表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
134/174

遅すぎた埋葬/春日野の

----


超小型戦術核は、ケルスの端の端だけを吹きとばした。表向きにはニトロ搭載のトラックの衝突事故、なんて風に書き換えられるのだろう――――それでいくらの私が消えたのだろうか。


一糸まとわぬ男は風のままにそれを見下ろし、放射線など無為に帰すだろうとビルから飛び降りた。砕けるべき骨もなく、ただ肉人形を動かすだけの体で、たたきつけられて広がる人形のような着地をして彼は蘇る。


アースチンだった人間だけれども、もうもともとの彼と同一の部分などない。細胞のすべてはミュータントとして適合しており、人間らしさをつかさどるはずの大脳全ては焼けてしまった。


ナノマシンに入れられた遺伝コードめいた記憶情報の残りだけが、今の彼を彼足らしめているのだ――――だからどこかで、彼は天を見た。


----


少し前のことは、何とか覚えている。


ガタンガタンと運ばれていた、まるで列車のような暗黒の中。


たぶん母親の胎内に似ていたから、不思議と安心できたのだろう――――実際は死体袋で、棺桶に押し込まれて。炎の中で終わっていたはずだった。けれど何の因果かこの体は目覚めてしまって、まるで昼寝しすぎたときのようにまどろんだままに走り出した。


ほんとうにすっきりしていて、太陽が燃える様に見えた。


自分が死んでいると理解できた。


名前を忘れている中で、自分は確立した一人だとわかった――――そう、だからすべてを消す早暁を染み入ったのだ。


名すら薄れゆく中で、彼は一つの葬列を見つけた。それはもちろん自分の葬列で、中にあるのは自分の肉。どこかで分岐する前の私だ。


だから彼は、自分を食って中のシーツを体に巻いた。そして走り出した。もう二度と振り返るまい。


不届きものへと叩き込まれる銃弾に脳をえぐられながら、彼は今までのすべてを鉛の霧と消して消えた。だから彼の埋葬は、しばらくの間訪れない。


----

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ