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正義の心をもって爆発物を処理します

「王子、こんなに大量に鼻血を……! 一体何が!」

「事案が起こりかけました」


 駆けつけた騎士達に適当な返事をした時にはすでに着替えが終わっていた。

 あと少し早かったらそこに倒れてる王子と同じ目にあうところだったよ、あなた達。

 ていうか鼻血を出してる時点でバッチリ見られてるじゃん。

 もう一発くらいやっておきたいけど、今はミッション!


「騎士の方々! この城にむぐふぅっ!?」

「フィムちゃん、余計なことを言わないで」


 他の人達がミッションを攻略したら報酬が貰えないかもしれないでしょ。

 だからこれは私達だけでマジックボムを見つけて破壊しなきゃいけない。

 そもそもマジックボムって何なのッてところだけど、爆弾みたいなものかな?


「マテリ、マジックボムは手のひらサイズで小さい。ただし爆発すれば三つなら城が半壊するかもな」

「ボムはどこかなボムボムボムボム!」


 この無駄に広い城内にマジックボムが三つか。

 だけど私にはわかる。五感のすべてが私にミッションの在り処を教えてくれる。

 一つ目のマジックボムは――。


「食堂ゥゥーーーーー!」

「うわぁーーー!」


 王様と王妃が慎ましく食事をしていたけど、構わずテーブルをぶっ叩いた。

 テーブルの裏側に張り付けられたマジックボムの破片が床に飛び散る。

 その破片が小さくボンッと破裂して、二人が悲鳴を上げた。


「マ、マテリよ! 何の」

「次ィーーーー!」


 次次次次!

 長い廊下を走って走って、また五感を研ぎ澄ます。

 聞け、マテリ。ミッションの産声を。

 感じろ、マテリ。ミッションの胎動を。

 取れ、マテリ。報酬を。

 お前を呼ぶのは誰だ?


「報酬だァーーーーー!」

「な、なんだぁ! 騎士団長! 敵襲です!」


 そこは騎士団の訓練場だった。

 大勢の騎士達が剣を振るって、夜遅くまで訓練に励んでらっしゃる。

 お疲れ様だけど、私のセンサーがここだと言っていた。


「おのれ! どのようにして城内に入ったのかは知らんが……ん? 君は」

「ちぇいやぁぁーーー!」

「な、何を!」


 訓練用の木偶を杖で叩き飛ばす。

 あまりの威力に千切れた木偶が壁に衝突して亀裂を作った。

 おかしいな? 確かに私の勘ではここにマジックボムが――。


「ま、まったく何だというのだ! マテリ殿! お答えください!」


 飛んでいったマジックボムが騎士団長の頭に乗っている!

 木偶の裏側に張り付いていたものがあんなところに飛んでいくなんて!

 そこを見逃す私じゃない!


「つぇりゃぁーー!」

「がふっ……!」


 騎士団長の頭をぶっ叩くと、またもやマジックボムが破片になって小さく爆発した。

 パンパンという音を立てて、もちろん騎士団長を巻き込んでしまう。

 兜が取れて、騎士団長の頭髪が少し寂しいと気づく。見なかったことに。


「騎士団長ーーーー!」

「ごめんんんーーーー!」


 二重の意味でやっちゃった!

 でもミッションだからしょうがない!


「マテリ様! いくら王子の婚約者でも」

「失言ンンァーーー!」

「ぐあぁぁーー!」


 杖で失言した騎士を叩き飛ばした。

 この騎士が何か勘違いをしているのか、はたまたやっぱり王子が振りまいた話なのかな?

 そんなものより今はミッションだ。あと一つ!


「あと一つはぁぁー……」

「どうしたというのだ!」

「お、恐ろしい……」


 杖を持ったまま訓練場を徘徊した。

 私が歩く度に騎士達が距離を置いて、ついに剣を構える。

 なに? 邪魔するの?


「あと一つ……あと一つ……」


 そもそもこのマジックボムは誰が仕掛けた?

 名前からしてあの魔道士協会の人だと思うけど、今までの設置場所が訓練場と食堂。

 マテリ、思考を研ぎ澄ませなさい。

 あなたならできる。あなたなら報酬を手にすることができる。

 あなたにはその資格がある。

 城に立ち入ることができる魔道士といえば、捕まった魔道士協会の魔導士。

 そしてもう一人、こういうところに来るのは大体偉い人。

 支部長のバストゥールだ。こいつはどんなタイミングで仕掛けた?

 これまで設置されていた場所は食堂と訓練場。

 食堂は会食か何かをした時、訓練場はあいつの性格を考えれば偉そうに騎士達を見下すために視察するはず。

 絶対そうだ、こじつけじゃない。私のセンサーがそう言ってる。

 バストゥールはなんか多分嫌な奴だから、灯台下暗しみたいなところに設置するはず。

 ほぼ会話しなかった気がするけど嫌な奴だから、私のセンサーがそう反応してるから。

 そう反応してるから自分を信じてるから間違いないから絶対絶対絶対絶対。


「たぁぁーーーーーー!」


 一切無駄がない走りで私はあるところに向かった。

 あと一ヶ所、バストゥールがマジックボムを仕掛けられる場所がある。

 性格悪すぎるが故に灯台下暗しを狙ってあそこに仕掛けるはずだ。

 こじつけじゃない。私のセンサーがそう言ってる言ってる言ってる言ってる。


「そぉこぉぉぉぉ……だぁぁぁーーーー!」


 私は城の入口に辿りついた。

 死角になってる桟橋の端に取り付けられたマジックボムめがめて杖をヒット!

 砕け散ったマジックボムの破片が堀の水に落ちて破裂した。

 これで、これでぇ!


「ミッションクリアァーーーーーーーーーーー!」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ミッション達成! 紅神石を手に入れた!

効果:火の神の一部と言われている魔石。鍛冶で使用。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 なんかわからないけどすごい石ゲットォォー!

 これさっそくミリータちゃんに鍛冶を、あれ?

 足場が、なんか。


「あ……桟橋が……」


 杖でぶっ叩いたせいで桟橋が崩れた。


「おぉーーちたぁぁぁ!」


 そのまま堀の池に落ちて、また風呂に入るはめになってしまった。

 空中ジャンプできることも忘れて、壊した城の中のものを弁償しなきゃいけないことに気づく。

 あのテーブルとかさ、た、高いのかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] ラッキースケベだなんてG王子、生意気な…!
2022/09/01 22:33 退会済み
管理
[一言] 城が半壊よりは…よりはマシだから……多分
[一言] 王子……君はヒロイン補正かギャグキャラ補正の隠しスキルがあるよ、きっと! 聞け、マテリ。ミッションの産声を。 感じろ、マテリ。ミッションの胎動を。 取れ、マテリ。報酬を。 お前を呼ぶのは誰…
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