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2/11

2:羨ましい・・・






 「うわぁぁぁ・・・汚された。村人としての覚悟を弄ばれた!」




 「ねぇ?これ、今どんな状況?」


 田んぼが広がる村外れのあぜ道。


 キラッキラ美少年の勇者様を、マウントポジションでボコボコにしている幼なじみの姿がそこにあった。


 「止めるなウェルチ!オレはこいつをここで殺すんだ!」


 「いい加減にしなさいっ!・・・て、アー君がこんなに取り乱すなんて珍しいわね」


 ゲリオン化していたオレを、ウェルチは容赦無く蹴り倒して、アソパソマソのような顔になった勇者を支え起こす。


 「いば、おべがばぶいんで」


 「ちょっとなに言ってんだか分からないわ。はい、[ヒール]」


 ウェルチは治癒に関しての素養が有り、13歳にしてはそこそこの回復魔法を操ることが出来る。

 こんな田舎で埋もれてはいるが、都会に行きその才能を磨くことが出来れば、かなり優秀な存在として迎えられることだろう。


 先ほどの背伸びオシャレはやめて、普段通りの明るい茶髪をお下げにして、焦げ茶色のエプロンスカートが良く似合っている。

 間違いなく数年後には、誰もが振り返る美少女へと育つことになるだろう。


 腫れた勇者の顔がニョキニョキとひいていき、元の爽やかイケメンが登場する。

 ギャグなの?


 「有り難うございます。美しいお嬢さん。けどボクが悪いんでアメジ君を責めないでやってください」ニカッ☆


 キラッキラの営業スマイルで、ドヤ顔をする勇者リュカエル。


 ベチャ


 「バーロー!ウェルチはオレんのだ!!見境無く営業スマイルかましてんじゃねぇ!もう帰れっ!宿屋帰って、昨夜はお楽しみでしたねって言われてこい!このヤリチン勇者」


 田んぼのドロを投げつけ、見事顔面にヒットさせる。


 「げぼっ、べぇぇ~、アメッチ、そりゃないよぉ」


 「なめんな!オレの唯一の幸運に手を出したら、マジで引きちぎってやっからな」


 「それは怖い。オッケオッケー。そだね、そろそろ日も暮れるし、大人しく帰ることとするよ。ま、アメッチの言うように、部屋に着いたら大人しくはならないんだけどね、ムフフ」


 背を向けて、シャフ度で勝ち誇りながら村へと戻り出す勇者。


 「ぐぅぅぅ、勝てない。そしてお楽しみでしたね、羨ましい・・・」


 「明日朝一で出発して、帰りにはまたここに寄ることになると思うから、その時はもっといっぱい遊ぼうぜ。アメッチ」


 「・・・ああ、リュカさんも迷宮、気をつけてな」


 「ああ、ありがと。またな」


 なんだかんだいっても唯一の元日本人。

 そしてリュカエルさんとは、それを抜きにしてもノリが合うので良い友達になれそうだ。

 そんな友人の後ろ姿を見送りながら、ふと気が付いた。




 「・・・どったの?ウェルチ」


 下を向き、プルップル震えるウェルチがそこに居た。


 「ァーくん・・・さっき、アタシは・・・・・オレのもんだって」


 「えっ?イヤだった?」


 「~~~っ!なんでそんなとこは男前なのよ!もう知らんっ!!」


 ウェルチは走って帰ってしまった。




 ・・・幸せだ。


 勇者みたいにチートは無くても、イケメンでモテモテじゃなくても、ハーレムじゃなくても、オレはやっぱり幸せだ。


 40過ぎのキモヲタお一人様から、あんな可愛い幼なじみとのやり直し人生。

 それだけでも贅沢ってもんだ。

 おしっ!

 明日から新しい畑の試作に取り掛かるぞ。

 現代知識を活かして、手の届く生活基準を上げてやる。



 さっ、オレもそろそろ帰ろっと。







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