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The knight of darksoul  作者: ナツミカン
偽りの楽園
2/8

小夜姫の伝承

 ヒトは今日を生きる、“平穏”という名の楽園の中で。暖かい日差しが世界を照らし、穏やかな眠りへと……。

「故に凛鐘国(りんしょうこく)は、現在の神楽を中心とした金糸雀国(かなりあこく)東部に位置していたと言われており、まさに伝承縁の地である訳だが……」

 そこでふと、教科書を片手に教室を巡回していた先生の足が止まる。

 その視線の先には、栗色の髪をした少女が幸せそうに寝息を立てていた。

(れん)、楝ってば!」

 そんな彼女に、後ろの席にいた金色の髪をした少女が数回肩を揺する。そしてようやく少女--萩野楝は、閉じていた眼をそっと開いた。

「ぅん……、何……麗奈……?」

「おはよう萩野。オレの授業で堂々と寝るとは、良い度胸だな」

 そういって先生はにこやかに笑うが、顔の所々に怒りマークが付いていたのは明らかだった。

「すみません……。昨日は遅くまで起きていたのでつい--」

「そうか、夜遅くまで勉強していたのか。なら萩野、今から先生が出す問題に答えなさい。もし正解だったら、今回は見逃してやろう」

 先生は勝ち誇った表情を見せると、寝起きでまだ頭が冴えていない楝に問いかけた。

「では萩野。伝承に登場する小夜姫(さやのひめ)について、簡潔に説明しなさい」

 質問は意外にもあっけないものだった。その程度であれば、幼い子どもでも答えることができる。

「かつて闇の存在から世界を救った凛鐘国の姫、ですよね?」

「確かにその通りだ。ではその小夜姫がいたとされる凛鐘国は、現在のどこに位置している?」

 これは先程先生が授業で教えたばかりの内容だ。おまけに当時、彼女は夢の中だ。当然答えられる訳がない。

 授業中に寝ていた罰として、大恥をかかせる。それが先生の立てていた策略だった。

 しかしそんな先生の思惑とは裏腹に、楝はその質問に考える間もなく即答して見せた。

「凛鐘国が存在していたのは現在のここ神楽を中心とした、金糸雀国東部に存在したと推測されています。ちなみに争いの原因となったのは、当時敵国であった佐和国(さわのくに)が不作による飢餓に見舞われたため。そして争いの末両国は和平を目的に合併し、現在の金糸雀国の基盤となった。といった所でどうでしょうか、先生?」

「……座りなさい」

 完敗を帰した先生は悔しそうな表情を見せながら、教卓へと戻っていく。

 一方再び席に着いた楝に、後ろに座っていた友人、榊麗奈(さかきれいな)が小声で声をかけてきた。

「楝ってば、授業中に寝てるからだよ。答えられたから良いものの……」

「本当、わたしも答えられて正直ホッとしてる」

「はぁ……」

 いつものこととはいえ、何度注意されても治る気配はない。苦笑いを見せる楝に対し、麗奈はただため息をするしかなかった。


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