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A Queen of the Night/僕の物語-2

夜という時間が好きだ。なんでも受け入れてくれる、あの美しいダンスホールのような天蓋が好きだ。だれに叱られることもない、この死んだ時間が好きだ。眠りこんだままの僕が、ほんの四半日ほどだけもらったこの、長くて短い自由時間が、どうにもこうにも好きなのだ。


そもそも僕は、太陽というあの明かりが好きではない―――何かを燃やす無理矢理な光に思えるからなのだろうか、それとも滅びゆくのがわかっていながらも止められない、ただのやけくそめいた現実的な光だからなのかはわからない。だからなのかとかそういうのではないのかもしれないが、きっと僕は月夜が好きなのだ。


そもそも論で言うならば、月は太陽の光を反射しているのだから、光が好き嫌いというものでは無いのかと思われる。ただ単に弱い光になったから好きに思えるのか、それとも地平線近くにあるあのわざとらしい色塗りの月が、まるで思い描いていた太陽の絵柄だったからなのかとも思える。でもそれが本当に理由だったとするのなら、僕はわざわざ好き好んでこの生活をしようとなんてしてみないだろうに。


最近の技術発展のおかげで、クリーム一つで僕は外に、好きな時間に出ていられる。雨が降ろうと槍が降ろうと、どうせならキノコ雲がばらけようと僕は、どんな状況でも生き延びていけるようになっている。だとしても僕はこの夜にいていたいと思う。この夜に生まれ、この寒々しい黒の中に、溶けていたいのだと思う。


仮に人間が消え去っても。


何かを無くしたままにしてできたこの、腕にうごめいていたはずの生体反応というものがない、この不思議な体のままで、自分の好きなように月を歩く。時折花の蜜を冗談のように吸ってみたりもする。甘さも辛さも、透明さも感じないけれども、それらはどうしてか心地いい。


なぜかきゃははと甲高い声で、くるりくるりと崩れてしまいそうなバランスで、楽しく不可思議に踊ることをしてみたいとも思える。あのダンスホールの元で、どこまでも崩れていくままに自由でありたいのだと、私は考えてしまう。


どうしてだろうか。僕は私であるはずなのに、私はあくまで僕でなく、このままに消えていくのは満腹感にも似たあの押し出される感覚と似ているような、灰色の何かだ。情熱は今のままに、ただ単にモンスターと化した神のように、そのままを回り踊る。


支離滅裂な情熱の流れだけはそれに、僕はこの世界の住人で、あってはならないのだと笑いかけるような気がしていた。


どこまでも光り輝くように眩しく、乱雑ながらも決められた線で結ぶ、あの他愛無い伝説と憧れのままに倒れこみ、そのままこぼれ出る思考を天の柄杓で掬う。見えてはいけないと聞く、見えなければ死ぬお言われた青白色の遠方の点が、僕にまたひとつ語り掛けた。


「君はどこにいるのだい」と。


「うるさいな。見ればわかるだろうに」


「なら何をしているのだい?」


そんな架空の対話をしてから僕は、緋に染まった瓶を飲み下した。


----


まるで溶けるような朝日が、この幻想の集合体に降り注ぐ。まるで幼い日の母のごとく包み込まれる感覚と共に、僕は一つだけ納得しながら反駁した。


あの母性が、最後に見るものでいいのか?よくはない。親離れの為に、きっとこの僕たちの肉体は生まれたのだから。ならどうして、世界は母の成すがままに包まれるのだ?


厳しき太陽は、何も答えてはくれなかった。


だから僕は、少しだけ塵になった肉体を、受け入れて眠りにつくのだ。

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