ハーフハート・アイ/アンダーレイヤー
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アリアのセキュリティナンバーは『RR-0032』。つまり入るときステーションの0~32番までを使っていいという権限であり、番号が増えるにしたがってレイヤー内で出来ることが増えるという仕組みになっている。
カードの等級によって、セカンドレイヤーに滞在できる時間も変わり、ビジターとしては、この権限なら60時間まで許可されるのだ――――それを超えればどんな人間でも殺していいことになっている。この設定は活動可能範囲を狭めるためのものであり、低番号者には深部に行かせないためのものだ。
15番からはアウトな銃砲店にも楽々アクセスできるし、24以上になればストレイドの近くにまで潜り込める――――そして30に近づけば近づくほど、企業直営のが蔓延ってくるのだ。
彼女が下りたのは名前からわかる通り、27番。目的はとある工房で、そこは企業から卸された品をほとんどすべて取り扱える、ストレイド周りでは有名な専門店だ。
アリアはいつものようにパスをかざして戸を開けて、マスターに急ぎの仕事だと二挺を取り出した。
「久しぶり……半年ぶりか。どうしたんだい?」
定期メンテナンスはあと15日後だろうと、彼は続ける。その前に持ってきたケースを置いて開け、何がしたいかは言わんでもとそれを見せた。
「…………ああ、急な仕事か」
彼はいつまでだいと聞いて、アリアは明日までに終わらせてほしいと札束を出す。しかしどれだけ急いでも一日では片方が限界だとして、どっちを使うかと聞いた。
他にカウンターを任せて奥へ引き込み、アールグレイとミルクを出して彼は二挺を確認した。
「まあ錆は無いし、部品だってガタはない…………精度だって問題はないだろうけど、それでも?」
「久方ぶりに撃つから、ね。するんだったらできるだけをしたいの」
店主は拳銃の中に弾が無いのを確認してから撃針を起こし、トリガーシアなどの噛み合いを確認して人差し指を引く。その次にショットガンも同様をして、それぞれの音に耳を澄ませた。
「…………見た感じ、どっちがかかる?」
型式は知っているので、2、3度のドライファイアで調子を理解した彼は、NF22を手に取って答える。
「こっちの状況が悪い…………前ガンガンに撃った後、オーバーホールしなかったろう?メンテはきっちりしてるからよかったが、噛み合わせだの油だの、かたまりかけてるぞ」
「お見通しのようで」
「こっちはまぁ、バラさないとわからないって所か…………まあこっちよりかは楽なのは確かだ」
そして出された金を受け取って、彼は遅くとも明日の午後八時までには終わらせて見せると意気込んだ。
「ありがとう。助かるわ」
そう言ってアリアはいつも持ってきているチョコチップクッキーを手渡して、工房を後にする。次は久方ぶりのバイクだし、体慣らしかな。
26番に予約してあったVRサーキットへと足を向け、彼女は灰色の夜を通り抜けた。
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