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ハーフハート・アイ/夜の仕事

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どうやら相手が待つ場所は、完全フリーのゼロゼロ物件――――借りるのも逃げるのも容易で、タッグとクレジットだけで逃げ込める、捨ての住所だった。


周囲に引きずり込めそうな裏通りも暗がりも、隠蔽しやすい場所も何もない。四方を大通りと建物に囲まれていて、どっちを潰されても逃げられるように、二か所に窓のある角部屋を使っているようだ――――階段近くの部屋らしいから、爆破だの火事だのでも衝撃は上に逃げるし脱出できる。


かなり警戒しているようで、物件の情報には『防音設備』だの『脱出スライド』だの、安全をうたう文句が誇らしげに並んでいた。


だったらどうやってもみ消そうか…………。あまり殺しには手を出したくないのだが、やっぱりそれしかないのだものな。どこで証拠を消そうか。一番近いのは――――。


小さく折りたたんだ死体袋をブリーフケースに、彼女は2階の指定された部屋の戸を叩いた。中から眼鏡をかけた神経質そうな男が、ホルスターに銃を入れたまま出てきて、「お前が取次か?」と侮った。


「大方慌てて、上に漏らさないでくださいとでもしに来たんだろう…………止めてほしいなら、何がいるかはわかるよな?」


彼はアリアを下っ端の一人とみて、自分が上なのだと位置づけようとした。そして持っているケースに何があるのだと聞き、答えない彼女に声を荒らげてみた。


腹が立ったので、彼女はナイフのようなストレートを腹に入れ、くの字に折って持ち上げる。


「残念ですが、交渉は決裂ということで」


そして彼女は健など無視して袋に折りこみ、乗ってきたエレカに無造作に投げる。そしてそのまま、傘下のゴミ焼却場へと飛び込んで、いつものをするから火力を上げてくれと、管理官に頼んだ。


機械の安静な運転に気つけなどされず、激痛に気を失ったままの男をアリアは引きずり、いつもの拷問部屋に置いて目が覚めるまで体をコンクリートにすり下ろさせる。だが10分ほどガリガリしても目を覚まさないので、面倒だからと彼女は左の前腕を真っ二つにした。


跳ね起きて男はあたりを見回す。俺に何が?そう思っている彼の前にある、折れた腕と自分をパンチ一発で沈めた女の姿だけで理解し、男は静かに命乞いをした。


「頼む……俺の働いてるとこはマフィアにはつながりがあるんだ…………」


そう嘘つくジャーナリストもどきの指を一本折って、アリアは冷たく彼を床に投げた。


「そう。でも何かできるわけじゃないんでしょ?」


マフィアにつながりがあるも何も、こっちだってマフィアみたいなもののわけで。それに仲間内でも、こういうやつは見たことがない。信じられないようなアリアに男はベラベラと武勇伝を語って見せ、そしてだから殺さないでくれと自身深くする。


「いいや!俺は顔が効く……だからなんだってできる」


その無駄な努力に半ば呆れ、ため息をついて彼女は言った。


「例えば?」


男は自身気に顔をキメる。


「アンタを綺麗な体にすることだって、できる」


私を場末にいるヤクザ崩れだとでも思っているのだろう。だから安全な立場に戻してあげられると、自分の力を示して見せている。――――だがそいつが思うほどに、私らの世界は甘くないのだ。


その言葉にほんの少し惹かれたが、ストレイドに顔が効くハズなどないと思いなおし、アリアはさらに指を2本砕いた。痛みで叫ぶ男に『何か言うことはあるか』とほほ笑み、彼女は引きずって焼却炉の戸を開ける。2トンはあるだろうそれが簡単に引き上げられたことに男は驚き、そして静かに涙をこぼした。


「待って……待ってくれ!俺は本当に…………!」


それを無視して、顔面を軽くあぶってみた。早くあきらめてくれと思いながら10分ほど、肉に焦げ目が入り始めるくらいにしてみると、どうやら交渉の余地はないと恐れる。そしてさらに5分、先より距離を詰めて火にくべるとどうやら彼はどこかが壊れてしまったようで。


火花に触れてびくりとはするけれども、全体としてはテレビを眺めている子供のように、無邪気に泣くだけで動かない。恐怖の中に幼くなってしまっていた――――逝ったか。これでは仕方ないと、アリアは彼の足を折れるほどにつかみ放り投げて、そのまま戸から手を離した。


「怨むなら自分を怨みな。私はこれしか生き方をしらないんだから」


彼女は腕に巻き付いていた彼のロケットを、使えそうだと写真を引き抜いて捨てた。そしてタッグのノーティスを送って、乗ってきたエレカに腰を落ち着ける。


今日もこれで、平和になってくれるだろうか。いや、そんなわけはないだろう。


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