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第二の【チキュウ】

空から注がれる暖かい日差し、眩しいほどに深く輝く緑、そして、どこまでも続く広く果てしない海ー…。

かつて僕らのご先祖様は、そんな【チキュウ】という星に住んでいたらしい。





「きれいー…。ね、ハル!見てみて!」


クラスメイトのミリュウが【チキュウ】のビジョンをみて興奮気味に僕に勧めてきた。


「あーはいはい、そうだね。」


ここは【a plant(ア プラント)】。僕たち人間の今の星。

星と言っても天体とはなんら関係ないのない超巨大な宇宙船なのだが、【a plant】を造ったご先祖様たちはどうしても星と呼びたかったようで、嘘っぱちの星として存在している。


今から300年以上前、ご先祖様が住んでいた【チキュウ】という星は、それはそれは美しい星だったそうだ。

しかし、人間たちの環境破壊により【チキュウ】はどんどん汚れてしまって、最終的には生物が生活できなくなってしまった。

困ったご先祖様たちは【チキュウ】の3分の1ほどの巨大宇宙船を作り、それを【a plant】と名付け自分たちの第二の星としたんだ。


「なによー、全然興味持たないじゃない!」

「興味ないもん」

「興味持ちなさいよ!【チキュウ】についてレポート書かなきゃないのよ?」

「…僕、嫌いなんだよね。【チキュウ】。」


そう、僕は【チキュウ】が好きじゃない。

【チキュウ】というより、【チキュウ】にこだわる大人たちが好きじゃないんだ。

確かに僕たち人間はその美しい星を食いつぶし、人が住めなくなった途端故郷を捨て、宇宙の彼方に逃げてきた種族だ。

だから昔に思いを馳せ、慈しみたい気持ちもわからないわけじゃない。

しかし何故過去の愚かな過ちを、あえて子孫の僕たちに学ばせ嘆かなければいけないのか。

僕にとってはそんな過去のことぶっちゃけどうだっていいし、過去の過ちを美化して【a plant】の事を第二の【チキュウ】と呼び生活しているところを見ると、全くもって反省しているようには思えないのだ。


「もう、そんなだと成績優秀で卒業できないわよ。」

「いいよ、別に。」

「ほんとハルは向上心がないんだから!レベル5からでなきゃなくなったらどうすんのよ!」

「はいはい、全く君は口うるさいなぁ。」


この僕たちが生活しているレベル5という地域は、【a plant】の中でも裕福なものたちが住む場所で、大手の会社や商業施設はみんなこのレベル5に集まっている。

そしてこのレベル5内の学校で成績優秀で卒業すると、いい就職先に推薦され社会的地位が約束されるのだ。


無論、僕がレベル5で生活できているから僕の父さんは社会的地位が高い人だ。

政府の研究者として、僕たちの生活が豊かになるように日々研究に勤しんでいる。

性格も優しく、忙しい仕事の合間にも僕たち家族を大切にしてくれる父さんの事は嫌いじゃない。

けれど、そんな父さんを人間として尊敬しているかと言われると、僕は胸を張ってそうだとは言い切れないんだ。


「なんだかなー……嘘くさいんだよ、全部。」


そう、全部嘘くさいんだ。

僕も父さんも、この星も何もかも。


「なに、ハル。何か言った?」

「…ううん、なんでもない。」


なんだかよくわからないけど、生きてるのに死んでるみたいで、でもなんていっていいかわからなくて、もどかしくて気持ち悪い。

一体誰にこの胸のうちを打ち明けたら、僕は楽になれるんだろう。



ミリョウ?父さん?




それともー、【チキュウ】?





僕は答えを見つけられないまま、目の前にある母星のビジョンを眺めてるだけだった。

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