古巣キック/ハイウェイ
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「ところでさ。どこでつかまれたんだと思う?」
出発から十三分二十秒。ちょうど半分の道のりを超えたところであった。クリスがバックミラーを地らを眺めて言う。
「……ネットの発信元かそれとも、あんたがしてた根回しだのの時か。そんぐらいじゃないの?」
少しずつ増える黒塗りのエレカを危うみながら、クリスはRP-22のある腿ホルスターの感触を確かめた。
「それなら、私たちが出てから追手が来るはずよ。どうして今来てるのさ?」
「知らないよそんなの。ともかく落としだのしないとまずいでしょ」
片手を離し、ビッタはスリーブガンを構える。威力は豆鉄砲だが、それでもいくらかないよりはましになるだろう。それにメインをこの状態では取り出せないからな……。
慣れない二輪車の上、彼女は練習とガードに指をかけながら適当に狙いをつける。そしてあからさまな装甲付きな黒塗りエレカのタイヤに向けて、一発を命中させた。
運転していたのが三下だったからか、それはスキール音を上げてガードレールに衝突する。まぐれの命中に驚きながらビッタは99ショートもどきの銃の狙いを、先の命中を契機として攻撃開始したストレイドたちにつけるのであった。
「ナイスまぐれ」
「うっさい。当てられたら承知しないからね」
粗製のコピーではあるが、それでも十分に精度残したそれで、彼女はぱんぱんとタイヤか装甲か乗員かに命中させる。3発の時点でははずれは無し。マガジン半分の時点だと1発除けば全て敵には命中しているという状態であった―――ただし無力化や撃退はできていないが。
残り8発のマガジンを一度確認し、ビッタは右に曲がるクリスの体にバランスを預ける。それを崩そうと狙うアサルトライフルの光を左右に振って躱し、ギリギリのグリップで二人はコーナー外側に耐え忍んだ。
ばらばらと破片が散り、跳弾の音と波がシルクリートに浮かぶ。
「次!ストレート抜けたら左だからね!」
「わかってる!その次どっち!?」
怒号がメットに飛ぶ。
「ライン繋げて開けるから!タグレースの回線開けて!」
思考接続式のタッグを見せ、99ショートを牽制の乱射。そして使い切ったマガジンを腿のホルスターにはめて取り出し、マガジンを装填しようとしたところで急な体勢変更に気を取られ、それを道路に堕として踏み砕かれてしまった。
「開けたわよ!」
「開けるのはいいけど!雑いの昔っからなんとかしなさいな!」
前のクリスの肩をバンバン叩くビッタに向け、振り落とそうと見えるくらいに乱雑な回避をしながらクリスは答えた。
「うっさい!あんたは後ろ見ろ!」
車体を傾けての強引なブレーキからの再加速をしつつ、応戦で弾をいくらか当て、ワンマガジン使い切って彼女は答えた。
「私のクソエイムで当たるわけないでしょうが!」
「じゃあなんでそんなレアもん持ってきた!」
「コピーが安かったのよクッソ腹立つほどにね!」
「じゃあポリ公の私に使わせればよかったじゃないの!」
すり抜けつつタグレースの回線を何とか開け、接続確認しつつクリスは左に曲がる。
「手放し運転すんなって免許取ってったのどこの誰よォ!」
「知るかァ!」
九十度近いカーブ軌道によって、深くまで車体が沈んで倒れた。平滑に整えられたシルクリートの路面がもみじおろし直前まで彼女らの膝に近づく。そこに数発の弾丸が命中し、ポラリスのホイルスペースにある彼女らの荷物を撃ち抜いて抜けた。
なかから液体の何かが漏れ出し、全てシルクリートに染み込まれて吸収される。
衝撃で何があったのか理解したクリスは、立て直すと同時にビッタから99ショートを奪い取り射手の肩を撃ち抜いてアクセルを吹かした。
「……寄りにもよって、さっき直したばっかのとこを………」
あきらめと怒気が混じった声。
「逃げるわよ!さっさとネットなりで罠かけなさい!」
「……バイク程度で撃つなよ………」
「レアもののパーツわっざわざ取り寄せたのよ!右専用のスライドドア!ちょうど入れ替えたとこにブレットぶち込むなんてクズ許すもんですかい!」
回線経由で路上のタイヤカッターを上げ、ビッタはバカじゃねえのという風に吐いた。
「………お前もともとポリスだろ……そんなのが簡単に発砲するんじゃねえよって……」
「もうやめたわよあんなクソ組織!」
「さっきといってること違うじゃねえか!」
「うっさい!振り落とすわよ!」
「ああもう雑いな!ついてってやっから振るなバイクを!」
オービスの全てを一時スリープにし、爆走も激走もすべてを許すガバガバ警備として逃げる二人。長年の相棒じみた掛け合いを繰り返しながら、彼女らはまた、次の居場所へと逃げ込む。
見ているはずのカメラのレンズも、今は全てを停止していた。
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