遅すぎた埋葬/春日野の
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超小型戦術核は、ケルスの端の端だけを吹きとばした。表向きにはニトロ搭載のトラックの衝突事故、なんて風に書き換えられるのだろう――――それでいくらの私が消えたのだろうか。
一糸まとわぬ男は風のままにそれを見下ろし、放射線など無為に帰すだろうとビルから飛び降りた。砕けるべき骨もなく、ただ肉人形を動かすだけの体で、たたきつけられて広がる人形のような着地をして彼は蘇る。
アースチンだった人間だけれども、もうもともとの彼と同一の部分などない。細胞のすべてはミュータントとして適合しており、人間らしさをつかさどるはずの大脳全ては焼けてしまった。
ナノマシンに入れられた遺伝コードめいた記憶情報の残りだけが、今の彼を彼足らしめているのだ――――だからどこかで、彼は天を見た。
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少し前のことは、何とか覚えている。
ガタンガタンと運ばれていた、まるで列車のような暗黒の中。
たぶん母親の胎内に似ていたから、不思議と安心できたのだろう――――実際は死体袋で、棺桶に押し込まれて。炎の中で終わっていたはずだった。けれど何の因果かこの体は目覚めてしまって、まるで昼寝しすぎたときのようにまどろんだままに走り出した。
ほんとうにすっきりしていて、太陽が燃える様に見えた。
自分が死んでいると理解できた。
名前を忘れている中で、自分は確立した一人だとわかった――――そう、だからすべてを消す早暁を染み入ったのだ。
名すら薄れゆく中で、彼は一つの葬列を見つけた。それはもちろん自分の葬列で、中にあるのは自分の肉。どこかで分岐する前の私だ。
だから彼は、自分を食って中のシーツを体に巻いた。そして走り出した。もう二度と振り返るまい。
不届きものへと叩き込まれる銃弾に脳をえぐられながら、彼は今までのすべてを鉛の霧と消して消えた。だから彼の埋葬は、しばらくの間訪れない。
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