エンドロールにはまだほど遠い
前回までのあらすじ
情報を探るうちに、ストレイドはアンダーシティそのものであることを知るアストラたち。刑務所を脱獄し、追加されていくやってもいない罪を笑いながら、彼らはケルス・シティ市長がミュータントであることを知ってしまう。
ついにポリスに指名手配されてしまい、ガードが直で出撃してもよいというとてつもない指名手配犯にされてしまい、一時的な退避の為にセカンドレイヤーへと移動するのだったが、その途中でアストラたちは不可思議な睡眠欲に体を乗っ取られる。
これはもしかするとミュータント?彼がそう思うと、外から一人人間が入ってくるのだ。
「はじめまして。そしておやすみなさい」
アストラ達4人はそれを聞くと、意識を失うのだった。
----
大爆発!!!!!!!!!!!!!!
気が狂ったような大爆発!!!!!!ケルス・シティ消滅!!!!!恋人がいたような気がしたけれどそれ全部夢だったぜ!ハッハッハ!俺はなんか普通の人間じゃい!
わぁい!恋人とけっこんすることになった!レイちゃんって言うらしい!なんかかわいい!わぁい!
同僚がいっぱいだ!クソほどなんか幸せそうだ!どばば!がはは!
そりゃあそうだ!幼稚園の頃からの幼馴染で、一時はちょっと中二病こじらせて自分は実はミュータントで悪い世界と戦っているなんていう妄想に取りつかれていたんだから!にしてもちょっとやりすぎな妄想だなぁ!はっはっは!
おっと!時計見たらそろそろ時間じゃないか!結婚式に急がねば!
だだー!カランカラン!
「服着替えるの!さっさと!」
なんかいつも以上におめかしした警察女がアストラに服を持ってる!お前そういう顔出来たのかよ!というかそういう手前もハッカーとの結婚おめでとうな!はは!
「似合ってる!」
「それでは誓いのキスを」
わーきゃーわーきゃ!情景なんてすっ飛ばしちまえ!めんどくさいものは描写なんていらねえんだよ!うおおおおおおお!楽しいなぁ!こうやってなんか数年間くらい積み上げたものを台無しにして見るのは楽しいなぁ!
やっぱりこうやって見るのは一番だ!これで84人目!これで俺の組織内での立場も向上するし、アンテルニアのつながりも分かればストレイドの為になる!万歳万歳!
さっさとっさあ死ね!夢におぼれて死ね!お前はただの人間だ!結婚は幸せだ!2+2はいくらか言ってみろ!これがお前に与えられたロールなんだよ!分かったら俺の筋書きに沿って動きやがれ!俺こそが神だ!世界なんて簡単に書き換えられるんだよ!
----
「そんなわけあるか」
アストラは両の目をこじ開けた。夢ごときに支配されてたまるものか。与えられた幸せごときに、勝ち取った降伏と痛みを消されてなるものか。
彼はそのまま、ニューロネットを引き抜いて目の前のミュータントに殴りかかる。強化ガラスを何枚だって割れるような全力の右ストレート。男の頭蓋骨は陥没を通り越して粉々に砕け散り、白い脳細胞が雪のようだ。
「何人そうして夢に沈めた。何人そうして人を壊した!」
いつもはある程度落ち着ける彼は、珍しく感情を拳に乗せていた。
「ふざけるな……!貴様程度が許されているから!その程度が人を動かすから!」
もう既に死んでいる肉体に、ナイフを作り出して突き刺していく。普段なら血の匂いを気にしてこんなことを目の前でしないのだが、今の彼にはどうでもいいのだ。
「ふざけるな……!ふざけるな!ふざけるな…………!」
生き返らせてもう一遍殺したい。死んだからと言って許してたまるか。生きることが贖罪だが死んだのならばいくらでも破壊されることが償いだ。滅びろ。
滅びろ!滅びろ!滅びろ!
腕をちぎってそれで男を殴ろうとしたところで、アストラは彼の身体に爆弾が仕掛けられていることに気づいた。やられた時の保険、情報漏洩への対策。引き抜けば余計危ないと感じ、彼は3人を背中にワイヤーで括り付け、レールへと飛び降りる。
爆風を流すために壁を作り、着地してブレーキしたところでカプセルが爆発四散する。気づかなければ死んでいるところとつぶやいたところで、ビッタ・ベリスが目を覚ました。
「血まみれ…………」
「……すまんな」
アストラはその時になって、やっと自分の内心を反省した。だが同時に、この復讐は間違いでないことも理解する。これを許しているのが市民の代表ならば、市民として正す必要がある。それ以上に被害者として、怒りを語る理由もある。
彼はレイとクリスを抱えたまま、レールを歩き出した。
「いい。ところで、ここから歩くの?」
「ああ。何も来ないことを祈りながらな」
「途中で休ませてね」
「それはこいつらが起きるか次第だ」
----




