魔王城で待つ者とは?
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魔王城に到達! 勇者の証を手に入れた!
効果:剣装備時、攻撃+200 攻撃回数+2
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す、すごい。
すごいけど、これは私よりもフィムちゃん用かな?
さすが魔王城、それっぽいものが手に入る。
「フィムちゃん、これあげる。あなたに似合うと思うよ」
「こ、これは勇者の証! 私なんかに……!」
「よく勇者の証だってわかったね」
「師匠……ついに私を勇者と認めて……うぅっ! い、いけません。これで満足せず、更に精進しろということですね。わかってます!」
こんなに喜んでもらえるならプレゼントも悪くないか。
私もミリータちゃんから貰った櫛はまだ大切に使ってる。
なるほど、クリア報酬。
とことんいいものを与えてくれるなぁ。
さてと、魔王城。その外観は深い堀が城を囲っていて、橋がかかっている。
城の上には何かが羽ばたいて飛んでいて、もうこれでもかってくらいの魔王城だ。
確かにこんなのが領土内にあったら不安になるのはわからないでもない。
「ここからでも魔王の圧倒的存在を感じます……!」
「そうなんだ」
「師匠、必ず勝ちましょう!」
「うん」
一人、ちゃんとシリアスをやってる子がいるおかげで程よい緊張感はあるかもしれない。
私としてはこの中に報酬があるのか、興味はただ一点だ。
見上げるほどの大きさの門が行く手を遮っているからさっそく――。
と思ったら、扉が勝手に開いた。
「……師匠。これは罠かもしれません。でもボク達に引き下がる理由はありませんよね?」
「そうだね」
どこか認識のずれを感じるけど気にしない。
駆け足で魔王城の中に入ると、そこは分岐と階段が繋ぐ高低差による大迷宮。
洋館を巨大化させて複雑にしたみたいな内装だ。
うわぁ、こういうのはいらないんだけどな。
そこへぼんやりと何かが輪郭を形作り、ローブとマントを羽織ったフクロウ人間みたいなのが実体化した。
「さっそく出ましたね!」
「そうだね」
「師匠! ここは私に任せていただけますか!?」
「いいよ」
このフクロウ伯爵に対する討伐ミッションが出てこない。
大迷宮に加えてこの不作っぷりに、私はいっそのこと魔王城を破壊しつくそうかと考えた。
親玉を引きずり出せばミッションが出てくるかもしれないからね。
「お待ちなさい。我々に敵意はありません。よくぞここまでいらっしゃいました」
「はぁ……」
「私の名はオウルーク。あなた達が魔王と呼んでいる者の側近を務めております。あのお方はあなた方との争いを望んでおりません」
「はぁーーーー!?」
私の声が思いっきり木霊する。
ちょっとちょっとちょっと! このフクロウ伯爵、なに言ってんの!
ここまできて敵意がないだのミッション不発だの!
段々腹立ってきた。もういい、これはやるしかない。
「マ、マテリ! なにする!」
「この城を破壊して魔王を引きずり出す。そして私はミッションを」
「落ち着けぇ! 話を進めれば結果的に良ミッションが出てくるかもしれねぇぞ!」
「それもそうか」
さすがミリータちゃん、ミッションに対する執着は私に負けてないね。
このフクロウ伯爵がミッションを運んでくれるフクロウなら、私は歓迎するよ。
「師匠、騙されないでください! 魔王の手下はすでに私達に仕掛けてきたんですよ!」
「フクロウ伯爵、そこのところどうなの?」
「フ、フクロウ伯爵? それを含めてあのお方からお話があります。こちらへどうぞ」
フクロウ伯爵の後をついていくと、あの大迷宮の正解ルートをあっさり抜けて魔王の下へ案内された。
玉座に座るあれが魔王か。いよいよ、今度こそミッションがくる!
「よくぞここまで来た。わらわはマウ、お前達が魔王と呼んでいる者だ」
玉座に座っていたのは角を生やした女の子だ。
不敵に笑って強そうに演出しているけど小さい。
たぶん私より小さい。
「お、お前が魔王! 師匠、これはやはり罠では!」
「ではさようなら」
「師匠!?」
まぁ報酬的には悪くなかったしドンマイ。
魔王城到達報酬だってここに来なかったら貰えなかったからね?
「お待ちください。どうかマウ様のお話を聞いていただきたいのです」
「モチベーションがないです」
「我が主はあなた方と争う気はないのです。ですが主の父……スタロトス様は魔界五大魔王の一角。あのお方は娘であるこちらの方を立派な魔王にするよう、試練を与えたのです」
「モチベーションがないです」
「それは人間界の国を征服すること、それができればマウ様は正式に『殺戮』のスタロトスとして認められるのです」
「モチベーションがないです」
何かと思えば魔族のお家騒動。
魔族って世襲制だったんだとかぼんやり思った。
もうね、いい加減にして?
「私を含めてあなた方が四天王と呼んでいるあの者達は、マウ様に対するお目付け役として命じられてました。彼らは野心溢れて、人間界を征服せんと意気込んでいたのですが当のマウ様はそれを良しとしない……。むしろあなた達との交流を望んでおられるのです」
「し、師匠……。殺戮のスタロトスの手の者がこの世界に浸食しているとなると……。何らかの手段で魔族がこちら側にこられたということです」
「そうだね」
フィムちゃんが冷や汗をかいている。
私はテンションとモチベーションが地に落ちて、杖で床に見えない落書きを描いていた。
「あなた達はあのレイムゲイルとフレスベルクを打ち破りました。あ、誤解なきよう……むしろ感謝しているのです。遅かれ早かれ、あの者達は独断で動いて人間達に戦いを挑んだでしょう」
「レイムゲイル、フレスベルク、お前……。残る四天王はどこにいるのです!」
「それがすべてですが?」
「四天王じゃないのですか?」
「誰が言い始めたのかは知りませんがマウ様の配下はレイムゲイルとフレスベルク、そして私のみです。あ! あの! 話はまだ終わってません!」
魔道車を展開して中に入っていった私をフクロウ伯爵が引き止める。
バサバサと羽ばたいたフクロウ伯爵が車窓越しに訴えかけてきた。
「あなた達にお願いがあるのです! もちろん報酬を差し上げます!」
「それを早く言ってよ」
よし、ちょっとテンションが持ち直してきた。
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