気絶と自己紹介
「それで、もう一つの理由が……」
「……ん?……ここは……どこだ?」
俺は気づいたら全く知らない部屋にいた。いまいち何があったか覚えていない。ただはっきり覚えているのが王から話された選ばれた2つの理由だ。正直これが夢で実は今覚めたと思いたいが……知らない部屋なんだよなぁ……。そう考えてると扉の方から、ノックをする音が聞こえてきた。
「は、はい」
恐る恐る返事を返したらすぐに扉は開いた。
「あ、もうお目覚めでしたか。よかったです」
入ってきたのは黒い服の男だった。
「お、俺は、どうしてここに?」
「おや?覚えてないんですか?あなた、王が話し終わった後、気絶されたんですよ?」
あぁ、確かに記憶がないのはそこから先だもんな。うーん、とりあえず帰りたいな。
「あの……帰りたいんですが……」
「え?今からですか?別に構いませんがもう夜中ですよ?」
……まじかよ、てっきり1時間くらい寝てるくらいだと思っていたのだがどれくらい寝てたのだろう。
この考えが読まれたかのように男は「ざっと6時間くらいですかね」と口を開いた。
そこで少し疑問に思ったことがあった。この男は魔法とやらを使えるのか……ということだ。
「使えませんよ、今は王に使えるため少しだけ力をお借りしていますが……」
「使えないんならなぜ俺が考えてることがわかるんだ?」
「さっきから口に出てますから」
……流石に恥ずかしくなって布団に潜ってしまった。顔もちょっと赤くなってるかもしれない。
「私も王に仕えたときはそんな感じですから、ちょっと親近感がありますね。」
意外にも驚いた、こんなに話すことが出来る人が考えてることを口に出してしまうほどになってしまったなんて、ちょっと考えにくいが……。
「……あ、あの」
俺はあることを聞いてないことに気がつき、とっさに聞こうとした。
「ん?どうかしましたか?」
「な、名前……まだ聞いてなかったので……」
そうすると、男はクスッと笑ってこう答えた。
「そういえばそうでしたね。馬車では一言も喋りませんでしたもんね……では自己紹介をしましょう。私は約9年前からここで王に仕えてる星泣カケラです」
そう言いながら手を差し出してきた。
「じ、じゃあ改めまして、夢乃影人です」
こうして俺たちは握手を交わした。