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佐々木小次郎物語

作者: 工藤 響

私がその男にあったのは、ある熱い夏の昼間のこと。その日私は、夏休みなので家にいてもだらけて一日を、終えてしまうと思い。いつもは、行くことのない古い喫茶店へ行った。私の持ち物は本一冊と財布とスマートフォンだけで出かけた。持ち物は大体この三点セットだ。喫茶店に入りコロナ対策に置かれたアルコール消毒をして席に座った。店員がお水とおしぼりをもってきた。店員が落ち着いた雰囲気でテーブルの上にお水を置いた後、私はアイスコーヒーを急いで注文した。別に急がなくてもよかったが、店内がとて落ち着いた雰囲気で後で声を出して店員を呼び、注文したくなかったのでそうした。私は、ソファーが向かい合う四人席に座って本を読んでいた。すると、カウンター席に座っていたある男が急に

「あんちゃん、その本面白いか?」

と聞いてきた。私は本を読むのがさほど好きではない。この本も面白いかと聞かれたら、たいして面白くない。しかし答えた言葉は「面白いですよ。」と答えた。すると男は

「あんちゃん名前はなんて言うんだ。俺は佐々木小次郎ってんだ。」

彼はどう見ても有名な佐々木小次郎ではない。どう見たって中年のビールを飲みすぎておなかが出たおやじだ。

「佐々木さん。私の名前は、工藤響です。」

私は後悔した。どうして正直に答えてしまったのだ。急に声をかけられて動揺してしまった。まあいいこれで終わりだ。本を読もう。私は違う店に行こうかと考えたがそうはしなかった。私は人見知りだが人は好きだ。本当はもっと話をしたい。すると佐々木小次郎が、

「響おめえ、人見知りだろ。俺が話し方教えてやるよ。」

といってきた。なんだこの男は、すぐに私が人見知りだと断定して話し方を教えてやるとは、いいだろう教えていただこう。私は自分が人見知りということが一瞬でばれてしまい、恥ずかしさで怒りを覚えその後開き直った。

「本当ですか?面白そうですね。お願いします。」

私は少しうざい感じの応答をした。すると男はニヤリとして、「よっしゃ」と店内に響きわたる声で叫び。私が座る席の向かいのソファーに座った。

「まずな、笑顔が大切だ。やってみろ」

私はぎこちない笑顔をした。

「まあまあだな。そして次に相手の目を見るんだ。目を見るのが苦手だったら、相手に気づかれないくらいのより目をしろ。そうすれば目と目が合ってると相手は思うけど、こっちはあってない。」

「確かに」とだけ私が言った。

「次にな、趣味や仕事、最近あった話をしろ。天気の話でもいいがこれは続かないことが多い。だからこの三つの中から選べ。そして自分が話したら、How about you を使え。意味わかるか?」

「あなたはどう?」

「そうだ。そうすれば話がつながるだろ。相手の話を聞くときはリアクション大きくだ。そして必ず質問をしろ。そうすれば話が続くってわけよ。はい5000円」

「へえ。どうしてそんそんなに詳しいの。」

私は5000円といったと同時に出した手を完全に無視して、いま教えてもらったこと質問を必ずすることを実行した。しかし男は答えなかった。そして話が変わった。

「響、ラーメンは好きか」

「もちろん、大好きだよ」

「何ラーメンが好き?」

「ん~醤油も捨てがたいけどやっぱり味噌が好き。」

「そうか!いいよな~味噌ラーメン。どこかいいところあるか?」

「あー新宿駅の近くの八郎商店が好き。」

このまま違う話、違う話とどんどん会話が続いていき、アイスコーヒーの氷は半分くらい溶けてきている。それにしてもこの男、佐々木小次郎は話しやすい。次から次へと会話が出てくる。もう1時間は経過していただろう。体感としては20分ぐらいだった。すると小次郎が

「そろそろ帰るか。おめえこのあと暇か?ラーメン食ってこうや。おごってやるよ。」

私は喜んでついて行った。喫茶店の近くのラーメン屋に入り二人で並んでラーメンを食べた後、解散した。私は、その日の帰り道明日も行こうと思った。

翌日、朝のニュースを見ているとそこには大型詐欺グループのリーダーとして佐々木小次郎が捕まっているシーンが流れていた。男の名前は、桑原容疑者という名前が出ていた。その男は紛れもなく昨日の夕方一緒にラーメンを並んで食べた。佐々木小次郎だった。私はそっとテレビのスイッチを押した。

あの日から約5年がたった。私は桑原から教えてもらった話し方で今では代官山のこじゃれたマンションで高級車を乗り回している。話し方一つで世界が変わった。私は道を間違えて詐欺グループのリーダーになっていた。

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