Repeat/Rimit
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「受け入れてくれ!……もう持たん時が来ている!」
常盤の姿になった彼は、ただ回避するだけにとどめながら叫んだ。
「俺にだって!」
そんなことお前の理屈だろうにと、ユリウス。
「自分が無くなっていく恐怖に気づくのか!ただ上から見ている野郎が!」
彼はただ怒りのまま力を行使する。彼もあの時の残滓で前よりも大幅に強いものを扱えるようになっていたが、当然それではかなわない。だけれども、自分勝手だけを押し付けられているかのようで、彼はどこまでも嫌だった。
「だれもかれもが感情で殴る……それが自分だけの特権のように!」
常盤は反撃こそしないけれど、同様に自らの意思をぶん投げた。
「殴られる側はどうだというのだ!それが絶対悪か!」
どうせ効果はないのだと、ユリウスは常盤に近接し、力を短く集めたブレードとして切りかかる。触れただけで岩石は溶断され、人体なら二度とくっつかなくなる使い方。重さなどないゆえに自由な太刀筋で、彼は乱雑に岩盤を解体すると、そう怒った。
「元凶が何を!あれだけ壊しておいて、何を!」
「だれが望んで破壊をするというか」
それを手首から受け止め、常盤も叫ぶ。いつもは適当にしている彼は、珍しくそうしてから蹴りで距離を離し、こっちだっていうことはあるのだと同様にブレードを生成して見せる。
「望まれて生まれることが、どれだけ幸福か知らんだろうに」
「なら何もくれなかったのはなぜだ!」
「あくまでシステム!それに何を期待したのだ!」
剣戟の閃光が地に満ち、例えば弾痕のように目を刺す。どのくらいの間かは知らないけれど、それからすぐに天は静まり返った。
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だれも叶うものはいなかった。ここまでの顛末のほとんどは結局一つの個への衝突に収束し、そのすべては無為に終わってしまった。戦わなければ生き残ることはできなかったのだろうが、もともと生き残るためにある世界ではないのだ――――だから誰もが消え去るしかできることは無かった。
電子の海にあるデータがサーバ一つの死で簡単に消え去ってしまうように、この記録だってすぐに消滅してしまうのだろう。何時まで残ってくれるのかはわからない。遠くではだんだん世界が食われて消えている。まるでダムホールに落ちる水のごとくだ。
穴の終わりも底もあるのだろうけれど、誰が落ちた先を知るだろうかという話。消えていく中に何かを認めたとしても、終末に向けていったんついてしまった加速度は変わらず。同じ川に入ることのできないように、連続性を根こそぎ切り捨てる世界の中、ひどく長く、それは続いた。
この描写だってすぐに全部意味がなくなるだろう。人の姿も土地の情景も最低限にまで描写が落とされて、そして限界だとばかりにぱっと消える。この視界を使わなくて済むように限界高度にいることとしてみても、それでも遠くの世界がなかったことにされるのが、最低限の枠だけでわかってしまった。
最低限だけを用意したサンドボックスゲームのように、現状は縮小が続いている。宇宙にいつかある終わりがあるとするならばこんな風なのだろうと人は気づくだろうか。
恐らく誰もわかるまい。外に出られぬまま、出ぬまま。だれもあの天の光がすべて星でないと、確かめに出たものはいないのだから。
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