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Dark Brides −斯くて魔王は再誕せり−  作者: 入観ねいと
第3章 森の精霊と獄㷔の悪魔
18/100

#18

18


「ウォォオォア!」


獣人族の奥義《超身煌化》は、体内で魔力を高速循環させ、肉体を無理矢理に強化する離れ業である。発動時には過剰行使される魔力の光が体表に模様のように浮き出るのが特徴である。とてつもなく強力な技ではあるが、その代償として肉体への負担が莫大であり、長時間運用する事ができない。


だがそれは普通の肉体なら、の話だ。

シグは肉体が上げる悲鳴に歯を食い縛り、破壊と再生を繰り返しながら発動を続け、ガルドアへ迫る。


「なるほど。それを使えば確かに、ワシの動きにもついてこれよう」


常人ならば消えたように見えるシグの動きをしっかりと目で追いながらガルドアが呟く。獣人族の奥義を持ってして、ようやく魔族に近づける。それほど種族の基本性能に差があるのだ。


ガルドアの背後から影を伸ばし突き立てる。が、先程と同じように届かない。見えない壁に阻まれるように、影は消滅する。


「だが、貴様の攻撃はワシには通じぬぞ?」


さあ、どうする? とばかりに腕を組み、首だけを回してこちらを見下すガルドア。

ならばとばかりに、シグは武器を取り出す。


「《魔装顕現》!」


影より生み出したるはノイノラから奪った魔族の武器《闇・双蛇の絞刃》。同じ魔族ならば通じるはず。


「ほう、魔装まで。同胞までも喰らい奪っておったか。面白い、やってみろ」


振り向き、無防備に両手を広げる。試してみろ、と。

その挑発に乗り、ガルドアの胸へと身体強化と合わせた高速の突きを放つ。


「‥‥‥そん、な」


馬鹿な、と。

勢いよく突き立てた剣はガルドアに触れた途端溶け、手元に残ったのは柄のみ。魔族の強力な武器を持ってしてもガルドアに傷一つ付けられない、その事実がシグを驚愕させた。


「‥‥‥やはり人間ではこの程度か」


心底つまらなさそうに溜息をつくと、軽く腕を振るう。それだけで呆然としていたシグは吹き飛ばされた。


「燃えよ」


掌に炎球を生み出し、まだ空中に浮いたままのシグへと投げ付ける。シグはそれを飲み込もうと影で覆うが、弾かれるように炎球は触れた途端に爆発。更なる衝撃を伴ってシグの身体を叩きつけた。


「ぐッーーー」

「不思議か、小僧」


起き上がる間も無くガルドアの巨大な右手に身体全体を握られる。何という膂力か、身動き一つ取れず持ち上げられた。


「貴様の奪った《闇の刻印》。影で飲み込み喰らった相手や武器を己が物とする《闇の支配》は確かに強大な力だ。だがな、喰えるのは自分よりも力の劣るモノに限る。人間の身である貴様には分不相応。全く使いこなせておらん」


他にも《闇の婚約》があるが、まあそれは置いておこう、とガルドアがボソッと呟き、握る手に力を込める。


「グアッ‥‥‥!」

「さて、遊びは終わりだ。今すぐにその力を返してもらおう。不死者の力を持つ貴様を殺すことが叶わぬ以上、自らの意思で力を手放してもらう他ないからな」


ニヤリと笑うと、ガルドアは手の中に炎を、無論その中のシグごと燃やす炎を燃え上がらせた。


「ヅァァァァアッ!」

「いくら身体が元に戻ろうと、心まではそうはいかん。貴様が自ら死を懇願するまで、永遠に燃やし続けてやろう」


ガルドアの手の中でもがき、暴れるも逃げ出せず。身体は黒焦げの消し炭。たが燃え尽きる事はなく、シグの身に破壊と再生、そして際限ない苦痛が襲いかかる。


「アアッッ! アヅゥゥア! ガァァアーーー!」

「早く諦めろ。それとも、心が燃え尽き廃人となるか?」


熱い。アツイ。痛い。イタイ。

眼球は焼けて蒸発し視界は真っ赤。肺には熱気、呼吸も出来ず炎に溺れる。皮膚の下の神経が直接燃やされ、生まれる痛覚は絶える事なく。

まさに地獄。これ以上の苦痛がこの世に存在するだろうか。


永遠の責め苦、地獄の業火に苛まれながら、シグの脳裏にある影が浮かび上がった。チリチリと、記憶が蘇る。

炎に包まれる、ある人物。


あれはーーー誰だったかーーー

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