表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/174

フラットアース/冗談の槍


「ハァーイギャングさーん!唐突だけど、お前らは俺の支配下になってもらう」


カチコミかと思って銃を抜いた彼らに、冗談めいてアストラは煽った。一体どこから現れたのだとでも恐ろしいのか、彼らは先に放り投げた売人にも彼らは銃を向け、人質にでもしようかとうろたえる。


けれどその状況でアストラは、両手を上げた状態でバカにするのだ。


「もしくは、あんたさんのお上について洗いざらいしゃべってもらうかだ。いい取引だろう?」


「それがどうした?…………有利取っているのはこっちだ」


ギャングの一人はひるまず、奪われぬように銃を突き付けて震えた。まるで普通の企業かのように並べられたデスクが次々と倒れ、即席の盾にされる。明らかに狙っている者以外はそれに隠れ、一陣目が倒れた時の為にしているのだろうと見えた。


普段は鉄砲玉をしているらしい青年が、勇敢に近づいて額に銃を突きつける。


「そっちこそ、全部が全部吐いてもらう…………覚悟しろよ」


彼はそのまま抑え込もうと、2人ほど呼んだ。彼らは後ろから近づき、左右の腕をつかみにかかる。両人とも筋肉質で、一般人なら抜け出すことは不可能だろう――――しかし、陣貝のミュータントならば。


それでも幾分かはかかるので、頭を撃たれればそのときはその時なのだがと彼は、ちょうど二人が腕をつかもうとする一瞬前に手を動かし、反応の遅れた鉄砲玉の拳銃を、弾倉を軸に横回転して綺麗に握り、そのまま脇二人の頭を撃ちぬく。


「では決裂だ」


彼は驚きで動けない青年の頭を捕まえ、銃口を突きつけ返して宣言する。


「とまあ、こういうことだ。さっさと吐くのが楽だとだけは、言っておこう」


けれどそんなことでひるむようならば、力で解決するマフィアはしていない――――もちろん鉄砲玉なのだから、帰ってくることなど想定していない。テーブルに隠れていた数人はサブマシンガンを取り出し、弾丸をばらまいて青年をハチの巣にした。


一瞬で伏せてかわし、倒れた青年を蹴り飛ばしてアストラはテーブルに近づき、跳ね上げて中の3人を殴って昏倒させた。


「さて、これでも交渉をしてもらえないというかね?」


肉の盾を握って彼は冗談めかした。もはやこれまでか。そう見て取ったマフィアのリーダーらしき男は手を上げ、止まれと周りに示して銃をおろした。彼は仕方なくといった口ぶりで『降参だ』と砕ける。そのまま客人扱いで茶だのを出して、アストラを迎えることとした。


そうして適当に選んだ奴の上にいたというだけで二人を殺されたマフィアは、その圧倒的な力の差にただ納得して話を聞いた。力で商売を成り立たせているのだから、強いものには逆らってはいけないと精神で理解している。だからかなり話は早かった。


「取引先、ですか…………」


リーダーは自分のことを、ガールザナルドと名乗った。自分のところはほんの小さな麻薬取引の問屋をしていると彼はいい、あの売人は取引相手だと言う――――あくまでここは問屋ルートを確立しているだけの場所らしい。


結局意味のない行動だが、それは織り込み済みだ。アストラは取引の書類を物理コピーしてもらい、茶を飲み干して事務所を立った。


「次来るときはましな情報をつかめよ」


そう言い放ってみたが、同じことをほかの事務所にもしてみるのだ、もう一度があるかは怪しい。


していることはほとんどあの外道と同じなのがいくらか腹立たしい気がするが、それはそれで、どうせ悪人なんだからと彼は一度置き捨てた。今は生きるためのことだから仕方ない。


ちょっとの間マナーモードにしていたタッグには、別の売人のノーティスが入っていた。今度は結晶体めいた物を扱うらしく、純度が高くよくキマると書いてある――――精製物は値段が高いと聞くので、今度はもっといい相手になるだろうか。


彼は手に入れたばかりのコピーを封筒に包み、配送サービスを使って自宅のロックポストに、内容証明付きで送り込んだ。開けられるまでも管理されているから、ごまかされねば情報がわかるはず。


「まあ、最初はこんなもんだ。次よ次よとこなせばなんとかなるだろうな」


そうして彼はエレカに乗り込んで、いつものように目的地をセットする。今度はちょうど、ヴェンティセッテ・ステーションの前だった。


----


そうして彼が破壊活動を始めてついに、5件目となった。麻薬取引にもある程度のラインがあることが少しずつ見えてきて、おそらく3~4は製造元があるのだろう。そしてそれと直でつながっていられるような高いレベルのには強き用心棒があり、それらは人間ではないらしい――――ミュータントを組織的に運用する。つまりそれができるということは。


急に勢力を拡大しているというヤクザがあるとアストラは聞いて、そこにミュータントがあると考えていた。この非合法の世界も基本は表の世界と同じで、担保しているものが金と技術ではなく、力と技術であるだけだ――――そして力があれば無理くりに技術を身に着けることもできる。つまりはそういうことなのだ。


ミュータント一人いれば、それなりの抑止力にできる。まだ若い力しか持たない自分だったが、それでも何とかできるくらいには力の差があったのだ。


そのおかげで、ジャンク屋連合は安心して資金集めに走ることができた。それの再現というわけだろう。


彼はノイン・ステーションで降り、この前手に入れたレポートから見つけた敵対組織の情報をもとに住所を割り出す。白い4階建てほどのビルをまるまる借り切って運営しているそれは、多量にヤクを抱え売人を斡旋するらしい。


さて、鬼が出るか蛇が出るか。


アストラは何もないような風をして、堂々と正面から引っこ抜いた標識を放り投げた。


お返しとばかりに真正面に帰ってくる『止まれ』の文字。それを受け止めて彼は、ついに引き当てた蛇に立ち向かうのだ。


「どこの差し金だ…………ミュータントだろう?貴様も」


黒のスーツした白髪の男はそう、渋い声で問うた。見かけからして20代だが、ミュータントの肉体年齢はある程度で止まる。あてにはならない。


「どこの…………あんたのお上さんとでも言おうか?」


アストラはそういうが、もちろん嘘だ。上がどこなのかなんて知らないし、だから探っている。ぶんぶんと標識を大降りに回し、彼は突きつけて続けた。


「貴方に死を運んできたのさ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ