3:なんとなく知ってた
「アタシ、絶対[聖女]になって、村のみんなを楽させてあげるんだから。もちろんその時はアー君のこともアタシが養ってあげるよ・・・なんちって。あっ、でもアタシのことは気にしないでね。戻って来られるか分からないし・・・寂しくなるけど、行ってきます!頑張ってくるよ♪」
昨晩のことでした。
勇者が訪れてから2年。
15歳になりました。
新しい畑も完成しました。
けど・・・
いっつもこうだ!
オレがやる気を出すと、根底から崩れ落ちる。
生前からこうだ。
しゃっー!ってやる気に満ちてたら、正面からの困難じゃなくて、根底そのものが無くなるんだ。
文化祭が校舎耐震補強工事で中止とか、内定が取れたら倒産とか、初めて彼女が出来そうって思ったら宗教勧誘でしたとか、、、
ぁぁあああああああ・・・・・
もう~ね、呪いね、これは、、、
上げて、落とす!
みたいな。
考えてみれば、無能転生もこれね。
いっっっつも足下すくわれるの。
いや、被害者意識全開で、卑屈になってんのは分かってんよ?
けどね、もうそんなレベルじゃなくて、、、
多すぎるの!
デカすぎるの!
オレのご先祖さまは、お地蔵さんを蹴り飛ばして歩いたのか!ってくらい、不運の連続なの。
ゼッテェ孫の代まで恨まれてるの。
この世界で唯一のオレの幸運。
美少女幼なじみのウェルチ。
15歳になりました。
子供から美少女への成長が見え始めました。
チートはなくてもウェルチと結婚して、田舎でスローライフと夢に描いておりました。
王国の人たちが来ました。
[神託の聖女]候補だと言っていました。
王都の上級学校に行って学ぶのだそうです。
ウェルチさん喜んでました。
オレと目が合って、少し気まずそうな顔をしたけど、すぐに期待値が上回ったみたいです。
知ってたけど再確認。
ウェルチさん、結構ミーハーで流されやすい性格です。
もう浮かれて行く気マンマンです。
別れの言葉も、惜しむ気持ちより微妙にどこか嬉しそうです。
知ってたけど再確認。
これはもう、、、
捨てられちゃいました。
と、いうことで。
「びえええぇぇん!・・・ヒック、ヒックッ、うぁぁああああああ」」
マジ泣きです。
見送りにすら行かずに、田んぼで一人マジ泣きしながら耕しています。
狂気の沙汰です。
一心不乱に耕し続け、一週間は掛かる思っていた作業を、日が暮れる頃には終えていた。
「・・・もう、イヤだ」
沸々と怒りがこみ上げてくる。
「こんなの、もうたくさんだ」
生前より自分から、なにかを掴み取ろうと、必死になったことなどなかった。
「流されるだけの人生は、もうとっくに、一度終えたはずなのに」
夢にまで見た異世界転生。
にも関わらず、能力が無いことを言い訳に、また流される人生を繰り返していた。
「ここは剣と魔法の世界だ」
勇者?
聖女?
なめんじゃねぇ!
オレだって必ず・・・
「・・・ゼッテェー、のし上がってやる」