夏の出会い
※【a plan】(ア プラント)
【チキュウ】の3分の1ほどの超巨大な宇宙船であり、人間たちの第二の【チキュウ】。
人口は100万人ほどで、社会的地位によって生活レベルが異なる。
ハルが生活するレベル5には10万人ほどの人間が生活しており、【a plant】に関する政治、商業、研究はレベル5のエリア内で行われることが多い。
うんざりと過ごしていた学校生活も、ある期間なると長期の休みに入る。
これはずっと昔から人間たちが続けてきた習慣で、夏休みというらしい。
しかし、僕たちは本来四季の概念がない。
何故ならば【a plant】は太陽の周りを公転している星ではないからだ。
けれどご先祖様は余程【チキュウ】が好きだったのだろう、わざわざ【a plant】の中に四季を再現する装置を作っていたのだ。
「あっちぃ〜…。」
あんなに温暖化で悩んでいた種族なのに、何故こんな装置を作りわざわざ暑くするのか。
全くもって理解不明だ。
「ハル〜、あんた学校休みだからってそうやってゴロゴロして!」
「だってあついじゃん…何もやる気起きないよ。」
学校にいれば先生たちが口うるさいが、家にいるとその倍母さんが口うるさい。
これ以上ゴロゴロしてるとさらに小言を言われると思った僕は、自分の部屋に戻ることにした。
廊下を歩いていると、玄関が開く音が聞こえた。
そこには汗をかきながら、手にいっぱいいっぱいの荷物を取った父さんがいた。
「あれ?もう父さん帰ったの?」
「ああ、今日はこの後レベル2に行くからね。」
「このあついのに大変だねぇ〜。」
僕の父さんは研究者で主に【a plant】の酸素を作り出す研究をしている。
植物がうまく育たないこの星で僕たち人間が生きていけるのは、父さんたちがしている研究があってこそだ。
「ハル、お前休み期間のレポートのネタが欲しいって言ってただろ。どうだ?父さんと一緒にレベル2に行くかないか?」
「へ?」
「どうせ何も考えてなかったんだろう?いいじゃないか。将来的に役に立つぞ。」
「えぇ〜…。」
ご先祖様たちとは違い僕たちは16歳で成人する。
それと同時に学校を卒業、就職するのだが、僕はこのまま行ったら父さんと同じ研究職に就くことになっている。
それが当たり前でいい将来であると言うのはわかっているんだけど、やはりいい気持ちはしない。
何もかも決められてしまって、僕の意思がないというか…。
しかしながらレポートを書かなければいけないのは事実だし、行ったことがないレベル2に行ってみたいと言う好奇心もあったので、僕はすぐさま準備をして父さんの調査についていくことにした。
「これが…レベル2?」
「そうだ。」
父さんと一緒にレベル2にきた僕は思わず目を疑ってしまった。
目の前に広がる景色は僕が普段見ていた景色とは全く異なるものだったからだ。
研究で出た廃棄物の山。淀んだ空気。暗く冷え切ったその空間は、とても僕が普段生活している船と同じものと思えなかった。
「レベル2って人が住んでるんだよね…?こんなとこ本当に人が住めるの?」
「ああ、ほら。あそこに人がいるだろう。」
そこには綺麗とは言えない服を着て、何か作業をしている人たちが何人かいた。
みんな痩せ細り屍のように歩く姿は、まさに貧困地を表していて、僕に大きなショックを与えた。
「いいかい?ここにいる人たちはみんな何かしら過去に過ちを犯した者たちの子孫だ。社会的に死んでしまってるんだよ。」