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5/11

5:強くなりたい






 現代知識を活かして、畑を作り始めたのが10歳の時。

 その成果が現れだしたのが11歳の時だ。


 称号[農耕の革命児]と適性[農耕技術]を授かったのは、手応えを実感するより前の、畑を作りだして半年が経つ頃だった。


 その頃にはスローライフと達観し、この異世界での成り上がりなど、とうに諦めていたので気付かなかった。


 [イマジネーションの世界]


 結果より先に称号を得ている。

 もしかしたら、しっかりとしたイメージを持って、それに沿った成果につながれば、形として形成されるのかもしれない。


 村を出て6時間ほど経過していた。

 辺りは見渡す限りの草原で立派な道などは無く、こんな田舎に旅人がいるはずもない。


 ちょうど良い岩に腰掛けながら、道中むしり取った果実を昼食代わりにかぶりつく。


 いまオレの頭にあるのは、生前アホみたいにやり込んだアクションRPG。


 通常攻撃の他に、スタミナやMPを消費しての[アーツ]が存在する。

 [アーツ]の殆どが連続攻撃となっており、タイミング良く繋げることでヒット回数が増加したりする。


 「あれも一つの型なんじゃないかな・・・・・よいしょ!」


 剣を片手に立ち上がり、ゲームのキャラが行う通常攻撃を真似てみる。


 袈裟斬り

 斬り上げ

 横回転からの振り払い

 腰を落としての突き


 少し可笑しかった。

 こんなゲームの動きを真似て強くなろうとしている自分が、少し恥ずかしかった。

 けど、基礎も無く、知識も無く、師事の当ても無いのであれば、どんなモノにすがってでも、少しでも戦う力を手に入れなければならなかった。


 繰り返し、その動きを練習する。


 生前のクソみたいな体に比べ[アメジ]の体は、若く培った体力に溢れているので、それなりに動けることが楽しかった。


 「ミラージュ・ストライクっ!」

 素早いサイドステップから、跳び込むような後ろ回し蹴り。


 「狼牙斬っ!」

 斬り上げと同時に跳躍し、たたき落とすように斬り下ろす連続技。


 「千本桜っ!」

 素早い連続突きからの強力な斬り上げ攻撃。


 小学生が校庭で、無邪気にハシャぐ気持ちがよく分かる。

 端から見れば、大した動きでは無いはずなのに、そこそこ動く自分の体に強くなったような気分になる。


 昔のカンフー映画のように、時間を忘れてひたすらに剣を振り回していた。




 日も傾きだした頃、ちょうどお目当ての相手が姿を現す。


 ビッグフロッグ

 1mほどありそうな巨大なカエルだ。


 この付近には凶暴な魔物は、ほぼ存在しない。

 15歳のオレがレベル8というのは、年齢の割に高い方なのだ。

 それはこれまで、畑に現れる獣を積極的に撃退してきた成果といえる。

 ちなみに駆け出し冒険者などの平均がレベル10くらいだと聞いていたことがある。


 ではなぜ、戦闘適性の無いオレが、子供ながらに弱小な獣といえども撃退する事が出来たのかというと、ウェルチである。


 初めて戦闘を行ったのが11歳の時。

 自分の畑を荒らす、野犬と戦った。

 腕と足を噛まれ、裂傷し、かなり傷だらけになったが、最後は喉元にナイフを突き刺して絶命させた。


 それはウェルチが回復魔法で完治してくれる確信があるからこそ、出来ることだった。

 そんな戦闘を繰り返すうちに段々と慣れ始めて、今では回復の必要も無く、この程度の魔物なら狩ることが出来る。


 このビッグフロッグは、魔物というだけあってカエルのくせに結構攻撃的だ。

 自ら近付いてきては、3~4mほどの舌を鞭のようにオレへと叩きつける。


 オレはいま、無性に戦いたかった。

 剣術?の真似ごとは、やはり格下の相手に対して行いたいものだ。


 ビックフロッグの舌がオレを襲う。

 ストレート

 振り払い


 だが、動きが大きいので、攻撃の軌道が読みやすく、フェイントの可能性は皆無なので、落ち着いて攻撃をかわす。


 一定距離を保ったまま回避行動を繰り返す。

 繰り返し練習していた通常攻撃のコンボを試すつもりだ。


 「よしっ」


 ストレートに飛んでくる舌に向かって、こちらからも踏み込む。


 飛んでくる舌を袈裟斬りで叩き落とす。

 そのまま間合いへと入り込み、斬り上げでアッパーカットのようにカエルのアゴを打ち抜いた。

 決して素早くはないが、その勢いのままに回転して、横なぎにカエルの体を一閃する。

 そして、落とした腰のバネを利用して、押し出すようにカエルの腹へとボロい剣を突き出した。


 「グゲェッ!!」


 残念ながら、このボロボロの剣ではカエルの皮膚を破ることは出来ず、鈍器としての効果しかない。

 それでもそれなりにダメージは与えている様子で、体勢を崩すカエル。


 「ミラージュ・ストライクゥ!!」


 テンションが上がっていた。

 恥ずかしい位に叫び声をあげ、サイドステップからの押し込むような、飛び込み後ろ回し蹴り。


===ドォス、ドォス、ドォス===


 (っっっ!!きた!コレッ!!)


 ただの跳び蹴りで、攻撃判定が3回。

 ゲームのように、感覚として伝わってくる。


 1mもあるカエルが、普通では考えられないほどに吹き飛び、そして絶命する。




 「はぁ、はぁ、はぁ・・・」


 不思議な感覚だった。


 プレイ中に突然、キャラクターが光り出し[アーツ]を習得すかのように、確実に[ミラージュ・ストライク]を習得したという手応えがあった。


 事実、ただの蹴りに攻撃判定が3回おこなわれ、あそこまで吹き飛び、いくらダメージを受けていたとしても、巨大なカエルが蹴りで絶命するとは到底思えない。



 「はぁ、はぁ・・・ミラージュ・ストライクッ」


 もう一度、アーツを放ってみる。

 

 「っ!!!」


 初動より突然体が引っ張られて、先ほどとは比べ物にならないくらい、俊敏で洗練された、まさにゲームのキャラクターが行っていた技そのものの動きが再現された。


 「これは、、、」


 [アクトアシスト]

 ゲーム中、技が発動すると、基本その行動を止めることは出来ない。

 しかし逆にいうと、発動さえしてしまえば、見えない力でアーツはしっかりと完遂する。


 「つまり・・・」


 ゲームでキャラクターが行っていた技のイメージが、この世界で再現され、適用されたことを意味するのだ。



 「・・・オレも、チートになれるっ!」







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