
一級冒険者パーティも地に落ちたね。
「フィムちゃん、これあげる!」
「し、師匠……ボクにこんなものを……」
「二刀流、いけるでしょ?」
「はいっ! これを家宝とします!」
フィムちゃんは大胆に喜んでくれるから、いくらでもあげたくなる。
たまに餌付けしてる感覚に陥るけど、私は勇者の師匠だ。
さて遺跡荒らしを倒して今度こそ、やっと私の報酬が――。
「あ、あれは……マテリ、どうも最終試練みたいだ!」
「はぁぁーー!?」
空中に浮かび上がって実体化したのは、四足歩行の犬みたいな魔物だ。
全身が白い体毛に覆われていて、フェンリルと連想できなくもない。
そんなワンコがナマズ髭を生やした顔でギロリと私達を睨む。
「我が王の宝、何人たりとも渡さん……。立ち去れ……」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ミッションが発生!
・守護神獣アレリアを討伐する。報酬:アレリア国の禁書
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「立ち去らぁぁーーーーん!」
「愚かな……ならばここで死ぬがいい! かつてアレリアに迫る万の軍勢を退けた守護神獣の力を身をもって」
「ファイアボボボボボボボァァーーーーールァーーーーー!」
「ヌオォォ!? こ、この人間……!」
なにこいつ硬すぎ!
私のステータスで倒れないの?
「マテリ! こいつのレベルはオラ達より上だ! レベル補正でかなりダメージが下がってる!」
「あああぁぁぁめんどくさぁぁーーーーいぃーーーーーーー!」
「師匠! 来ます!」
アレリアが口から光線を放った。
そんなものは回避、したところで壁に跳ね返って縦横無尽に光が反射。
さすがに回避しきれなくて――。
「いったぁぁーーーー!」
「こ、この人間……光滅を受けて生きているだと!」
ちょっとジンジンする!
遺跡が崩れてその神器が埋もれたらどうするの?
守護神獣とか訳の分からないもの配置しやがってからに!
「いったいんじゃこのクソ獣ォォーー! ファファファファファボボファイファイファイボボボファファイァーーー!」
「ぬうりゃぁぁぁーーーー!」
「全剣技・冷凍剣コキュートスッ! ウォーーータタタタタタタァーーー!」
「グウォオオオォーーーーーーーーー!」
アレリアが雄叫びを上げると共に攻撃の余波がフロア全体に響く。
壁が崩れて、天井が落ちてきた。
「ああぁぁーーーー! 神器だけはァーーー!」
「限界だ! 転移の宝珠で脱出する!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ミッション達成! アレリアの禁書を手に入れた!
効果:魔法大国アレリアに関する歴史が記されている。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
寸前のところで神器を手にとって脱出した。
直後に遺跡が完全に崩れ始めたからギリギリだったと思う。
これで私達のアレリア遺跡攻略は終わりだ。
よかった、よかった。
称号 :『捨てられた女子高生』
『スキル中毒』
『物欲の聖女』
『勇者の師匠』
『ダンジョンクラッシャー』 New!
ブックマーク、応援ありがとうございます!
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたなら
ブックマーク登録と広告下にある☆☆☆☆☆による応援をお願いします!





