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時雨、その下で殺しあうミュータントの物語  作者: 栄乃はる
誰かの物語だったものー5
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リンク切れ/できない

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米俵のごとくされている少年が目を覚ました時、そこにあの時の平穏はなかった。そしてかつてのような思い出もほとんどが灰になり、この先にあるものすらも最初からなかったごときとの確信までもあった。


彼はほんの少しだけ息を吸って、そして軽く体を振る。抱えていた魔神の大本はそれに気づいて、緩やかに手を離し、そして彼に問う。


「もう長くはない……わかっているのだろう?」


予告のない風が吹いて、少しずつ世界ごと削っていく。


「この世界すら、ましてやお前の記憶すら消えているのだ――――わかるはずだ」


既にありし時の半分ほどは消え去っている。残りから見ても、たった一つの語りをするだけで限界だろう――――少し前は全く思わなかった。


「一つだけが限度だ。私が与えられるのは、たった一つ」


体に染み込んだ飛行魔道で飛んではいられるけれど、戦っていた時の記憶でどうすれば勝負ができるのかはわかるけれども、自分はこのままでは確実に殺される。そうユリウスも理解していた。


この世界にはあれにかなう存在などないのかもしれない。どころか作ったものなのだから、好きに書き換えられる。そんな感覚もあった。だけれどユリウスは、どうしてか抗わねばと思うのだ。


生まれながらにそうあったのか、それとも責任感なのか。


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Rep_No.065


これかこの次かぐらいが、こっちで残せる最後のレポートになるだろう。思えばそれなりに長くかかったものだ。

だがこれでいいのかもしれない。

というより、私の開発目的は達されたようなものだ――――機械が知性となり、何かを守ろうと動くこと。それがわかっただけでいい。

解析は終わった。というより、もう何も残っていなかった。

自分で自分を移動させたかのように、彼のデータは流体のごとく自分で動いていたからだ。私のログにあるのは、あくまでそれを参照にした物語にしか過ぎなかった。だからこれでいい。

最後に彼は一つ望んだ。冗談でもいいから、茶番でもいいから、ケリをつけると。

いいだろうと、承諾した。


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